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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > ロバート秋山の“ファスト番組”実践

ロバート秋山、タイパ至上主義時代に実践する“ファスト番組”のとあるオチ

ロバート秋山「なんでも短くしていかなきゃ」タイパ至上主義時代のファスト番組実践の画像1
『秋山と映画』(テレビ朝日系)TVer公式サイトより

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(8月14~20日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

ロバート・秋山「もう、短くしていかなきゃいけない時代に突入してるんですよね、テレビも」

「いま音楽業界に起こってることが、5年後ぐらいに映像業界にも起こってくるぐらいのイメージ」

 以前、元テレビ東京のプロデューサー、佐久間宣行がこんなことを言っていた(『ぺこぱポジティブNEWS』テレビ朝日系、2022年6月9日)。まず音楽業界で変化が起き、それに映像業界が続く。なぜか。佐久間いわく、それは音楽のほうが映像よりもデータが軽いからだ。

 音楽のイントロが短くなった、と言われ始めたのはいつごろだろう。確かにそのあと、個々の番組の放送枠も短くなってきたような気がする。1時間やってた番組が30分になったり。倍速視聴やファスト映画などをとりあげた新書『映画を早送りで観る人たち』(著・稲田豊史、光文社)が話題になったりもしている。

 短く。わかりやすく。簡潔に。そんな傾向があるような気はする。消費者は、コスパならぬタイパ(タイムパフォーマンス)を重視する。変化はデータの軽いほうから起こる。だとしたら、短さ・わかりやすさ・簡潔さが求められる傾向は、文章の業界ではもっと前からなのかもしれない。なお、ここまでの文章、一文と一段落が短くなるようにちょっと意識して書いている。

 そんななか、17日の『秋山と映画』(テレビ朝日系)が面白かった。同番組は毎回1本の新作映画をPRする番組だ。ただ、メインの出演者はロバートの秋山竜次。彼が出ていて“普通”のPR番組なわけがない。

 今回紹介された映画は『ソニック・ザ・ムービ/ソニックVSナックルズ』。テレビゲームでおなじみのキャラクター、ソニックが主人公の映画だ。ソニックは超音速で移動する。そのことをふまえ、番組冒頭で秋山は次のように語り始めた。

「もう、短くしていかなきゃいけない時代に突入してるんですよね、テレビも」

 いまはテンポで見せないといけない時代だ。番組も要点をしぼらなければいけない。そうしないとすぐに飽きられてしまう。スマホで見てる人は途中でスワイプしてしまう。今回は超音速で移動するソニックの映画を取り上げるので、これを機にロケも超音速でやりたい――。

 秋山はそう語り(=コントの設定を説明し)、商店街のロケを“超音速”で敢行する。飲食店の人気メニュークイズはカットする。古着屋のコーディネート企画もできるだけカットする。着ぐるみのソニックとの瓦割り対決もさっくり済ませる。

 また、銭湯で服を脱いでその下に梅宮辰夫Tシャツを着ていても、そのネタはやらない。脱衣所でくしゃくしゃに脱ぎ捨てられる梅宮Tシャツ。かつての銀幕スターも、ファスト映画の時代には雑にくしゃっとされる。

 ロケをやりながら、秋山はスタッフにVTRの編集も指示していく。紆余曲折ありつつ、最後はこんなテンポのいいというか、テンポしかないVTRに仕上がりそうになるのだった。

「戸越銀座で、あーん、シャッ、ヒョウ、シャッ、ヘビ、パリン」

 が、スタッフいわく、秋山が指示するとおりにVTRをつくると番組は4分ぐらいにしかならない。約23分の放送時間の“尺”がまったく埋まっていないというのだ。ロケ尺を埋めるため、秋山は路上で映画のチラシを見ながらソニックの毛量の多さについて「ポメラニアンみたいな毛質してる」などと指摘した。

 無駄な部分を徹底的にカットしていたはずのロケは、最終的にこの世界に「ソニックはポメラニアンみたいな毛質してる」という大いなる無駄な情報を生んだ。ファストを推し進めた末の無生産。なんだかとても皮肉の効いた構成だった。

――と書き連ねながら、私もこの番組を倍速で見ていたりするわけだけれど。

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