実写映画版『リトル・マーメイド』の配役の論点は差別だけでなく「原作実写化」にもある
#ディズニー #ヒナタカ
黒人で赤髪の憧れの存在へになるかもしれない
アニメ映画『リトル・マーメイド』は、元となるアンデルセンの童話『人魚姫』から、個性豊かなキャラクター、ミュージカル要素、そして物語に至るまで、大幅なアレンジが施されている。そもそもが「原作から変わっていた」作品であるのだ。
そして、『人魚姫』では金髪の美女のイメージが強かったのに対し、『リトル・マーメイド』のアリエルは赤髪の16歳の少女になった(それは1984年の映画『スプラッシュ』の金髪の人魚と被るのを避けたためだとか)。そして、当時からアリエルは赤髪であることがアイコニックで、かつ赤髪がコンプレックスだった人たちに勇気を与える存在としても受け入れられていたのだ。
今回の実写映画版のハリー・ベイリーの配役で、「白人で赤髪」としての憧れの存在だったアリエルを、今回は「黒人で赤髪」へと「バトンを渡した」と捉えることもできる。実際にTikTokではアフリカ系の子どもたちが予告編を観て喜ぶ反応の動画が多数が投稿されており、今後は黒人の少女たち、もしくは黒人でさらに赤髪を持つ人たちを勇気づける存在になっていくかもしれないのだ。
映画本編が公開されれば、批判は覆るかもしれない
今回の実写映画版『リトル・マーメイド』のティーザー予告編を観て、筆者個人は「この歌声の素晴らしさのためにハリー・ベイリーが選ばれたんだ」と納得できたし、それはキャスティング発表時の批判を覆せるほどのものだと思っていたが、実際はこれほどまで大きく論争が再燃したのは意外でもあった。前述したファン心理による正直な意見はともかく、当事者への過度のバッシングや誹謗中傷は言語道断であるし、何より「まだ映画本編が公開されていない」ので、ここまでの論争はやはり過剰だとは思うのだ。
人種の問題ではないが、例えば新しい『007』シリーズでジェームズ・ボンド役にダニエル・クレイグが決まった時、ブルーの瞳や金髪であることなどが従来のボンドとイメージが異なるとして、反対署名運動まで起こったことがある。だが2006年に公開された『カジノ・ロワイヤル』は絶賛に次ぐ絶賛を浴び、その後もダニエル・クレイグのボンドは世界中で受け入れられた。そのように、「映画本編を観てみなければわからない」ことはあるので、実写映画版『リトル・マーメイド』が公開されれば、今度こそ数々の批判を覆すほどに賞賛を浴びる可能性はある。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事