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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 堂本剛の「自分の色を生きるファンク」
ファンク研究家が紐解くENDRECHERI「1111111 ~One Another’s Colors~」

堂本剛が鳴らす「自分の色を生きるファンク」――ENDRECHERI新曲「1111111」に込められたメッセージ

「決めつけ」に抗う、自分の色を生きるファンク

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 多くの音楽ジャンルと同じように、ファンクにも定番のスタイルというものがあり、そこからある種の先入観、いわば「決めつけ」も生まれがちだ。ファンクなんだからこうでしょ、とか、こうじゃなきゃファンクじゃないよね、とか……。もちろん、そんなルールがあるわけではない。決めつけている側が勝手にそういうルールがあると思い込み、なんとなくその型に当てはめてしまっているだけだ。

 だが、今回の「1111111 ~One Another’s Colors~」は、こうしたファンクにおける「決めつけ」を振り払い、新しい色を生み出した……と、私にはそう感じられた。では、どこが新しかったのか?

 具体的にはやはり、最初のサビに入った瞬間にドラムのビートが消えるところだ。配信音源で言うと1:08~の部分。「One Another’s Colors」♪と歌われているところ、ここではシンセブラスを中心としたシンコペーションが響くのみで、それまでドラムが繋いできたビートが消えてしまう。

 この曲は大きく分けると、Aメロとサビを繰り返す、ファンク王道の展開(=“ルール”)に則って作曲されている。その場合、“普通であれば”この最初のサビでドラムを抜くというアイデアはまず出てこないだろう。ここでビートを示すことで、さらに盛り上げたくなる箇所だからだ。サビに入った瞬間にドラムが抜けちゃったら、ファンクじゃないよね……。しかし、その考え方が「決めつけ」だったことに、私は気づかされた。

 最初のサビでビートが消えるのは、サビのメロディ、コード、シンコペーションを重視して、それらをより聴かせるためのアレンジだと思われるが――そのアイデアは、この曲にとても良く合っている。ドラムが消えた解放感が身体に心地よく染み込んでいき、すぐにまたドラムのグルーヴが入ってくるまでの、一瞬のチルを感じることができる。私は繰り返し聴いていて、正直、これ以上のアレンジはあり得ない、と思うようになった。

 楽曲のアレンジにおける、「決めつけ」に囚われない斬新なアイデアが、楽曲のメッセージ性ともリンクする――なんと美しい構成だろう。「1111111 ~One Another’s Colors~」は、徹頭徹尾「自分の色を生きるファンク」なのではないだろうか。

堂本剛+Gakushi=最高のファンク・チーム

 サウンドも非常に良くできており、堂本剛とGakushiの2人だけの手によるものとは感じさせない、圧倒的なテイクだった。前述の通り、『GO TO FUNK』では一部の曲、「ENDRECHERI POWER」「Make me up! Funk me up!」「沼ンティ」「ヌルってたい」などがこの2人だけで制作されており、今回の曲もそれを踏襲するものである。

 今回も堂本剛の演奏力とセンスに言及せずにはいられない。「Make me up! Funk me up!」でも聞かれた圧倒的なギターカッティングの技術は健在。歴戦のファンク・ミュージシャンにしか生み出せないグルーヴを生み出している。メロディやリフにも、見逃してしまいそうな細かいリズムの遊びが随所に入っており、玄人も満足させられる。さながら“グルーヴ曼荼羅”とも言える内容だ。

 もちろん、Gakushiの存在も忘れてはならない。複雑で緻密な堂本剛の“グルーヴ曼荼羅”をしっかりとサポートし、描き切っている。ドラムやシンセサイザーなどの打ち込みは全て、Gakushiによるものだ。さらにGakushiは80年代のサウンドに精通しているため、今回の曲でも、彼らが狙ったであろう80sな雰囲気をしっかりと感じることができるし、その説得力は並大抵のものではない。「ヌルってたい」もそうだったが、低音でうねるシンセベースの迫力など、もはやタイムマシンの存在を疑うレベルだ。

 このクオリティの楽曲を量産し続けているということからも、彼らはもはや、2022年の日本において最高のファンク・チームのひとつだと言っても過言ではないだろう。

 もちろん、この曲はステージの上ではバンドで演奏される。楽曲がリリースされた日の『SUMMER SONIC』で、堂本剛はちゃんとこの曲をセットリストに組み込んでいた。こういった“グルーヴ曼荼羅”のファンクは演奏している側も非常に楽しいはずなので、バンドにとってもこの新曲は刺激的なものになったのではないかと思う。

 そして『SUMMER SONIC』の出演後、ついに念願のENDRECHERI公式YouTubeチャンネルのスタートが発表され、「1111111 ~One Another’s Colors~」のMVが公開された。

 これまではENDRECHERIのMVを公式に観られる動画サイトは存在しなかったので、今回のYouTubeチャンネル開設は、非常に大きな一歩だと言えるだろう。ENDRECHERIはますます世界で注目されるファンク・アーティストになるに違いない。

Dr.ファンクシッテルー(ファンク研究家/ライター/ミュージシャン)

Twitter:@DrFunkshitteru

ファンク研究家/ライター/ミュージシャン。ファンクバンド「KINZTO」を結成し、日々ファンクを広める活動を行っている。
著書『ファンクの歴史』をKindleにて発売、上中下巻にて完結。表紙イラストは『とんかつDJアゲ太郎』の小山ゆうじろう氏。それが縁となり、2021年に「週刊少年ジャンプ」の「巻末解放区!WEEKLY 週ちゃん」にゲスト出演。新旧ファンク10名盤を少年誌で紹介した。
また、ファンクバンドVulfpeckを国内に紹介するnoteマガジン「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」を連載。『サステナブル・ファンク・バンド:どこよりも詳しいVulfpeckファンブック』として電子書籍化した。

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最終更新:2023/03/14 14:19
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