カルト宗教がテーマの映画3選―カルト思想しかない世界での最善の策は?
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昨今、カルト宗教の話題がかまびすしい。今回はカルト宗教をテーマに語りたい。といっても、旧統一教会と政権与党の密接な関係とか、政教分離の問題について話題にするわけではない。映画におけるカルトと宗教についてだ。
カルトな宗教団体や組織というのは昔から、映画のテーマとして事欠かない。奇妙な儀式で政府の転覆や世界の支配、悪魔を降臨させる異端の存在としてホラーやミステリーのテーマや象徴に使われやすい。
代表的な作品が『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)だ。俳優の夫ガイとその妻であるローズマリーのウッドハウス夫妻は歴のある古びたアパートに引っ越してくる。隣人のカスタベット老夫婦は少々お節介がすぎるのだが、パーティに招かれた縁で夫ガイは彼らと仲良くなる。売れない役者であるガイは仕事にありつけないでいたが、老夫婦と親しくなってから運気が向いてくる。ライバルの役者が突然失明し、ガイが代役として選ばれたのだ。
仕事運が向いてきたガイは子供をつくろうとせがみ、子づくりの計画を立てる。ある日気分を悪くしたローズマリーは眠っている間に、怪しげな集団に襲われる悪夢を見る。目が覚めると自分の身体に多数の引っかき傷があり、ガイを問いただすと彼は子づくりの機会を逃したくなかったといい、なんと夫は眠っている妻を無理やり抱いて「死体としているみたいだったよ!」と笑うのだった。
やがて子供を妊娠したローズマリーにカスタベット夫妻はますます世話を焼き、子供のためといって怪しげな薬草入りの飲み物を飲ませたりし、老夫婦の勧めで高名だという産婦人科医を紹介される。彼は「市販された本を読んではいけない、友人の意見も聞いてはいけない、信用できないから」とまったく信用できないことを言い出す。ローズマリーは原因不明の腹痛に悩まされ、次第にやせ衰えていく。妊娠しているのに。
不安に駆られたローズマリーは知人の作家ハッチに相談するが、会う約束をした直後に意識不明の重体に陥り、そのまま帰らぬ人となってしまう。秘書から遺品として受け取ったのは悪魔の儀式に関する本で、それによるとカスタベット老夫婦は悪魔を崇拝する組織に属するメンバーだということを示唆していた。その組織には産婦人科医、さらには夫までもが儀式に参加し、ローズマリーに悪魔の子供を産ませようとしていたのだった。
『ローズマリー~』は大ヒットし、当時経営が傾いていたパラマウント映画を救った。その後『エクソシスト』(1973)『悪魔の追跡』(1975)『オーメン』(1976)『サスペリア』(1977)と同作の影響を伺わせるサタニズム(悪魔崇拝主義)映画が次々とつくられ、一時期映画界では悪魔を降臨させようとしたり、悪魔の力で世界を破滅させようとするカルト集団が暴れまわっていた。
映画の中なら面白いフィクションで済む話だが、『ローズマリーの赤ちゃん』は現実の世界にまで影響を及ぼした。映画関係者はこの映画をつくったために悪魔崇拝者から忌み嫌われ脅迫を受け続け、関係者には謎の体調不良を起こすものや、事故死に遭うものが出て、監督であるロマン・ポランスキーの邸宅はカルト集団のチャールズ・マンソンファミリーに襲われ、妻のシャロン・テートと友人たちが殺されるという悲劇を生んだ。
カルト集団の映画の関係者が本当に、カルトに襲われてしまったのだ。
そういう意味で『ローズマリーの赤ちゃん』はカルトの恐ろしさを最も強く描いた作品といえるだろう。
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