『YOUは何しに日本へ?』YMOの最高傑作を探すマニア外国人一家のレコード旅、反抗期と離婚
#YOUは何しに日本へ? #YMO
妻との離婚の理由はリストラか、それともYMO……?
この密着から5年後、番組はYMOマニアの父に追加取材を行った。オンライン通話で、デンマークにいる彼と連絡を取ったのだ。
パソコン画面に映る5年ぶりの彼は、明らかに太っていた。髪も薄くなったし、老けているのだ。荒れた生活を送っていたのか?
「あれからいろいろあったんだよ。実は、日本から戻ったすぐ後に会社に解雇されたんだ。新聞社に12年勤めていたんだけどね……。人件費削減らしい」(父)
デンマークも不景気なのだろうか? 新聞社はどこもキツそうだし、リストラのストレスで髪が薄くなったのかもしれない。体型が太ったのは勤め先がなくなり、動かなくなったからか?
困難は、それだけじゃない。
「家族で住んでいた家があったんだけど、妻と別れたから家を売ったんだよ。今はそのお金で生活しているんだ」(父)
金の切れ目が縁の切れ目ということ? それとも、レコード収集癖に呆れた妻に逃げられた“YMO離婚”だったか? 5年前のレコード旅に奥さんだけ来ていなかったから、おかしいとは思っていたが……。
とにかく、今の彼は悲壮感が漂っている。エンドレスでYMOを聴く生活を送り、YMOの音楽が日々の支えだそうだ。
――ちなみに、今、欲しいレコードはありますか?
「実は、まだ見つけられていないレコードが1枚だけあって……。『ノーティボーイズ』という、1983年のアルバムが見つからないんだ」
『NAUGHTY BOYS』、すなわちYMOの『浮気なぼくら』のことである。シングル「君に、胸キュン。」を収録した、大ヒット作だ。あくまで、YMOを求める欲はブレていない彼。5年前とは違い、今やサブスクが全世界に浸透したが、この手のマニアはジャケットも込みで手元に置いておきたいのだろう。
――よかったら、僕たちがこちら(日本)で探しましょうか?
「Really!? 君が代わりに探してくれるって言ったのかい? オ~ワォ~、素晴らしい! 君は僕のヒーローだ!!」
異常な食いつきで、前のめりになる彼。番組も粋なことをするものである。不幸続きの彼に、ぜひ『浮気なぼくら』を送ってあげてほしい。
渋谷のHMVに行けば、YMOはいつも見つかる
というわけで、渋谷に降り立った番組スタッフ。リモートでデンマークと中継しながらレコード探しに奔走するようだ。5年前と比べてCD店はかなり少なくなったが(RECOfan 渋谷BEAM店も閉店)、目指すお店は決まっている。HMV record shop 渋谷である。
「やっぱり、HMVだよね」(父)
スタッフがYMOコーナーに向かうと、帯付きの『浮気なぼくら』がいきなりあった! 一発で、あっさり見つかったのだ。しっかり帯付きだし(帯で隠れた細野の顔は、帯の上にモノクロ印刷されている)、価格は1,430円とお手頃価格だ。すごく売れたアルバムだから、東京にいると簡単に見つかってしまう。あと、外国人がレコードを探しにくるたびに、HMV record shopの株が上がる現象も胸アツ。やはり、信用できる店だ。
「実は10年前から(『浮気なぼくら』を)探してたんだけど、そんなすぐ見つかるとは……」(父)
「YMOが生まれた日本で、自分の足で探して手に入れることが重要」と、言っていた彼。だからこそ、スタッフとリモートで繋がりながらの捜索だったのだろう。便利な世の中になったものだ。この1枚を、デンマークに住む彼にプレゼントするわけである。
「また日本に行ったときは1杯おごらせてください」(父)
恩に着る、YMOマニアの彼。でも、その前にまずは仕事を見つけてほしい。そして、その英気を養うため、スタッフが見つけた『浮気なぼくら』を聴きながら元気を出してほしい。
付け加えると、『YOUは何しに日本へ?』制作陣も信用できるスタッフだった。レコードを探す際はYMO「CUE」(「手がかり」の意味)を、娘が眠そうになっているときは坂本龍一「INSOMNIA」(「不眠症」の意味)をBGMに選ぶセンスがである。あと、『浮気なぼくら』を紹介するときに流れた「君に胸キュン。」は、暑い今年の夏にぴったり! 松本隆が手掛けた「夏の印画紙 太陽だけ焼き付けて」という歌詞は、いつ聴いても抜群だ。
今回は『BGM』収録曲がBGMとして多用されたものの、同アルバムは暗い曲が多いため、バラエティ番組のBGMには不向きという事実も明らかになった。だとしても、やっぱり聴いてしまう。今回の取材VTRに影響され、筆者の仕事中のBGMは『BGM』がヘビーローテションとなった。もう何百回と聴いてきたはずなのに、何度聴いたっていい。帯付きの日本盤を買っておいて、本当に良かった。
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