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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 月9、疑問だらけの“決着”後もまだ続く…

坂口健太郎×杏『競争の番人』ツッコミどころ多い“最終章”終了も…「あと1話ある!?」

ツッコミどころの多い“最終章”

 第7話の「白熊回」第8話の「小勝負回」を経て再び見ることのできたダイロクのチームワークは爽快で、一番の見どころでもあった。ダイロクは本庄が藤堂の談合を阻止するために作った部署だったのだ。

 小勝負が父を失った「談合」を無くしたいと公取に入ったのと同様に、藤堂もまた妻を亡くすきっかけとなった「競争」を恨み、談合を自らの正義としていた。しかし藤堂の正義は国民のためではなく、ただの私的な復讐だ。Twitterでは「藤堂さん完全な悪じゃないからしんどい」という感想が上がり、阪神淡路大震災を知っている筆者にとっても藤堂の過去は、身近にある、辛いものだった。

 晴れて“ラスボス”が逮捕され、第1話から始まった謎も解決……という第10話のはずだったが、しかしどうにもすっきりしない。また“泣き落とし”展開か、と思いきや、しっかり証拠を押さえての解決だったのはよかったが、第9話であれだけ暗躍し、小勝負すらも意のままに操った藤堂が今回あっさり敗北してしまったのは少々拍子抜けだったし、談合場所を突き止めるきっかけが「ダンボールの底が抜けて大量にばらまかれた資料から、ふと手に取った領収書」「500軒はある飲食店から、桃園(小池栄子)がただ一度行ってみたいと言った超高級店」と都合のよい展開も目立った。加えて、ツッコミどころの多いストーリーだったようにも思う。

 まず、白熊が警察から公取に異動になった原因となった第1話の事件。白熊は第1話で、ラクター建設の役員・古賀康弘が殺された事件の捜査中、突然逃げ出したアレス電機の役員・柴野竜平(岡田義徳)を追うも、取り逃してしまう。実は柴野は、事件現場近くの闇カジノに出入りしており、事件の聞き取りのために刑事がやってきたのを、闇カジノ摘発だと勘違いして逃走しただけだった。

 古賀の事件の捜査が突然中止になったのは、捜査の過程で談合が明るみに出ることを恐れた藤堂による圧力だったが、不思議なのは「(古賀殺人事件の)容疑者を目撃した可能性のある楓(白熊)を異動させた」という説明だ。それなら、古賀の事件の捜査にあたっていた刑事はみな異動させる必要がありそうだが、そんなわかりやすいことをすれば間違いなく何かあると疑われてしまうだろう。柴野は殺人事件と何ら関係がなかったのに、なぜ白熊だけを異動させる必要があったのか。白熊が柴野を追っていたという事実だけを聞いて、殺人の実行犯を追っていたと藤堂は勘違いしたのだろうか。また、柴野といえば第5話で、小勝負らの“泣き落とし”の説得で改心し、下請けいじめを認める展開となったが、協力的になった柴野から、なぜ古賀の事件で逃走したのか改めて訊ねなかったのだろう。白熊が刑事から公取に異動になったというドラマオリジナル設定が妙な矛盾を生み、足を引っ張ってしまった印象だ。

 しかし何より、藤堂だ。弱いものは社会の害だとすら言い、談合を是とする姿勢になったきっかけが、震災で露呈した、“過剰な競争”によって起きた耐震強度の偽装問題であり、それによって生まれた欠陥住宅だったという。このことで、談合をすることで品質が保たれるという発想に急転換したというが、さすがに飛躍しすぎではないだろうか。不正を許さなかった頃の藤堂は、大手が下請けいじめをしている場面も何度も見ていたはずだ。「多少金がかかっても、信頼のある大手の会社が安定的に工事を行うべき」と言うが、大手が受注したところで、実際の作業を行うのは下請け、孫請けになり、必ずしも品質を保てるとは限らない。現に藤堂が小勝負に敗れた原因は、樋山が“下請けいじめ”をするなど私腹を肥やしていたことにあったが、それを、本庄が15年かけてもシッポを掴めず、第9話でもあれだけダイロクらを手玉に取ったほどの藤堂が見抜けなかったというのは、ちょっとご都合がよすぎるのではないだろうか。杏と坂口健太郎のダブル主演と謳いながらも、このドラマの実質上の“主人公”は坂口演じる小勝負だ。その小勝負と“根っこは同じだが対照的な人生を歩んだ存在”として藤堂を描きたかったのはわかるのだが……。

