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世界は映画を見ていれば大体わかる#38

『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』やっぱり裏にあった血なまぐさい逸話

妨害繰り返すマフィアに直談判

『ゴッドファーザー』には、ジョニー・フォンテーンという架空の歌手が登場する。

 落ち目の彼は映画出演に再起をかけるのだが、彼を嫌っている映画プロデューサーの妨害に遭っている。そこでマフィアのボスであるドンになんとかしてほしいと頼み込む。ドンは部下を使い、ジョニーを妨害するプロデューサーのベッドに馬の首を放り込むといった「決して断れない提案」を仕掛け、ジョニーは映画出演が叶う…という場面がある。

 このジョニーはシナトラがモデルであるといわれており、このエピソードも『地上より永遠に』(1953)にシナトラが出演することになったエピソードを元にして書いたとされ、「落ち目の歌手」として扱われたシナトラはレストランでプーゾとつかみ合いのもめ事を起こしており、なんとしても『ゴッドファーザー』を潰すつもりでいた。

 ラディの車に実弾が撃ち込まれ、エヴァンスのベッドに『ゴッドファーザー』のカバーに包まれたネズミの死体が放り込まれる(映画のシーンの再現!)という事態になるのだが、映画作りに賭けるラディはなんと、マフィアのボスであるジョーのところにいって直接交渉する!

「これは家族の物語で、イタリア系はむしろ応援したくなる。社にきて脚本を読んででもらえればわかる」

といってジョーとボディガードのシーザーをパラマウントのオフィスに入れてしまう。脚本を読んだジョーはマフィアという言葉は侮蔑表現だから変えろといい、ラディはそれを約束する。

 こうしてジョーは半ばアドバイザリーのような形で『ゴッドファーザー』の制作に関わるようになる。この関係はまるで任侠映画をつくるようになった東映が製作上の様々なトラブルを回避するために本職の人間を製作進行として雇い入れたのと似ている。名作映画の背後には本当にマフィアが絡んでいたのだ。

これでスムーズに製作が続くと思いきや、キャスティングをめぐって難航する。ラディやコッポラたちはドン役をマーロン・ブランド、ドンの息子で三男のマイケル役にアル・パチーノというキャスティングを組むが、パラマウント側は「ブランドなんか落ち目だ」「パチーノって誰だ?もっと売れてるやつを使え」と譲らない。とにかく『ゴッドファーザー』の制作はなにひとつスムーズに進まないのだ。

 ニューヨークのピアッジ市長も『ゴッドファーザー』を嫌っており、ロケ地の邸宅を使わせないといった嫌がらせをするのだが、それを聞いたジョーは「決して断れない提案」をしようという。どうするかというと邸宅の持ち主を誘拐してきて「ロケに使わせてやれ」と脅すのだ!さらに再選を目指す選挙が近づいている市長に「イタリア系移民は全部あんたの敵に回る。何十万票を失いたいのか?」とかます。市長は掌を返して映画のロケを全面的に認める。

 さすがのラディも「借りをつくっちまった」と後戻りできない道に足を踏み入れていることに気づく。ついには市民連合会の檀上でラディとジョーが握手をするところをマスコミに撮られてしまい、「パラマウントはマフィアと手を組んだ」と新聞に書かれてしまう大騒動に。

 パラマウントはエヴァンスの『ある愛の詩』がヒットしているのを利用して、株価が上がっているうちにどこかに売ってしまえと企んでいたのだが、この騒動で売値は半分以下になり、責任を取ってラディはクビに。しかし彼の力を評価しているエヴァンスが重役陣を前に演説をうち、「現場を収められるのはラディしかいません」とクビを撤回させようとする。さらに現場ではジョーの部下の強面たちがラディが復帰しないなら撮影はさせねえと嫌がらせをしていた。そういうことしてるから問題になってるんだって!

 こうして売却話はなくなり、ラディは現場に復帰。パラマウントはなんとしても『ゴッドファーザー』をヒットさせるしかなくなる。

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