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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > 『耳すま』ファンが”一番めんどくさい”
今週の『金曜ロードショー』を楽しむための基礎知識㉔

『耳をすませば』をジブリ作品ベスト1にするファンが”一番めんどくさい”理由

宮崎駿自身の戒め?

『耳をすませば』をジブリ作品ベスト1にするファンが一番めんどくさい理由の画像4
『耳をすませば』スタジオジブリウェブサイトより

 ただ、少年少女の恋愛や青春時代を必要以上に美化して「俺たちはしくじったけど、君らは失敗するなよ!」と説教臭くなることをたくみに避けている。

 雫は夢を追う期限を明確に決め、「物語」を完成させる。時間に急かされながら書き上げた雫は自分の「物語」に自信がなかったが「物語」を読み終えた西老人は「あなたの切り出したばかりの原石はこれから、時間をかけてしっかり磨き上げていけばいい」という。

「いい歳した大人たち」にはない時間があなたたちにはたくさんあるのだから、あせらずにやっていけばいいのだと。雫は書き上げるまでの過程で勉強すらも投げうって執筆に邁進したけれど、出来上がった「物語」はまだ稚拙で、西老人のいう「原石を磨き上げる」経験、期間が必要なのだということがわかる。

 劇中で西老人は「歳をとると説教臭くなっていけない」と自虐的に言ってみせており、おそらく宮崎駿自身も説教臭くならないように自らを戒めるようなセリフと近藤喜文監督の繊細な演出、そしてどの世代もむずがゆくなるような描写の本作を見るたびに「いい歳した大人」「過去は過ぎ去りもうない」世代の筆者は辛い思いを感じてしまうのだが、きっと今回の放送も見てしまう。

 そして、「僕のスタジオジブリベスト1作品は『耳をすませば』だよ」と恥ずかし気もなく堂々と言い切ってしまうだろう。

 

しばりやトーマス(映画ライター)

関西を中心に活動するフリーの映画面白コメンテイター。どうでもいい時事ネタを収集する企画「地下ニュースグランプリ」主催。

Twitter:@sivariyathomas

しばりやとーます

最終更新:2022/08/27 21:59
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