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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 『チェリまほ』は1周回ってプロレスだった
スーパー・ササダンゴ・マシン"流行"を考える〈ポップカルチャー生涯学習〉

『チェリまほ』は1周回ってプロレスだった──スーパー・ササダンゴ・マシンとBLの邂逅

現実のプロレスで二次創作をしていたササダンゴ

編集T:ササダンゴさんはこれまでBLコンテンツには触れてきたんですか?

ササ:全然ですね。BLマンガは、友人のイラストレーター・澁谷玲子さんに勧められて『コオリオニ』(作:梶本レイカ)だけは何十回も読んでます。あとから宇多丸さんもオススメの作品だと知って納得でした。

編集T:あれは名作ですよね。でも、それならなぜ『まっする』でBL的なくだりをやるように?

ササ:いや、あの、そういうのが流行ってるから取り入れたとかではなくって…フフフ……なんだろう、邪推ですよ? 俺の邪推です。2人はもともと高校の同級生で、先に竹下がDDTでデビューして、それを見て憧れて上野が入ってきて……っていうリアルなストーリーがあるでしょう。それを聞いてしまった時点で、もう……そういう台本を俺が書くことで幸せになれるんじゃないの!? って思っちゃったんですよ!

編集T:自分がですか? 彼らがですか?

ササ:彼らが、です。

編集T:以前のきつねさんとの対談のときも、そのエピソードが好きだとおっしゃってましたね。過去に、上野さん竹下さん以外でもそう思ったことはあるんですか?

ササ:DDTの自分たちの世代ではなかったですね。でも、10歳以上も下の選手を見ていると、この人たちはなんのために毎日体を鍛えて試合して、1年のうちの大半を一緒に移動して寝食を共にしながら殴り合ってるんだろうってずっと不思議に思ってて。

編集T:ご自分もやっているのに!

ササ:僕らの世代はやっぱり、プロレスの仕事をきっかけにいい暮らしができるようになりたいっていう気持ちがあったんですよ。でも彼らを見てるとちょっと違っていて、常に今この瞬間を謳歌してるんですよね。しかもみんな、ほかの仕事でもちゃんとうまくいきそうな人たちだし。だから、もしかして今が一番幸せで楽しいのかな? って思っちゃって……。そうなると「え? 好きなんじゃないの?」って思ったんですよね……(笑)。そうじゃないと頭の中で整理がつかないところがあったんですよ。

編集T:好きだと仮定すればいろいろ理解ができる、と?

ササ:そうなんです。

編集T:ここまで全部、言ってることがBL二次創作やってるオタクと完全に同じです。

ササ:本当にそうなんでしょうね。プロレスの二次創作で、現実の存在の二次創作をやってる。

編集T:実在人物の二次創作について表立って言及するのはオタク界隈のルールとしてはNGですけど、ササダンゴさんは“公式の人”だからいいのか……?

ササ:言ったらダメなんですね。世の中に広めたいのに、かけ離れてることをしてたのか(笑)。DDTに大石真翔という選手がいまして、実は彼に何度か「直接的に下ネタにいきすぎてる」ってところは怒られたことがあるんですよ。上野と竹下の最初のスキット(寸劇)で、相手の股間やお尻に触る場面が多すぎる、と。大石選手はBL的なものが好きらしいんですね。それで「あそこまで多いとノレないんだ」「失礼だ」って言われて、なるほどって思ったんですよね。いや大石選手も普段からケツ出してんじゃねぇかとも思いましたけど(笑)。

『チェリまほ』は1周回ってプロレスだった──スーパー・ササダンゴ・マシンとBLの邂逅の画像2
「まっする6 -下北ONE PLUS ONE-」DDT公式サイトより

編集T:それで今年3月の『まっする6 -下北ONE PLUS ONE-』では、筋膜リリースガンでマッサージをする程度の絡みに。それでも十分、色っぽい雰囲気はありましたけども。

