芸人の解散事情に起こりつつある変化とは? 可視化されだした「死因」
#お笑い芸人 #解散
オジンオズボーンが見せた“リアル”と赤もみじの衝撃
今まで解散の「死因」は、ブラックボックスだった。明確に理由がわかるのは「逮捕」ぐらいで、「相方が芸人を辞めて別の道に進む」「方向性の違い」などの公式発表から「不仲」「意欲の減退」「コンビ間の格差拡大」などの深層を想像することはできても、真相は当人と関係者にしかわからないことだった。
しかし、最近になって死因の一部が可視化されるようになりつつある。その嚆矢となったのが、昨年8月、ABEMAとよしもとYouTube公式チャンネルで緊急配信された、雨上がり決死隊の解散報告会だ(『アメトーーク 特別編 雨上がり決死隊解散報告会』)。
2人の口から解散に至るまでの経緯と心中の機微が語られていき(私はこの期に及んで「雨上がり決死隊のゴミ捨て場のコント、もう見られないんだな……」と考えていた)、番組には号泣する弔客も招かれて、さながらABEMAとよしもとによる盛大な合同葬だった。
そして今年になって、YouTubeの公式チャンネルで解散を報告したのが、ピスタチオ、オジンオズボーンである。2組とも形式的な挨拶で終わらせず、長い時間をかけてコンビで解散の背景を語っている。
オジンオズボーンの場合、高松が自分のモチベーションが下がって引退を決めたことが発端だと説明すると、モチベーションの塊のような篠宮は高松の姿勢や考え方のほころびをコツコツと指摘。なので相方の引退を素直に受け入れるのかと思いきや、最終的には「まだ芸人としてやるべきことをやっていない」「(20年以上のキャリアが)もったいない」と高松の尊厳死を阻止する展開に。コンビの間に流れる微細でまだらな温度差と、落としどころの難しさに、解散のリアルを感じずにはいられなかった。
さらに篠宮は、「どうせ辞めるなら終わりまでを見せる。毎週配信して年末にライブを打つ」と宣言。死因の特定どころか、いよいよ「終活」のドキュメントが流される時代になったのである。
何より衝撃だったのが、マセキ芸能の漫才師・赤もみじの活動休止報告だ(9月4日配信stand.fm『芸人Boom!Boom!赤もみじのGeneral Audience』特別回「赤もみじが活動休止する理由」 )。冒頭でトランスミッターをよく知らないまま感情移入してしまったが、赤もみじには深い思い入れがある。それは約3年前、赤もみじの初取材をこの「日刊サイゾー」で行ったからだ。
M-1グランプリ2019予選で突然注目を浴びた逸材! マセキ漫才の新星「赤もみじ」って何者だ?
コントのザ・マミィ、漫才の納言。今、波に乗る2組に注目芸人をたずねたところ、くしくも4人の口から同じ名前があがった。その名は「赤もみじ」――。 メディアで見たことも...取材に至った経緯は記事に書いてある通りで、現場に現れた2人は「なんで僕たちに声をかけてくれたんですか!?」と自分たちの才能が世界に見つかった喜びで爆ぜそうな勢いだった。そんな初々しい姿を見てしまったのだから、応援する気持ちが湧かないわけがない。その後もライブで見かけては、いつか躍進することをひそかに願っていた。その赤もみじが『M-1グランプリ』の予選が始まろうという8月に、活動休止を発表。不穏な予感を覚えながら、事情を報告するというラジオアプリの配信を聞いてみる。
それは赤もみじを含めた芸人3組による公開収録で、活動休止という悲しい話題を反転させて、盛り上げてやろうという意気込みが冒頭からビンビン伝わってきた。しかし、そうはならなかった。配信の目的は活動休止の背景を説明することだと認識した赤もみじ・阪田ベーカリーが、相方・村田の非をものすごい手数で申し立てしだしたのである。
赤もみじといえば、村田が大声でわがままな自論を主張し、それに阪田がニコニコと反応する漫才で、先輩である村田が肩で風を切る兄貴、後輩の阪田がそれについていく弟というイメージだった。しかしこの日は立場が逆転。「村田さんがオモロないネタを持ってきて面白いと言い張る」「努力を怠る村田さんに信頼感がなくなった」などの告発は、感情に流されないロジカルな主張で、だんだん村田の口数が減っていき、ほかの芸人もまぜかえす言葉を失っていった。かつて喜びに満ちた2人にインタビューしたことがある私は、恋愛の一番いい時と一番悪い時が交互に流れる映画『ブルーバレンタイン』を思い出していた。
息を呑んでメッタ刺しの様子に耳を傾けていると、さらに阪田が「最近は僕が赤もみじのネタを書いていた」ととどめの告白。死因を究明していたら、生前の赤もみじの意味までが書き換えられていったのだ。
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れから動画での解散報告が増え、情報にアクセスしやすくなったことで背景の解像度はどんどん上がっていくだろう。それははたしていいことなのか、悪いことなのか。私は元チャイルドマシーン・山本の動画を見て、「ネタは消えるがゴシップは残る」と思いを新たにした。墓の管理は重要だと全芸人に注意を促したい。
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