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東大研究グループが新種の鉱物を発見ー資源の外国依存度が高い日本を変えるか

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 東京大学とアマチュア鉱物研究家の共同チームが9月8日、北海道苫前町で採集した砂白金から、プラチナを主成分とする新種の鉱物(新鉱物)を発見したと発表した。新鉱物は「苫前鉱」と命名された。
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=16310

 日本では明治中期に北海道で砂白金の産出が初めて確認されたのち、しばらくは砂金に混じる不純物として廃棄されていたが、大正期に入ると万年筆のペンポイントへの利用法が開発されたことで積極的に採掘されるようになった。

 その後、戦時中には触媒の原料にするため、数十万人を使役した大規模な開発が行われ、北海道の砂白金は消費され尽くしてしまった。その結果、近代では研究試料が手に入りづらくなり、自国から産出する砂白金がどのような鉱物で構成されているのか、理解があまり進まなかった。

 研究チームは戦時中の乱獲を免れた砂白金鉱床が北海道北西部に残っていることを期待 し、探索を行った。南北に70キロメートル、東西に30キロメートルの範囲で調査した結果、計8か所で砂白金を採取することに成功した。

 砂白金は漂砂として堆積した白金族元素を主成分とする鉱物を主体とする銀白色の粒子で、一般には数ミリ程度以下の大きさで不定形であることが多いが、ごくまれに六角形など規則的な形状を示す。その一粒が単一の鉱物である場合や、複数の鉱物から構成された集合体の場合がある。

 研究チームは、電子顕微鏡により砂白金の表面だけでなく内部まで詳細に調査した。その結果、砂白金から40種を超える白金族鉱物が見いだされ、日本の砂白金は多様な鉱物で構成される集合体であることを明らかにした。

 新鉱物の苫前鉱も砂白金を構成する鉱物の一つで、苫前町の海岸で採集された砂白金に包有される最大20マイクロメートル程度の微細粒子として見つかった。プラチナと銅が1対3の化学組成であることが明らかとなり、このような化学組成をもつ鉱物はこれまで知られておらず、新種の可能性が浮かび上がった。

 そこで、より詳細に調べるため結晶構造解析を行った。透過型電子顕微鏡を用いて、電子線回折や高分解能像を取得・解析することによって、苫前鉱の結晶構造を明らかにすることに成功した。

 この結果を国際鉱物学連合の新鉱物・鉱物・命名分類委員会に鉱物学的な証明と命名の理由を添えた申請書を提出し、審査を経て「苫前鉱」が正式に承認された。

 プラチナは装飾品に多く利用されるほか、触媒や電極など工業的に重要な役割を果たしている。一方で、プラチナは天然に産出する鉱物から抽出されたもので、どういう鉱物にどのように存在するかを明らかにすることは、鉱物学上で重要な課題であるとともに、資源 のあり方を見つめるうえで社会的にも重要なテーマ。

 今回の苫前鉱の発見は、プラチナの天然における新しい存在様式であり、天然ではどのように存在しているかを示す“答え”の一つを体現した鉱物となる。

 研究チームは、「今後はその解明や未知の鉱物の発見に取り組んでいきたい」としている。

 研究の成果は日本鉱物科学会が発行する学術雑誌「Journal of Mineralogical and Petrological Sciences」の9月8日号に掲載された。

 多くの資源を外国に頼っている日本で、プラチナを主成分とする新鉱物が発見されたことは非常に大きな意味を持ち、資源に乏しいと言われる日本で、新たな未知の鉱物の発見に光明を投げかけることになるだろう。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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わしおこういち

最終更新:2022/09/18 08:00
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