『ちむどんどん』暢子と良子、なぜか「あきらめない!」話に脳内変換(第20週)
#朝ドラWATCH #ちむどんどん
矢作(井之脇海)が、無言で青パパイアに包丁を入れる。包丁がまな板に柔らかくあたる音が響き、矢作の目に、再び料理ができることへの喜びの涙があふれ、ゆっくりだった包丁の音がトントンとリズミカルになっていく。彼を照らす光も美しく、いいシーンでしたね。このドラマで初めて「料理を作る喜び」の映像化を見たかもしれない。ということでこの週は、「おかえりなさい矢作」週です。
そして、矢作が待遇に不満を持っていた「アッラ・フォンターナ」はブラックな職場なのかホワイトだったのか、わからなくなった週でもありました。「ちむどんどん」(ドラマの名前ではなく、店の方の)で矢作が働く条件として挙げた「休みは週1日、残業なし、給料は遅れず支払う」、これらを守らないブラック企業だから彼は飛び出したのかもしれない。でも、妊娠した暢子にオーナーの房子(原田美枝子)が提案した「店のオープンを延期し、フォンターナに戻って経理の仕事をして産休を取って出産」という話を聞くと、思いやりのあるすばらしいホワイト企業に思える。
でも、こう言われた暢子(黒島結菜)は、「オーナーが、妊娠したなら独立開店は許さないってー」「あきらめたくない」と母・優子(仲間由紀恵)に愚痴るんですよね。いや、許さないとかあきらめろとか言ってないでしょ、なんでこんな伝言ゲームしちゃう主人公なの、ちゃんと話聞いて、ちゃんと伝えて。そして、あきらめたくないと言うだけで特に何もしていないのに、オーナーから「人を雇え」という再提案があり、タイミングよく鶴見に矢作登場で解決。これはやっぱり、何もしてない暢子にはホワイトで、がんばる他の従業員にはブラックという待遇差が矢作の不満だったのでは。かわいそうな矢作。かわいそうな、矢作と共にやめてどこかに消えた2人。
それにしても暢子と良子(川口春奈)の「あきらめない!」には絶対勝てないですね。2人がこう言ったら、代わりに相手が何かをあきらめるしかない。良子の娘・晴海(鈴木咲)が嫌いな野菜を食べるようになったのは、優子の畑仕事を手伝ったからだと思ったら、優子の中では「給食の野菜を残す学校の子どもたちに、おいしいこの地域の野菜を食べさせよう! あきらめません!」になっていたのは予想外でした。あの畑でのエピソード、美しかったのになあ。
矢作が体全体で表した「料理が好きだ」という情熱とは逆に、歌子(上白石萌歌)から「歌うことが好きだ」という情熱が最近見えなくなっているのも気になります。いつも歌わずにはいられなかった女の子はどこにいってしまったんでしょう。そして彼女に嘘をついて、居酒屋の酔客の前で歌わせようとした智(前田公輝)、「ファン第1号」なのに、自分の「推し」を理解してなさすぎでは。だまされたと激怒する歌子も、暢子の披露宴で自分が智にしたことを忘れすぎでは。あの披露宴では参列者の前で堂々と歌えたことを忘れすぎでは。男女の身体的接触があったら「キュン……!(ハート)」となる描写、昭和すぎでは。
…などのツッコミどころも、井之脇海さんがすばらしかったからすべてオッケーな雰囲気ですが、「ちむどんどん」(店)大丈夫なんでしょうか。矢作が自嘲する「調子乗って独立して、分不相応な店構えて、半年も持たないで」って彼の店の経緯、3人で切り盛りしていた「あまゆ」よりも席数が多い「ちむどんどん」(店)の未来予想図みたい。良子夫婦からの200万円をすでに支払い、融資を受けてスタート、店主は妊婦。矢作の人件費もプラスされ、事業計画はいったいどうなってるのか、考えるだけで怖いんですが、『ちむどんどん』(ドラマの)での借金は毎回いつの間にか返したことになってるので、「ちむどんどん」(店)もたぶんうまくいくんでしょうね。
って、「ちむどんどん」と書くたびに「えっと、こちらはドラマのことでこちらは店で」ってなるので、なにか店専用の呼び名がほしいです。「アッラ・フォンターナ」が従業員による電話応対でさえも正式名称で呼ばれず「もしもし、フォンターナです!」で済まされていたように、呼びやすい略称を。「ちむどん」とか「どんどん」とか。「もしもし、ちむどんです!」これでどうでしょう。ちょっと丼もの専門店っぽくなっちゃいますが。
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NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス
出演:黒島結菜、仲間由紀恵、大森南朋、竜星涼、川口春奈、上白石萌歌ほか
作:羽原大介
音楽:岡部啓一、高田龍一、帆足圭吾
主題歌:三浦大知「燦燦」
語り:ジョン・カビラ
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:高橋優香子、松田恭典
広報プロデューサー:川口俊介、鈴木 葵
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/chimudondon
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