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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > バカリズム、ピン芸人は「一番美しい」

バカリズム、ピン芸人は「地獄」で「一番美しい」 一方その頃、永野はブックオフで…

永野「若手に言いたいです。ファミレスじゃなく、ブックオフに行け」

 他方、同じピン芸人でもこちらは人によって特に好みが分かれるかもしれない。芸人の永野。彼が25日の『やすとものいたって真剣です』(朝日放送)にゲスト出演していた。

 この日は芸人のお金の使い方に関するトークが繰り広げられていて、永野は“ドケチ”の代表のようなポジションで出演していた。そんななか、彼に密着したVTRのあるシーンが興味深かった。

 デビュー以来、身につけているものは貰いものや古着ばかりだという永野。彼は“行きつけの店”としてブックオフに密着カメラを連れていく。古本などを販売で全国展開している、あのブックオフだ。

 永野はブックオフを訪れると、まず330円以下のCDコーナーに来るらしい。なぜか。ここには彼のネタの種があるのだという。

「ブックオフ来て、330円以下で、たとえばこちら、都はるみさん(のCDが)あるでしょ? 自分が求めてたものではないけど素晴らしいものとか。(近くの棚には)写真集があったりとか、そういうの見てて、お笑いのネタが浮かぶんですよ」

 永野いわく、安さを求めるならインターネットのほうがいいかもしれない。けれど、ネットはほしいものに直接手を伸ばす。あるいは、ほしいものに関連する“おすすめ”の商品までは手が届く。一方、ブックオフに行けば、サザンオールスターズのCDの近くに篠田麻里子の写真集が置いてあったりする。これはネットの“おすすめ”には出てこない組み合わせだ。

「この広がりです。篠田麻里子さんからサザンオールスターズまであるぞみたいな」

 そんなブックオフの棚の広がりのなかからネタができる。たとえば、サザンオールスターズの水着グラビアというネタができるかもしれない。彼のネタに固有名(しかもちょっと古めの芸能人の名前)が多いのもうなずける。別の例として永野は、X JAPANのCDと映画『スパイダーマン』のDVDを手に取りながら語る。

「スパイダーマンの中身がXのToshlさんだったらっていうネタをつくってました、ブックオフで」

 ブックオフがもたらす偶然の出会い。ドン・キホーテとかヴィレッジヴァンガードのような設計された偶然性でもない。いろんな人が持ちこんだ中古品がジャンルと値段と五十音順でただただ形式的に羅列された、作為がほぼ排除された偶然性。永野のネタはそのなかから生まれる。彼は商品棚の上のランダムな点と点を結び、立体的にしていくのだ。永野は若手芸人に呼びかける。

「若手に言いたいです。ファミレスじゃなく、ブックオフに行け」

 いや、もちろん、虚構のキャラクターを演じているようにも見える彼の言葉をどこまでストレートに受け取るかもまた、人それぞれなのだけれど。

 一方、デヴィ夫人がゲスト出演していた25日の『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ系)。夫人は、ランジャタイのネタに千鳥ら共演者が笑っているのを見て言った。

「なんかみなさん、無理してる?」

 ランジャタイのネタはみんなで笑うことで盛り立てるところがある気がするけれど、そんな構造を喝破するかのような言葉である。ピンでテレビに出るタレントがいかに空気を読みながら芸能界をサバイブしているかを当事者であるタレントが語る時代にあって、周囲に迎合しない夫人はピン中のピンのタレントなのかもしれない。そのスタンスを“美しい”と思うかどうかは、人それぞれだろうが。

 

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

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いんようてれび

最終更新:2023/02/27 18:59
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