放送作家が指摘する「人の欲求を掘り起こすツイッター」
#深田憲作 #企画倉庫 #アレのどこが面白いの?~企画倉庫管理人のエンタメ自由研究~
放送作家の深田憲作です。
「企画倉庫」というサイトを運営している私が「あの企画はどこが面白いのか?」を分析し、「面白さの正体」を突き止めるための勉強の場としてこの連載をやらせてもらっています。
今回のテーマは「企画として見たツイッター」です。
最近の時事ニュースでいうとイーロン・マスクがツイッターを買収すると宣言した後、撤回するなどゴタゴタしていますね。
いつもはテレビ番組やYouTubeをテーマに記事を書いているのですが、ふと「ツイッターって企画として凄いな」と思い、本稿を書いてみることにしました。
ツイッターの日本進出は2008年。私がどのタイミングでツイッターの存在を知ったかは全く覚えていませんが「絶対に日本では流行らないだろうな」と思った記憶だけは残っています。私だけでなく多くの人がそう思ったのではないでしょうか。
「焼肉なう」
「家で一人呑みなう」
……そんなことを他人に知らせてどうするの? と、冷めた気持ちが浮かんだのを覚えています。自分の考えをネットで公に発信したい人にはブログがあるし、人と繋がりたいのであればmixiがある。たった140文字で自分の状況を他人に発信して共有するというサービスは、日本人の気質には合わないだろうと感じました。しかし、結果はみなさんの知るところ。完全に市民権を得ています。
このツイッターのヒットには、全ての企画者にとっての学びがあると思います。
まずは「企画とは、人の潜在的欲求に気づくところから始まる」ということ。
ツイッターを考えたジャック・ドーシーは、ある時にこう気づいたそうです。「人間は今の状況を他者に伝えたい欲求がある」。こう聞くと、そこまですごい気づきには思えませんが、これに気づける人はごくわずか。この“気づき力”こそが、企画者の優劣を分けると言っても過言ではないと思います。
そして、この気づきを実行に移す際に「文字数を140字に制限したこと」も企画として素晴らしいと思いました。
企画を考える時、ほとんどの人が「これも入れよう」「あれも入れよう」と足し算をしがち。引き算や制限を加えることが出来る企画者は、少ないと思います。「企画はシンプルがいい」というのは分かっていても、実行に移す際に物足りなくなってつい足し算をしてしまうものです。
最初はいいと思っていたアイデアも、自分の中で鮮度がなくなってしまってつい足し算をしてしまうのは、テレビマンにも“あるある”の現象だと思います。そうならないためには、企画に対して確固たる信念や自信がなければ、簡単にブレてしまいます。ジャック・ドーシーにはそれがあったのでしょう。
ツイッターに関して、ホリエモンさんが秀逸な見解を述べられていました。「ツイッターはタイトルを考えなくていいから書く人の心のハードルが下がる」と。
言われてみると、確かに私もブログなどを書く時にタイトルで少し考え込んでしまったり、煩わしく感じてしまうことがあります。曲がりなりにも「作家」と名の付く職業の私でもそうなのですから、多くの人が潜在的にタイトルを考えることへの億劫さを感じているのでしょう。一流のビジネスマンはやはり、こういうところに気づけるのだなと感心しました。
ジャック・ドーシーがタイトルを意識していたかどうかは分かりませんが、本来は当たり前にあるものを引き算してみることで斬新な企画が生まれるかもしれません。
今後、会議などで他人のアイデアに対して否定的な意見が浮かんだ時は、ツイッターのことを思い返すようにしたいと思います。みなさんも「大ヒットは常識の外から生まれる」ということを頭の片隅に置いておきましょう。それでは今日はこのへんで。
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