『耳をすませば』をジブリ作品ベスト1にするファンが”一番めんどくさい”理由
#ジブリ #金曜ロードショー #しばりやトーマス #金ロー
『耳をすませば』は「過去は過ぎ去りもうない」ことを突きつける
雫は地球屋に行き、そこで再び例の男子生徒と出会う。地球屋は男子生徒の祖父が店主で、自分は時折地下の工房でヴァイオリンを作っていることなどを教えられる。何か弾けるのかと雫に聞かれ、カントリーロードの一節を弾きはじめ、それに合わせて和訳の歌詞を歌い始める雫。やがて帰ってきた店主と仲間たちとの即興セッションがはじまる。そして男子生徒こそが図書カードの「天沢聖司」であったことを知る!
聖司にはイタリアでヴァイオリン職人になるという夢があるが、親には反対されているという。夢のために何をすればいいのかという明確な目的を持っている聖司を見て、夢も進路の希望もない雫は劣等感に苛まれる。
二カ月ほど祖父の知り合いの元で修業をし、ものになるなら留学をしてもよいと親を説得した聖司を見て、雫は自分の中にある「物語」を書き上げようと決意する。しかし執筆に没頭したせいで、学校の成績を落としてゆく雫は母親や姉に説教される。高校受験をおろそかにしてまでやることなのかと聞かれた雫は咄嗟に「高校なんかいかなくてもいい」と口走ってしまう。図書館で普段は読まない本にまで手を出して、一心不乱に何かに打ち込んでいる雫を見ていた父親は「人と違う生き方はしんどい。誰のせいにもできない」とだけアドバイスし、雫の行動を後押しする。やがて「物語」を完成させた雫は、最初に読ませる約束をしていた地球屋の西老人の元を訪れる。
映画『耳をすませば』は鑑賞した人の年代によって異なる捉え方、感想が生まれる作品だ。雫や聖司たち登場人物と同年代の少年少女なら自分たちが、今まで意識もしなかった恋の悩み、進路の問題に直面し他人事ではいられないだろうし、社会に出ている世代ならかつて、自分が経験したであろう過去に思いを馳せたり、「そんなこともあったな」と記憶を再確認するかもしれない。そして宮崎駿と同世代の「いい歳した大人たち」は自分たちの時代にはこんな経験、恋愛なんてなかったと悲しみに暮れる。
「いい歳した大人たち」にとってあまりに残酷な「過去は過ぎ去りもうない」という現実を突きつけられてしまう『耳をすませば』ですが、「未来は来たらずまだない」という世代の若い人たちにとってはいい歳した大人たちからのエール、メッセージでもある。
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