松居大悟、白石晃士、金子修介監督が新感覚ポルノに挑む「ロマンポルノ・ナウ」
#映画 #インタビュー
日活出身の金子修介監督による「シン・ロマンポルノ」
新時代ロマンポルノのフィナーレを飾るのは、金子修介監督の『百合の雨音』。ベテランの金子監督は『ガメラ 大怪獣空中決戦』(95)や『デスノート』(06)など数々のヒット作を放ってきたが、監督デビューは日活時代のロマンポルノ『宇能鴻一郎の濡れて打つ』(84)だ。少女漫画『エースをねらえ!』などのスポ根ものをパロディにした官能コメディで、いま観ても魅力的に感じられる。
金子監督のロマンポルノへの復帰は、昭和ロマンポルノの最後を飾った『ラスト・キャバレー』(88)以来、33年ぶり。金山功一郎プロデューサーが、金子監督作品の魅力を語ってくれた。
金山プロデューサー「金子監督はデビュー作『宇能鴻一郎の濡れて打つ』で終焉期ロマンポルノに彗星のように現れた監督です。手垢にまみれた定番の『宇能鴻一郎』シリーズを、『エースをねらえ!』のパロディにするという斬新さは類を見ないものです。金子監督は日活を出てから、多彩な分野の作品を撮り、大活躍するようになりました。ジャンル映画を“いま現在の映画”として、新しい面白さを生むことができる稀有な監督です。『1999年の夏休み』(88)は直接の露出ではなく、ジェンダーを超えた官能的な魅力を秘めた作品に感じられました。
女性同士のラブシーンを描いた〈百合もの〉はロマンポルノの人気ジャンルですが、昭和期に撮られた作品は男性視点で描かれたものばかりでした。現在のコミックやライトノベルにおいては女性が支持する〈百合もの〉がメインであるように、金子監督なら新しい百合ものを撮り、女性を魅了するような新しいものにできるのではないかと思い、再びロマンポルノに戻ってきてもらいました。女性にロマンポルノを開放する『シン・ロマンポルノ 』、もしくは『シン・百合族』と言っていいんじゃないでしょうか」
出版社に勤める葉月(小宮一葉)と、既婚者である上司・栞(花澄)との禁断の職場恋愛が、とても美しい官能シーンとして描かれている。ロマンポルノ初となる「インティマシーコーディネーター」を導入したことも注目ポイントだ。
金山「インティマシーコーディネーターの西山ももこさんに参加してもらったことは、本作にとって大きなプラスになったと思います。インティマシーコーディネーターというと、性愛シーンに関して、女優に代わって監督に伝えて交渉するというイメージがあるかもしれませんが、もっと幅広い重要な役割があることが今回わかりました。脚本を読み込んだ上で、キャストと監督との間に入り、『こんなシーンもできますよ』と作品内容に合った形で前向きな考えを、キャストや監督のそれぞれの立場を尊重しながら提案してくれるんです。アクション映画における殺陣師のような存在です。西山さんが参加してくれたことで、ベッドシーンはバリエーションのある、より官能的なものに仕上がったと思います」
昭和期のロマンポルノの現場を知る金山プロデューサーが挙げる一本は、今年5月に亡くなった石井隆監督の『天使のはらわた 赤い眩暈』(88)。
金山「脚本家・監督として特異な作家性を持ちながら、石井隆監督は普遍的な男と女のメロドラマを性愛の世界に刻み続けた。そしてロマンポルノに誰よりも強い愛情を持ち続けてらっしゃいました。50周年を機にぜひ触れていただきたいです」
ロマンポルノには、予算面などの制約はあるものの、人々の多様な愛の形をディープに描き、社会の常識を打ち破ってきたという歴史がある。令和に甦った新感覚のロマンポルノは、映画界にどんな新しい価値観をもたらすだろうか。
『手』
原作/山崎ナオコーラ 脚本/舘そらみ 監督/松居大悟
出演/福永朱梨、金子大地、津田寛治、大渕夏子、田村健太郎、岩本晟夢、宮田早苗、金田明夫
企画製作・配給/日活 R18+ 9月16日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、9月23日(金)よりシネ・リーブル梅田ほか全国順次公開
『愛してる!』
監督・脚本/白石晃士 脚本/谷口恒平
出演/川瀬知佐子、鳥之海凪紗、乙葉あい、ryuchell、髙嶋政宏
企画製作・配給/日活 R18+ 9月30日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、10月7日(金)よりシネ・リーブル梅田ほか全国順次公開
『百合の雨音』
監督/金子修介 脚本/高橋美幸
出演/小宮一葉、花澄、百合沙、行平あい佳、大宮二郎、宮崎吐夢
企画製作・配給/日活 R18+ 10月14日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、10月21日(金)よりシネ・リーブル梅田ほか全国順次公開
nikkatsu-romanporno.com/rpnow
※9月15日(木)までヒューマントラストシネマ渋谷にて、「監督セレクト クラシック作品特集上映」を開催中
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