カルト宗教がテーマの映画3選―カルト思想しかない世界での最善の策は?
#U-NEXT #しばりやトーマス #世界は映画を見ていれば大体わかる
まるで“信者同士で結婚させられる某カルト”みたいな世界観のSF
最後の一本は、奇妙なSF映画『ロブスター』(2015)。ギリシアの鬼才、ヨルゴス・ランティモス監督の映画で、舞台は近未来の世界。超少子化社会となった世界は子孫を残すことが政府によって強制化されており、結婚しない人間は施設に放り込まれ「45日間以内にパートナーを見つけなければ罰として動物に変えられてしまう」なんて恐ろしい! なんだかまるで、信者同士で結婚させられる某カルトみたい!
妻と離婚した男デヴィットは施設に放り込まれる。
入所の際に動物に変えられるとしたら何がいいかという希望を聞かれるので、デヴィットは「ロブスター」と答える。ロブスターは天敵に襲われて食われない限りは、海で永遠に暮らせるといわれており「海にひとりで永遠に漂っていたい」と願っているデヴィット(そんなこと言ってるから離婚されるんじゃない?)は施設に入っても誰とも打ち解けず、森に政府の方針に反発する反逆者がおり、それを捕まえると滞在日数が増えるのに、デヴィットは誰も仕留められず無為に時間を過ごす。
施設が嫌になったデヴィットは隙を見て森に逃げ込む。森には政府に反発し一生独身を標榜する「おひとりさまテロリスト」集団がおり、デヴィットは仲間入りをする。
集団には「仲間同士で恋愛をしてはならぬ」という鉄の掟があり、誰とも恋愛したくないデヴィットは「ここはいい場所だな」と思うも、テロリストのひとりである女を好きになってしまい、相手もデヴィットを愛してしまう。二人はテロリスト集団のリーダーにばれないように二人だけにしかわからないサインを交わすが、リーダーが関係を疑い、罰として女の目を失明させてしまう。デヴィットは失明した女のために献身的に尽くし続け二人だけで暮らすためにリーダーに復讐し、テロリスト集団からも抜け出す。
本作はカルトしか存在しない世界の恐ろしさを描いている。「恋愛しろと押しつけられ、しなければ動物にする!」と鉄の掟と罰則を設けているのがカルトであるし、それは間違っている、恋愛など薄っぺらい人間関係に過ぎない! 恋愛不要! と主張するおひとりさまテロリストもやはり、極端なカルトだ。どこにいっても、人はカルトから逃れない!
最後にデヴィットは失明した女への愛の証明のためにある決断をする。その行為こそまさに恋愛そのものがカルトであるといえる。人は誰も一人で生きられない。ならばカルトとうまくやっていくことしかない。
世間は昨今のカルト騒動を見てカルトは怖いね、でも自分には関係ないよ……と思ってるかもしれないけど、極端な思想に染まるのもカルトだし、また自分はノンポリで何にも染まってない、というのもまたある種のカルトといえなくもないのでどのみち世の中みんなカルトなんだ!
なのでカルトは全否定するのではなく、いい距離感で付き合うのをお勧めします。僕はまあ、動物になる方を選びますけど……でもロブスターはやだなあ。釣られたら食われちゃうもの。『およげたいやきくん』のたいやきだって、最後は釣り人のおじさんに食べられちゃうんだから。
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