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松本人志も熱湯風呂へ フジテレビの“奇祭”『ラフ&ミュージック』秩序のあとの混沌

松本人志も熱湯風呂へ  フジテレビの奇祭『ラフ&ミュージック』秩序のあとの混沌の画像1
『FNSラフ&ミュージック2022~歌と笑いの祭典~』(フジテレビ系)

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(9月4~10日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

松本人志「陣内マジでおもんないねん」
陣内智則「仕事なくなるて! アカンて!」

 何を言うかではなく、誰が言うかだ、とよく言われる。どれだけいいことを言っても、それが人望のない人の言葉だと響かないし、これまで何億回も言われてきたであろうありきたりな“いい言葉”でも、言う人が言えば胸を打つ。

 同じようなことは、大喜利にも言えるのかもしれない。同じ回答でも、言い方やその人のキャラなどによって面白さが変わる。もう中学生や秋山竜次(ロバート)、くっきー!(野性爆弾)のように、その人でなければウケないような回答があったりもする。

 そういう意味でいうと、10日の『FNSラフ&ミュージック2022~歌と笑いの祭典~』(フジテレビ系)で放送されていた大喜利企画が面白かった。同番組は、昨年から2年連続で放送された長時間(しかも2日連続)の生放送の番組で、お笑いと音楽を中心とした特別プログラム。かつて同局で放送されていた『27時間テレビ』の代替のような番組である。そのなかで、『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)のフォーマットにのっとった芸人とアイドルの大喜利対決が行われていた。

 一見すると、芸人側の圧勝に思えるこの対決。しかし、芸人として出場したのは、大喜利を苦手とする陣内智則、後藤輝基(フットボールアワー)、そしてフジモンこと藤本敏史(FUJIWARA)の3人だ。なお、アイドルの側からは向井康二、阿部亮平、宮舘涼太が登場。近年、バラエティ番組で見かけることも多いSnow Manからのエントリーである。

 フジモンは企画の冒頭から指摘する。

「失礼すぎやしませんかって話ですわ。大喜利苦手なんて、自分の口から言ったことないですからね。だから今日はね、ボロ勝ちして、大喜利得意やってのを見せつけますよ」

 番組に勝手に「大喜利苦手芸人」と括られたことへのクレームである。『IPPONグランプリ』本編への出演経験もある後藤も不服そうにしていた。一方、そんなクレームに陣内は意義を申し立てる。

「いやー、もう、苦手! 苦手や言うてんねん! 僕は苦手やって言うてんのに、こういうふうに出されたんですよ」

 自他ともに認める「大喜利苦手芸人」である陣内。いまから振り返れば、大喜利が苦手なことをあえて自分から認めて印象づけていくそんな状況設定から、すでに彼が展開したフィールドのなかに共演者や視聴者はいたのだろう。今回の企画は、陣内の七転八倒が盛り上げる形となった。

 大喜利がはじまると、陣内は0本を連発。なるほど確かにつまらない。特に、お題「『アリーナ―!!』みたいに言うな! 何?」に対する回答、「ずっちーなー(織田裕二)」はシビれた。「(織田裕二)」はすごい。一連の回答に対し、審査員をつとめた松本人志(ダウンタウン)も「陣内マジでおもんないねん」とコメントするのだった。

 ただ、では今回の企画で陣内がつまらなかったのかというとそうではなく、むしろ一番面白かったかもしれない。松本の「マジでおもんない」に対して「仕事なくなるて! アカンて!」と慌てる姿。自分の回答で会場が少しウケたにもかかわらず0ポイントだったので「ちょっとザワザワっと……ザワザワってなんやねん! アカンやないか!」とノリツッコミをする姿。結局1本もとれずにSnow Manに敗北した陣内に松本が「このまま負けたままでいいのか?」と再戦をうながすと、「いいっ!!!」と言い切る姿。回答がスベることも含めて、すべての立ち振舞いが笑いにつながる展開だった。

 他の人が出せばウケる回答でも、この人が出すとスベる。そこまではよくあるような気がする。だけれど、陣内はその先を行く。彼が回答すると必ずスベる、しかしそのスベった事実がその後のリアクションもあって必ずウケる、しかも周りからのツッコミを待つというより自分で積極的に流れをつくっていく。自分であえてスベりに行こうとする芸人は見ていてツラかったりもするけれど、そういうのもない。同じようなことがテレビのなかでできる芸人は、陣内以外にはあまりいないような気がする。

 いや、陣内がここまで面白かったのも、今回の企画が「スベれない状況に置かれた芸人がスベる姿を楽しむ」という建付けになっていたからという面も大きいだろうけれど。そういう意味でいうと、今回の企画、本当にスベれなかったのは芸人ではなく“バラエティもできるアイドル”のほうだったのかもしれない。

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