実写映画版『リトル・マーメイド』の配役の論点は差別だけでなく「原作実写化」にもある
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2023年5月26日に全米で公開予定(日本では同年初夏公開予定)の実写映画版『リトル・マーメイド』のティーザー予告編が公開され、その総再生回数は1億回を超えている。だが、その話題の多くは、ポリティカル・コレクトネスに配慮しすぎだといった批判や、またその批判が人種差別的であるなどの論争だった。
その理由は、主人公のアリエルをアフリカ系の歌手であるハリー・ベイリーが演じていること。その歌声に賞賛の声が上がる一方、1989年公開のアニメ映画版とイメージが異なるという反発の声も大きいのだ。2019年のキャスティング発表時にも賛否を呼んでいたのだが、映像ではっきり映ったことにより論争が再燃したかたちだ。
同様の黒人俳優をキャスティングしたことによる論争は、Amazonプライムビデオで配信中の、『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚となるドラマ『力の指輪』でも起こっている。エンターテインメントにおける多様性のある人種のキャスティングが、2022年の今にここまで反発を招くということ自体を残念に思ってしまうのだが、だからこそ落ち着いてこの問題を、極端な意見に傾きすぎることなく考えることは、大きな意義があると思うのだ。以下よりまとめていこう。
批判の中には「忠実に再現してほしい」ファン心理もある
Twitterで実写映画版『リトル・マーメイド』のキャスティングの反対意見をみると「黒人差別をするわけじゃないけど」「黒人がいやというわけではなくて」という前置きをしつつ、アリエルに合った役を選んでほしいという意見も見受けられる。これに対して「そう言いつつ人種差別をしているじゃないか」との声もあるが、個人的には投稿をしている人にも「人種差別なのかもしれない(そうではないと思いたい)」「でも受け入れ難いのはどうしようもない」という気持ちが同居しているように思える。
「受け入れ難い」理由の最たるものは、「忠実に再現してほしい」というファン心理だろう。子どものころに親しんでいたイメージが強固であるがゆえ、アニメから実写へと転換するのであれば、できる限り「あの頃のまま」であってほしいという気持ちは、ファンならずとも理解できるところはあるはずだ。
ただ、人種差別でない、あくまで持っていたイメージと違うのだと主張している人も、それが人種差別的だと捉えられたり、誰かを傷つける可能性があることは留意しなければならないだろう。その逆に、「前のほうがよかったなあ」という懐古主義あるいはノスタルジーに浸るがゆえの意見を、十把一絡げに人種差別だと糾弾するのも、また極端ではないだろうか。
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