 それに、結局よくわからないままの部分もある。第4話では、アレス電機への立入検査がどこからかの圧力でストップがかかる展開があったが、あれは何だったのか。このアレス電機の事件が解決した第5話のラストでは、「私はまだ知らなかった。大手ゼネコン『ラクター建設』の役員・古賀康弘が殺されたこの事件の裏には、この国の根幹を揺るがす強大な闇が潜んでいることを」という白熊のモノローグがあったことを考えれば、藤堂の関与と見るべきなのだろうが、しかしそれは不自然だ。白熊が取り逃した男が柴野だと判明した時点で、藤堂は古賀の殺人事件と関係ないことは理解できたはずだし、アレス電機が官製談合に関わっていたという話は出てきていなかったはず。藤堂がアレス電機への立入検査を食い止める理由など見当たらないのだ。

 また、第8話では公取・第一審査局によるラクター建設らへの立入検査が行われる前日、公取の内部情報が事前に漏れ、官僚から圧力がかかってやはり検査はストップとなった。何者かが藤堂に電話をするシーンがあったこともあり、ここは圧力をかけたのは藤堂で間違いないだろうが、藤堂に情報提供をしたのは結局誰だったのか。直後に本庄が携帯電話を切るシーンが挟まれていたものの、てっきりミスリードかと思われたが、やはり本庄の仕業だったのだろうか。藤堂を捕まえる決定的な証拠を得るために懐に入ろうとしていた本庄は、藤堂の信頼を得るために情報を流したのだろうか。しかし、再開発プロジェクトの談合の証拠を掴むための立入検査を止める必要まであったのか、よくわからない。

フジ月9の悪習「特別編」「番外編」の賛否

 第10話のラストでは、藤堂の逮捕から数カ月が経ち、強引な調査が咎められたのか、小勝負は四国に異動に。その後に流れた「最終回」の予告にSNSは「今日が最終回じゃないのか」「どう見ても最終回な終わり方だったのに」という声が多く上がった。

  もっとも、数年前から月9では、メインのストーリーを終結させた後にもう1話続き、総集編やスピンオフ的な“最終回”で締め括るという展開が続いている。これは2019年4月期の『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』からだろうか。『ラジエーションハウス』では第11話の最終話の翌週に「特別編」が放送され、高視聴率を記録したものの、大半が総集編的な内容だったため、「まるで詐欺」「過去映像ばっかり」と批判が殺到。その例があったためか、昨年10月期の『ラジエーションハウスII』における「特別編」は視聴率が急落している。

 フジテレビは『ラジエーションハウス』以降も『監察医 朝顔(第1シーズン)』『シャーロック』『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~(第4シーズン)』と4作連続で、最終話翌週に同様の「特別編」を放送。批判が多すぎたためか、その後しばらくは鳴りを潜めていたが、前述のように昨年10月期の『ラジエーションハウスII』で復活した。今年1月期の『ミステリと言う勿れ』はさすがに“総集編商法”はやめたものの、菅田将暉演じる主人公のストーリーは第10話で一応の完結を見せ、第11話と最終話(第12話)は独立したスピンオフ的な物語となり、やや蛇足感のある構成が賛否を呼んだ。そして前期の『元彼の遺言状』もまた、第10話でメインのストーリーは終わり、最終話(第11話)は綾瀬はるか演じる主人公がほぼ不在となる番外編だった。

 今夜放送の最終回は小勝負が人質になる展開で、「小勝負回」で締め括られるようだ。特別編から番外編に切り替わったものの、「最終回感がない」「終わり方がすっきりしない」など批判的な声が変わらず多いフジ月9のこの構成だが、今度こそうまくいくだろうか。

■番組情報
月9ドラマ『競争の番人
フジテレビ系毎週月曜21時~
出演:坂口健太郎、杏、小池栄子、大倉孝二、加藤清史郎、小日向文世、黒羽麻璃央、大西礼芳、石川萌香、寺島しのぶ ほか
原作:新川帆立『競争の番人』(講談社)
脚本:丑尾健太郎、神田優、穴吹一朗、蓼内健太
音楽:やまだ豊
主題歌:idom「GLOW」
プロデュース:野田悠介
演出:相沢秀幸、森脇智延
制作・著作:フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kyosonobannin/index.html

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2022/09/19 12:00
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