尾野真千子の母ちゃん役がスゴい! 令和に昭和なド直球少年映画『サバカン SABAKAN』
#映画 #草なぎ剛 #尾野真千子
令和4年、気持ちいいほどにド直球な子どもの冒険譚
今作の時代設定は1980年代。金沢監督の少年時代が反映されていることもあり、懐かしさで充溢している。
しかし、今作は『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)のような、懐かしさの押し売りともいえる“昭和賛美”映画ではない。今作で描こうとしているのは、あくなで純粋な子ども時代の冒険と青春。
それは、時代がどんなに変わっても共通するものだ。
子どもの”冒険”を描く上で、おばけやファンタジー、ミステリー要素は必要ない。友達とどうやって仲良くするか、そんな些細に思えることも子どもにとっては大問題だったし、近所のいつもの遊び場からちょっと遠くに行くことだけでも大きな出来事なのだ。
車を使えば近い場所であっても、自転車を必死に漕いで、汗だくになってやっと到着した先の景色やそこで得た感動は、大人が同じ場所に立ってみても味わえない、とてもかけがえのないものである。
――そんな特別な思い出もいつしか忘れてしまうのだから、人間というのは本当に不器用だ。
どこかに置いてきてしまった大切なものを今もう一度探しても、同じものにはたどり着かないかもしれない。でも、探してみようという、その気持ち自体が大切なのだ。
本作では、そんなメッセージ性が混じりっけのなしに描かれているのだから、潔いとしか言いようがない。昭和が終わり、平成も終わり、令和も4年だというのに、こんなにも純粋でド直球な子どもの冒険譚を、今になってスクリーンで観れるとは思わなかった。
そしてそんな物語に彩り……というより、素朴さを加える俳優たちにも注目してもらいたい。今回がデビュー作となる子役の番家一路(久田孝明役)と原田琥之佑(竹本健次役)、孝明の父親役のシンガーソングライター・竹原ピストルらがいい味を出している。とりわけ、孝明の母親役を演じている尾野真千子の母親像のレパートリーには驚かされるばかりだ。
尾野は現在公開中の映画『こちらあみ子』のほか、『茜色に焼かれる』(2021)や『20歳のソウル』(2022)など、近年は母親を割り当てられることが多いが、どの作品でも違った母親像を演じている。
今作では、息子の成長を見守る“昭和の母ちゃん像”を見事に体現しており、たとえリアルな身近に似たような人がいなかったとしても、「こんな人いたよなぁ~」と思わせてしまうのが凄いところだ。
『サバカン SABAKAN』
8月19日(金)より全国公開
出演:番家一路 原田琥之佑 尾野真千子 竹原ピストル
村川絵梨 福地桃子 ゴリけん 八村倫太郎(WATWING) 茅島みずき 篠原 篤 泉澤祐希 貫地谷しほり 草彅剛 岩松了ほか
監督:金沢知樹
主題歌:ANCHOR「キズナ feat. りりあ。」(VIA / TOY’S FACTORY)
宣伝:モボ・モガ
配給:キノフィルムズ
製作:CULEN ギークサイト
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