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TPの芸人礼賛

『M-1グランプリ』が今年も始まった!金属バットに裏切られ続けるPが見た夏の一幕

――お笑い大好きプロデューサー・たかはし(TP)が見た、芸人たちの“実像”をつづる。

『M-1グランプリ』が今年も始まった!金属バットに裏切られ続けるPが見た夏の一幕の画像1
筆者撮影

 8月1日はお笑いファンにとって特別な日だ。なぜなら『M-1グランプリ』の予選1回戦が始まる日だから。8月1日から年末の決勝戦まで約5カ月間、多くのお笑いファンは常に『M-1』を意識して生活する。「◯◯が1回戦通過」「××がめちゃくちゃウケたらしい」など、『M-1』に関する情報を貪り続け、来るべき冬に備える。

『M-1』といえば、お笑いファンだろうと数年前までは「年末の決勝戦を楽しむモノ」だったと思う。しかし昨今のお笑いブーム、動画配信の充実化、SNSの普及、面白い芸人の異常増殖……など複合的な理由で、いつしか『M-1』は予選1回戦から楽しめるモノになった。ちょっと気が早すぎるのではと思いながら、かく言う僕も例に漏れず1回戦の結果から一喜一憂する純度100%の『M-1』ウォッチャーだ。

 こんにちはこんばんは申し遅れました、この文章を書いております高橋と申します。高橋プロデューサー略して「TP」と呼ばれることが多いです。インディアンスきむさん・オズワルド畠中さんと同じ1987年生まれ、誕生日は銀シャリ橋本さんと同じ9月27日です。テレビやラジオ、ネット配信やYouTubeなどさまざまなコンテンツでプロデューサーや作家、時に出演者もやっております。このたび「日刊サイゾー」で連載をさせてもらうことになりました。つまりなんでも屋です、お仕事ください。お笑いが大好きです。

『M-1グランプリ2022』、今年はどんなドラマが繰り広げられるんだろう。ハイレベルで熱い戦いになることは間違いない。そんな僕も、『M-1』の予選が始まるちょうど1カ月前、とある“M-1戦士”のために、人知れず熱い戦いを繰り広げていた……。

「“いくら”がない!」

 僕は朝から都内のスーパーを4軒はしごして、収録で使う“いくら”を探していた。朝とはいえ気温は30℃超、バカ暑い、どこのスーパーにもない、よく考えたらスーパーでいくらを買ったことがない、ナメていた、すじこはどの店にもある、すじこじゃダメ? すじこといくらの違いは何? 色だけ? お母さん違うの? 知らん、でも「いくら」って決めたんだからいくらじゃなきゃダメだ、それがプロってもんだ……灼熱の太陽に負けないほど燃えたぎるTHEプロ意識。

 なぜこんなにいくらを探していたかと言うと、その日は金属バットのYouTubeチャンネル「金属バット無問題」の収録で、友保さん(猫背ロン毛のほう)の誕生日企画「こぼれいくら丼作り」をするからだ。友保さんが以前「こぼれいくら丼を食べてみたい」と言っていたので、誕生日祝いとして食べてもらうために躍起だった。

 金属バットと言えば、昨年の『M-1』で惜しくも敗者復活戦2位で決勝には進出できなかったものの爪痕を残しまくった“M-1戦士”、今年は結成15年目のラストイヤー組として大注目のコンビである。

 お笑い好きな人ならご存知だと思うが、金属バットという芸人は、ありとあらゆる質問をボケで返すので、本心を聞き出すのが難しい。やりたいことを聞いても「ハワイでアロハポーズしたい」や「ギャル100人を体育館に集めてドッジボールしたい」など現実味のない答えばかりが返ってくる。なので「こぼれいくら丼を食べたい」と、明確にやりたいことを伝えてくれるのは激レアも激レアなのだ。だからどうしても実現させたい。いくらがないと困る。もしかしてメスの鮭を一匹買ってお腹を掻っ捌いたほうが早い? とも思ったけど、鮭のオスメスの見分け方を知らないしうまく掻っ捌けるか自信ないしそもそも鮭ってそんな子持ちシシャモみたいな構造か疑問だったのでボツ。

 幸い5軒目のスーパーでいくら2パックを購入し(超高かった)、収録に間に合うことができた。

「こぼれいくら丼作り」は、友保さんに白米だけ入った丼を持ってもらって、そこに相方の小林さんが「ヨイショ」のかけ声とともにスプーンでいくらを一杯ずつかけていき、こぼれそうになったら「ストップ」と言ってもらう算段。最高、絶対喜ぶ、少し品がないけど世界よこれが日本が誇る最高のエンタメだ。

 見通しは完璧。

 こぼれいくら丼作り、スタート。

 友保「ストップ!」

 !?

 先日人間ドックで「異常なし」診断を受けたばかりの我が耳を疑った。まだ一粒もいくらをかけてないのに「ストップ」って言った?

 その直後、友保さんはいくらを一粒もかけずに白米をかきこみ始めた。

 先日人間ドックで「両目1.5」の診断を受けたばかりの我が目を疑った。本日の主役がただただプレーンな白米をかきこんでいる。たとえそれが魚沼産の最高級コシヒカリだとしても、漬物か味噌汁は欲しいところだ。

 友保「(モグモグ)白米は贅沢品ですからね、最高の誕生日ですよ(モグモグ)」

 その横で黙々といくらを食べる相方の小林さん(大きい坊主のほう)。

 誕生日の友保さんはただただ白米をかきこみ続け、誕生日でもなんでもない小林さんがいくら2パックを全てたいらげて企画は終了した。

 芸人さんだから予定調和を嫌うのは当たり前で、まして金属バットなんてその最たるコンビ。これまでも幾度となくその洗礼を浴びてきたが、まだその想像を超えてくるのか……朝、スーパーを5軒はしごしたのが見事に無駄になった。虚しさで体の力がふわっと抜ける。

 収録前のあの完璧な見通しは一体なんだったんだ。

でもめちゃくちゃ面白かった。
だから何も問題ない。無問題。

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