カルト宗教がテーマの映画3選―カルト思想しかない世界での最善の策は?
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クトゥルフ神話の創造主の作品を映像化『DAGON』
怪奇小説家のハワード・フィリップス・ラブクラフトが想像した一連の小説「クトゥルフ神話」は、彼の友人たちや信奉者たちによって“体系化”され死後80年経った今も、世界中で人気を誇っている。信奉者とその読者たちは「カルト」な存在といっても過言ではない。
ラブクラフトの代表作のひとつ『インスマウスの影』を映像化した『DAGON』(2001)は、作品の舞台をアメリカからスペインに置き換えたオカルト映画だ(監督は、アメリカで活躍していたスチュアート・ゴードン)。
株式投資で財を築いていた若き資産家のポールは深い海の底で美女に襲われるという悪夢にうなされる日々を送っていた。気分転換にと妻のバーバラ、そして友人夫妻とともにスペインの海でバカンスを楽しんでいたが、突然悪天候に苛まれ、ヨットが座礁する。
ポールとバーバラは、近くに見える港町インボカに救命ボートで助けを求める。港町の住人らと一緒にポールは船でヨットまで戻ったものの、船内から友人らの姿は消えていた。
空しく港町に戻ると留守を預かっていたはずの妻バーバラは姿を消し、古びたホテルに泊まると理解不能の言葉を話す住人たちが襲い掛かってくる。逃げ出したポールは酔っ払いの老人、エゼキルに出会う。エゼキルはインボカに昔から住む老人で、彼によって港町の昔話が語られる。
昔は経験なキリスト教信者と漁によって支えられてきた港町インボカだったが、ある日を境に魚が取れなくなり、町は荒んでいった。そんな中、町にカンバロという船長が現れ
「神など役に立たない。偉大な海の神ダゴンを信奉すれば魚だけではなく、他のものも与えてくださる」
というが、神父をはじめキリストの信者たちは誰も信じない。
するとカンバロは海岸で儀式をはじめ、謎の呪文を唱えると海から得体の知れない邪神が現れ、町には魚と黄金が齎される。人々は神への信仰を捨て、カンバロが町の支配者とする「ダゴン教」が教会を乗っ取り、ダゴン教に懐疑的な人々は生贄として捧げられていった。
バーバラと友人たちも生贄としてダゴンに捧げられると知ったポールは彼らを助け出そうとする。バーバラたちを探す求めるポールは町の権力者の娘だというウシアと名乗る美女と出会う。彼女はポールの悪夢に出てくる女で彼を助けてくれるのだが、ベッドに寝たきりの彼女の両脚はイカのような軟体だった……。
「邪教に乗っ取られた田舎町にうっかり入り込んでしまった都会人が、半魚人に襲われる」という土着オカルトミステリーで、ラブクラフトやクトゥルフ小説を知っているユーザーなら、この後の展開は予想通りといった感じなのだが「カルトに支配された土地で話が通じず、誰も味方がいない」という状況は『ローズマリーの赤ちゃん』と似ている。といってもサタニズムとクトゥルフ信者は、明確に違うものなので同じというのは乱暴。
時にB級、C級ホラーといわれがちなスチュアート・ゴードン作品ですが、根源の恐怖に訴える演出がなされており、人間の無意識化にある恐怖をテーマにしてきたラブクラフトに影響されたゴードン監督ならでは(デビュー作以降、本作も含めなんどもラブクラフト作品の映像化に挑んでいる)の一本。
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