『テッパチ!』佐野勇斗“馬場”に降りかかった“胸糞展開”に視聴者「無理すぎる」
#町田啓太 #佐野勇斗 #テッパチ #水10ドラマ
第3話では幼少期からのトラウマを1時間で克服というトンデモ展開
自殺未遂をしてしまうという展開も、どうなのだろう。葵に騙されたことを知り、オーディションにも間に合わなかったことに気づいた馬場は、宙の応援によって冬美がオーディションを見つけてきてくれたこと、練習の時間の捻出のために仲間たちも協力してくれたこと、両親が心から応援してくれたことを振り返り、追い詰められてしまった。葵のもとに駆けつけたのも、自分は自衛官に向いていないのではないかという葛藤を抱えていたからこそ、「こんな自分でも誰かを助けられるかも」と思ったからだ。その決断が、多くの人の想いを裏切る結果となってしまい、思わず衝動的な選択をしてしまった心情はわからないでもない。
だが、それでも疑問符を付けたくなるのは、これまでのエピソードにおける問題――特に第3話があったからだ。
宙、馬場ら教育隊の第一班の仲間には武藤一哉(一ノ瀬颯)という男がいた。武藤はまったく周囲に溶け込もうとせず、ろくに口もきかず、謎めいた人物だった。だが、実は幼少期に父親からひどいDVを受け、そのトラウマを抱えていたことが第3話で明らかになる。そのため大人の男に声を荒げられると当時の記憶が蘇ってしまい、訓練中、武藤は男性教官の叱責でフラッシュバックを起こしてしまう。事情を知った宙は、このトラウマを乗り越えられるようにと、1時間にわたって第一班のメンバーが武藤を取り囲んで罵声を浴びせ続けるという「訓練」を行い、これによって武藤はトラウマを克服。第3話ラストでは、20歳の誕生日を迎えた武藤が、これまでの一匹狼キャラとは真逆の笑顔ではしゃぐのだった……。
かつての辛い記憶と同じような体験を受けさせてトラウマを乗り越えさせるという根性論的な手法もさることながら、あっさりと克服してしまい、しかも性格まで一変してしまう展開に開いた口が塞がらなかった。いくらフィクションとはいえ、いくら「エンタメ」とはいえ、実際に苦しんでいる当事者たちがいる問題を、これほど無神経に描くのはどうなのか。当時、視聴者からも多くの疑問の声が上がっていた。そういう作品だからこそ、馬場が自殺未遂を起こすという展開も、本当にその必然性があるのだろうか、安易に悲劇的に描こうとしているだけではないかと気になってしまうのだ。
理不尽といえば、スケートボードのオリンピック候補生・芝山勝也(水沢林太郎)もそうだ。第7話で、災害派遣要請を受けて出動し、初めての避難誘導に戸惑う宙。現場を離れている間、避難住人を乗せたトラックにいた芝山が、弟からトイレに行きたいとせかされ、指示を無視してトラックの甲板が下がるのを待たずに降りようとして落下。右足を骨折する事態となった。怪我によってスポンサーも離れてプロでなくなった芝山は、謝罪に来る宙を「お前のせいだ!」といつも責め立てるが、確かに現場を離れた宙に問題があったのは間違いないものの、自衛官の指示を無視して勝手に降りようとしたのは芝山だ。まだ19歳の彼は誰かに責任を押し付けたいのだろうが、第10話でも宙が厳しい言葉を投げつけられる状況に、「イライラする」「テッパチ、胸糞展開が多すぎる」といった声も少なくない。
それでも、出演者の演技には見応えがある。すぐに物事を投げ出すクセのあった宙はかつて、ちょっとしたことで自衛官候補生を辞めようとし、それをバディの馬場が留め、支えてきた。「俺はどんなに辛くても、途中で投げ出したりはしない。自分で決めた道だから」と語りかけて自分を説得したかつての馬場を思い出し、声を上げて涙する町田啓太の宙。自ら馬場をスカウトし、ずっと面倒を見てきたからこそ、「お前の優しさ、そして思いやり。これはお前の武器になる。しかし時として仇となることを忘れるな」という忠告どおりの結末になってしまったことに、やるせない思いを抱える北村一輝の八女。終盤のシーンの、ふたりの対照的な泣きの演技は、グっとくるものがあった。馬場に突然降りかかった理不尽という“ノイズ”がなければ、なおよかったのだが……。
企画の渡辺氏は「前向きな力をもらえるドラマ」にすると語っていたが、今のところ視聴者にはイライラやモヤモヤが積もっているだろう。これらが一気に晴れる最終回となることを期待したい。
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