「八潮秘宝館」オーナー兵頭喜貴×都築響一 たまたま、それがラブドールだっただけ
#映画 #カルチャー #インタビュー #ラブドール
「八潮秘宝館」と一緒に化石になりたい
ーー兵頭さんは、映画の中で「ラブドールはリアルな女性の代わりではない」と言ってましたよね。
兵頭:僕にとってラブドールは、クルマとか機材とか、カメラと変わらない感覚なんです。フェラーリを見せびらかしたいのと一緒で、僕は自分のラブドールを見せびらかしたいんですよ。
ただ、僕はカメラのことを自分の視神経につながってるように感じているんですけど、ラブドールもそれと同じなんです。僕の手の先から目に見えない神経が伸びていて、ラブドールとつながっている。自分の体の一部みたいなモノ、という感覚ですね。
こういうのって、たぶん変なんだろうけど、変なことをしようと思ってラブドールを集めたり、ああいう家に住んでいるわけじゃなくて、ただ普通に生きてるだけです。僕の周りにもヤバいなって思う人はいるけど、そういうヤツほど自分を“普通”だと思ってますよね。きっと、自分もその1人なんだと思いますけど。
都築:ラブドールと自分のセックスを映画にまでするのは、やっぱり“普通”ではないと思いますけどね(笑)。
兵頭:僕は、見せびらかしたい気持ちが強いんですよね(笑)。
都築:ちょっと世の中を探せば、ラブドールをコレクションしている人はすぐ見つかるし、ラブドールとのセックスをカメラマンに撮ってもらってる人もいると思う。だけど兵頭くんの場合は、その全てを自分の表現として作品にしちゃいますから。すごくプライベートな部分を人に見せて作品化するというのが、兵頭くんの真骨頂というかね。
兵頭:もし僕にスキルがなかったら、こういうふうにはなっていなかったでしょうね。写真をずっと撮ってきて美的感覚もあるほうだと思うし、実家が建設業を営んでいたこともあって、家を改造するのも得意だし。清掃業を20年近くやってきたから、ラブドールのマメな掃除も苦じゃない。それをやろうと思って生きてきたわけじゃなくて、自然と生きてきたらそうなっていただけです。
ちなみに、昔はゴミ回収の仕事もしていたから、そこで拾ってきたものが「八潮秘宝館」の資材になってます。このラブドールが履いている靴だって、どこかから拾ってきたものですよ。
ーー兵頭さんは数年前に原因不明の脳腫瘍を患って、現在も闘病中なんですよね。万が一、兵頭さんが亡くなったら、ラブドールたちはどうなるのでしょうか。
兵頭:僕の場合は、息子に全部売っ払っていいと伝えてあります。ただ本当はね、「記念館」みたいな形で保存して欲しいという気持ちもあります。けど、自分以外の誰があれを維持、管理するんだっていったら、絶対に無理なんですよ。
都築:処分についての考え方も、コレクターによってさまざまですよね。
兵頭:去年、大阪に住んでいたラブドール仲間が亡くなったんです。そいつは一番大事にしていたラブドールの頭を、自分と一緒に棺桶に入れて焼いてくれって一筆残していたんだけど、火葬場に断られちゃって。だから僕が大阪まで行って、彼が大事にしていたラブドールの体2つと頭3つを引き取ってきました。その子たちは今「八潮秘宝館」にいますよ。
都築:それはレコードや本のコレクターでも同じです。いくところまでいって満足して止める人もいれば、生活の変化とか、病気で収集を止めざるを得ない人もいる。たとえ余命がわかっていても、処分したくない人だってもちろんいるでしょう。
兵頭:ただ、ラブドールは他のモノと違って、その辺に捨てるわけにもいきませんからね(笑)。僕は本音としては、あの家で死んで、ラブドールたちと「八潮秘宝館」ごと化石になりたいんだけど、それはたぶん無理でしょうね。
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●『HYODO 八潮秘宝館ラブドール戦記』
2022年9月2日(金)より池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国公開中!
あらすじ:埼玉県八潮市の住宅街にあるラブドール博物館「八潮秘宝館」。その経営者である兵頭喜貴氏は、かつてラブドール写真家として活動していたが、国内でもその名を知る人は少なかった。しかし、原因不明の脳障害の発症、数百万円の損害を出したラブドール誘拐事件などを経て、今や日本から世界へとラブドール文化を発信する第一人者となった。
監督・撮影・編集・録音・企画:福田光睦
企画・制作・作品提供・製作:兵頭喜貴
キャスト:兵頭喜貴、Megan Alexander、miyako、森川俊秀、らすかる、角由紀子
Twitter:@hyodomovie
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