妊婦のペットとしてよりよいのは“猫より犬”富山大研究G発表
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妊娠中や出産後のペットは、猫よりも犬が良い。富山大学の研究グループは8月5日、妊娠中における犬の飼育は母親の精神健康に対する保護因子である一方で、猫の飼育は精神健康に対するリスク因子であるとの研究結果を発表した。
https://www.u-toyama.ac.jp/wp/wp-content/uploads/20220805_1-1.pdf
妊娠中から産後にかけての女性は、精神健康が不安定になりやすい集団のひとつ。妊娠中から産後にかけては、ホルモンバランスの乱れなどからくる体調の変化や、育児による生活リズムの変化などにより、うつなどを発症する可能性が高まることが知られている。
発表によると、研究グループはエコチル調査に参加している8万814人の女性を対象に、妊娠中のペット飼育(犬・猫の飼育なし、犬のみ飼育、猫のみ飼育、犬・猫の双方飼育)と、妊娠中から産後1年までの精神健康(抑うつ症状および心理的苦痛)との関係を調べた。
エコチル調査とは、環境省が実施している「子どもの健康と環境に関する全国調査」。10年度から全国で約10万組の親子を対象として開始された。
研究チームは解析に当たって、ペット飼育以外で精神健康に関連すると考えられている年齢、社会経済要因、精神疾患既往歴などの計17の要因も考慮した。
解析により、以下の結果が得られた。
(1) 犬を飼育している集団は、犬も猫も飼育してない集団と比べ、産後1か月および 6か月における抑うつ症状が低かった。また、産後1年における心理的苦痛も低かった。
2) 猫を飼育している集団は、犬も猫も飼育してない集団と比べ、産後6か月における抑うつ症状が高かった。また、妊娠中における心理的苦痛も高かった。
3) 犬と猫双方を飼育している集団は、犬も猫も飼育してない集団と比べ、妊娠中における心理的苦痛が高かった。一方、その他の時期においては、犬も猫も飼っていない場合と同程度であった。
この解析結果により、研究グループでは、「飼っているペットの種類(犬・猫)が、周産期および産後の母親の精神健康維持において異なる役割を果たしている可能性が示唆された」としている。
周産期とは、妊娠22週から出生後7日未満までの期間で、合併症妊娠や分娩時の新生児仮死など、母体・胎児や新生児の生命に関わる事態が発生する可能性が高くなる期間。
ただ、今回の研究について
(1)観察研究であるため、犬や猫を飼ったことに起因する結果を直接的に示している訳ではなく、因果関係を扱っていないこと
(2)妊娠中の1時点でしかペットの飼育状況を聞いていないこと
(3)犬や猫の種類や頭数を聞いていないこと
などが限界となっているとしている。
このため、「今後は飼っているペットの種類をより細かく解析するといった工夫をした上で、ペット飼育と精神健康との関係について長期的な調査を続けていく予定」だという。
いずれにしても、猫に寄生するトキソプラズマ原虫に妊婦が感染すると、胎盤を経由して赤ちゃんに悪影響が及ぶことがあることや、海外の研究では18年間の追跡調査で、特に女性の肺がんによる死亡率をペットのいない場合に比べ、犬の飼育は1.01倍に、猫の飼育は2.85倍に高めるとのデータもあり、妊娠中や出産後の一定期間については、ペットの飼育については慎重に考えた方が良いかもしれない。
この研究成果は社会科学・医学系専門誌「Social Science & Medicine」に7月11日に掲載された。
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