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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > ハイロー監督に聞くLDHエンタメの真髄
スーパー・ササダンゴ・マシン"流行"を考える〈ポップカルチャー生涯学習〉

『ハイロー』を観たプロレスラーはなぜ溜息をこぼすのか──監督・平沼紀久に聞くLDHエンタメの真髄

「琥珀さんはトム・クルーズ感あるんですよね」

ササ 音楽があってファッションがあって今度は宝塚とのコラボもあったりして、「HiGH&LOW」はものすごくデカいエンタテインメントの受け皿になってますよね。20年前までは、プロレスがいろんなカルチャーのるつぼになっていた時代もあったわけですけど、今や全部「HiGH&LOW」にやられているなぁ、と。プロレスすらすでに入ってるんですよ。

──どういうことですか? 後藤洋央紀選手(新日本プロレスリング)が『END OF SKY』にチラッと出ているだけではなく?

ササ 『FINAL MISSION』で鬼邪高が出てくるとき、「JUMP AROUND ∞」が流れた後、ケンカしてるところをザーッとパンする超高速撮影があるじゃないですか。あそこでどなたかがブレンバスターをかけてるんですよね。最高に美しくて、見世物としていちばんいいプロレス描写だと思いました。

平沼 そんな見方をしていただいたんですか。

ササ 本当に、「はぁ~」ってなったんですよ。俺がやりたかったのは全部これなんだな、と。僕がプロレスをやっていく上で『トップガン マーヴェリック』と「HiGH&LOW」を観続けていれば、多分延々と何かしらつくれるなって。過去現在未来が全部入っているから。

──そこに『マーヴェリック』も並ぶんですね。

平沼 でもHIROさんも同じようなことを言っていましたよ。

ササ 本当ですか。それこそSWORD世代を再び登場させるなら『マーヴェリック』みたいなやり方が一番美しいんでしょうね、きっと。

──口を挟んで恐縮ですが、『マーヴェリック』を観て「36年後に琥珀さんが見れる可能性はある!」と思いました。

ササ あー! そうですね、琥珀さんはトム・クルーズ感あるんですよね!

平沼 ありますね!

──何かの先生として還ってくる琥珀さんの話をいつか……いつまでも待ってますから……。

ササ 『GTO』じゃないですか(笑)。だから「HiGH&LOW」自体にもすごく刺激をもらいましたし、シリーズに触れて、平沼さんの存在を知れたことも僕の中ではもうひとつ収穫だったんですよ。

平沼 本当ですか、それはうれしいです。

ササ 僕はいわばプロレス団体の中で座付き作家的な仕事をしているわけですけど、試合もしていて、同時に出役でもあるんです。プロレスラーはプロレスラーの言うことしか聞かないこともあって、自分もリングに上がっている必要がありまして。同じような仕事の仕方をしている人って、実はあんまりいないんですよ。お笑いの世界だと芸人やりながら構成作家やってる方がいますけど、それともまたちょっと違うんですよね。だから平沼さんのように、俳優としてLDHに所属しながらひとつの作品世界をつくることにどっぷり関わっている人がいるとわかって、よかったなと思ってます。

平沼 それでいうと、HIROさんがまさにそうなんですよね。本人がアーティストで、そこからLDHを背負っていますから。肉体は年を取るけど、それでも最前線でエンタテインメントをずっと続けていくにはどうしたらいいか? というのはひとつのテーマだと思うんです。HIROさんは、EXILEの魂をエンタテインメントとして一生続けていくために、自分の意志を後輩たちにつなげながら育てて、それを自分も一緒になって体感しているんだなと、間近で見ていて思います。

ササ なるほど!?

平沼 先日、Jr.EXILEのライブで寸劇があって、そのホンを書いたんです。そういうときに何をいちばん意識しているかというと「彼らがよりかっこよく、キャーキャー言われるようになるにはどうしたらいいか」ってことなんですよね。そうやって頭を使って考えれば考えるほどエンタテインメントが盛り上がって、そうしたらまた違う可能性が増えていく。そこで「あぁ、こういうことなんだな」と思うんです。まさに、HIROさんと一緒に「HiGH&LOW」を立ち上げからやってきて学んできたことだなって。さっき言ったように、役者としてリアリティのある制服を着られる時期はすごく短いわけじゃないですか。でも、自分で何かを書いたり、後輩たちと一緒に何かをやるという形で青春の物語をつくり続けていくことはできるんだ、と。

ササ 監督をやっていて、自分もちょっと出てみようとは思わなかったですか?

平沼 全然思わなかったです。でも今演技やったら昔よりちょっとうまくなってるのかな? と思うときはあります。自分のことだけじゃなく、相手をよりよく見せるためにはどうしたらいいのかって考え方に変わっているので。制作と役者と両方の立場を知っている人間として、若手の子にはいろんなことを教えてあげようといつも思ってます。そういう中で、後輩たちから頼られたり「一緒にやろう」って空気ができてくるのはうれしいですね。本当に「HiGH&LOW」には人生を変えてもらいました。

ササ これからもHIROさんと一緒にこの世界を発展させていくんですね。

平沼 そうですね。やっぱり、ここからエンタメを盛り上げていきたいという思いは強いです。それこそプロレスと垣根を超えてコラボレーションするのも面白そうですよね。

ササ ここはぜひ、DDTの若者たちと鬼邪高校の全面対決を……。

平沼 いいっすねぇ。

ササ 両国国技館あるいは代々木第二体育館あたりでどうですか。いい試合つくりますんで!

平沼 キメられてるときにその人の回想とか入りたいですね!

ササ 入ります! 入れられます! 大得意です!!

(インタビュー・構成=斎藤岬/写真=石田寛)

<作品紹介>

映画『HiGH&LOW THE WORST X』
2022年9月9日公開/総監督:二宮“NINO”大輔/監督:平沼紀久/出演: 川村壱馬、吉野北人 ほか

2019年10月に公開された鬼邪高校全日制をメインに据えたスピンオフ作品『HiGH&LOW THE WORST』の続編。「HiGH&LOW」シリーズ映画としては第7弾にあたる。鬼邪高校の頭に立った花岡楓士雄の前に立ちはだかるのは、瀬ノ門工業高校・鎌坂高校・江罵羅商業高校による「三校連合」だった……。NCT 127やBE:FIRSTといった人気アーティストのメンバーが揃ったことで、「ハイロー」の新たな可能性を提示する一作となった。

スーパー・ササダンゴ・マシン(プロレスラー兼タレント)

1977年11月5日、新潟県出身。DDT所属のプロレスラー兼、タレント兼、坂井精機の代表取締役社長。早稲田大学在学中にDDTの興行に参加。レスラーとして活動しながら、映像班を兼務し、2004年には演劇系プロレス興行『マッスル』をスタートさせた。一度は実家の金型工場・坂井精機を継ぐために引退を発表。現在は社長業の傍らレスラーとタレント業でも活躍中。

すーぱーささだんごましん

最終更新:2022/09/24 12:32
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