監察医、科捜研… 医療ドラマ百花繚乱も実は、解剖の実施は10%程度
#鷲尾香一
2021年の司法解剖は8564件、調査解剖は3213件、監察医解剖は6395件となっており、残念なことに監察医解剖は年々減少傾向にある。(表2)
その一因となっているのが、監察院の廃止だ。監察医制度は作られた1947年には、東京都23区・横浜市・名古屋市・京都市・大阪市・神戸市・福岡市の主要大都市に導入された。しかし、京都市、福岡市は1985年に廃止、横浜市は2015年に廃止している。現在残っているのは、東京23区、大阪市、神戸市と名古屋市だが、名古屋市は外部への委託を行っており、事実上、廃止に近い状態となっている。
戦後に公衆衛生を目的として作られた制度だけに、衛生状態が良くなったという理由もあるが、地方自治体の予算により運営されていることから、予算面の問題があるようだ。さらに、新たな分野として調査解剖が増えてきたことも理由の一つとしてあげられている。
監察医と同様にドラマで多く取り上げられるのが、科学捜査研究所(科捜研)だろう。科捜研も死因究明の一部を担っている。
2021年に警察が取り扱った死体のうち、科捜研等において分析機器による検査が行われたのは9478体(5.5%)だった。
このように解剖を中心に、様々な死因究明が行われている。しかし、解剖が実施されるのは10%程度に過ぎない。もちろん、ご遺族の解剖に対する感情面も問題もあるだろう。だが、犯罪を見逃すことのないように必要な解剖を実施する必要はあるだろう。
国立感染症研究所などが軽視されていた中で、新型コロナウイルスの感染拡大により、その重要性が見直された。監察院についても、いつ何時にその必要性が再確認される事態が起こるかもしれない。新型コロナでの感染症研究所の“二の舞”にならないように、国の主導により、機能拡充を図っていくべきだ。
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