ササ:いや、あれは違うんですよ! 台本ではソフトにしてたんですけど、千秋楽で2人が勝手にハードに戻してきたんです。上野選手が体調不良で出られなくて、2人が直接共演するのがその1公演だけになっちゃったから。

編集T:自主的に(笑)。ちなみに竹下選手は、ABEMAの番組(『ゆにばーす・ばいぶる #2』)で「BL的な要素もある」とプロレスの魅力を解説していました。「自分がオタクだから女子目線でも見るけど、そこはおすすめできるポイント」だと。

ササ:言ってましたか。今回『チェリまほ』を観て、『まっする』ももっとシンプルでいいのかなと思いましたね。シンプルにメインイベントの試合を盛り上げるためのドラマづくりみたいなものを丁寧にやるのも、本当はありだなって。ひとつの興行で1試合にグーッとクローズアップしていくような、もっと登場人物が少ない回があってもいいのかなと思いました。

編集T:どういうことですか?

ササ:次の『まっする』はいつものメンバーでやる予定ですけど、一回、思いっきりキャストを減らして興行をやったらどうなるんでしょうね。この前も実際に「The37KAMIINA(サウナカミーナ)興行」と銘打ってやっていたけど、20人近く出ていて、完全にユニットメンバーだけというわけではないじゃないですか。そうじゃなくて、5~6人に絞って歌ありダンスあり試合ありにして、2時間の中で濃密な世界を描くのは意外とありなのかもしれない。あるいは、もう本当に2人だけの興行にしてしまうとかね。2人だけの世界を描くのは、どのプロレス団体もまだやれてないことだと思います。プロレス界では過去にワンマッチ興行も存在しましたが、そうじゃなくて2時間まるまる、1試合だけじゃなくていろいろドラマもあってのワンマッチ。

 『チェリまほ』の主要キャストの少なさはそれくらい新鮮だったんです。今のコンテンツはキャラクター数がめちゃめちゃ多いのが主流なのに、対極的で、それでいてしっかり面白いわけですから。キャストが少ないのはやっぱり没入感につながるんだなと感じました。そういう興行を、ひょっとしたら1回やってみてもいいのかなって。そうしたら何ができるんだろう? って思いません?

編集T:めちゃくちゃ観たいです! 面白そう。

ササ:難しいけれども、めちゃめちゃ面白そうではありますよね。そういうことをやってみたらどうなるんだろうって、『チェリまほ』からヒントをもらいました。

構成=斎藤岬

<作品情報>
映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』
2022年4月8日公開/監督:風間太樹/出演:赤楚衛二、町田啓太 ほか

豊田悠によるボーイズラブマンガ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(スクウェア・エニックス)を原作にした実写映画。マンガは累計発行部数200万部を突破している(22年3月時点)。2020年10月にテレビ東京の「木ドラ25」枠で実写ドラマ化されると、日本だけでなく中国やタイなどのアジア圏でも爆発的な話題に。放送批評懇談会2020年12月度ギャラクシー賞月間賞を受賞した。

<インフォメーション>
​​マッスル坂井プロデュース興行「まっする7~甲州街道はまだ夏なのさ~」
日時:2022年9月7日(水)~2022年9月9日(金)
会場:東京・後楽園ホール/​​東京・北沢タウンホール

この連載でもたびたび話題に出てくる「まっする」がついに最終回! 歌ありダンスありBLあり(?)プロレスありの新しいエンターテインメントとして人気を博してきた本作。彼らのプロレスと青春はどこに着地するのか……。チケットは各社プレイガイドで!
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スーパー・ササダンゴ・マシン(プロレスラー兼タレント)

1977年11月5日、新潟県出身。DDT所属のプロレスラー兼、タレント兼、坂井精機の代表取締役社長。早稲田大学在学中にDDTの興行に参加。レスラーとして活動しながら、映像班を兼務し、2004年には演劇系プロレス興行『マッスル』をスタートさせた。一度は実家の金型工場・坂井精機を継ぐために引退を発表。現在は社長業の傍らレスラーとタレント業でも活躍中。

すーぱーささだんごましん

最終更新:2022/09/02 11:30
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