『YOUは何しに日本へ?』YMOの最高傑作を探すマニア外国人一家のレコード旅、反抗期と離婚
#YOUは何しに日本へ? #YMO
食事中もレコード自慢をする父にブチ切れそうになる娘
ディスクユニオンから出ると、妹ちゃんはすっかり仏頂面だ。まず、彼女の機嫌を直す必要がある。父は「次はランチにするよ」と宣言し、娘の頭にキスをした。すると、妹ちゃんの表情は和らいだ。
食事をするために、この家族が入るのはパスタ&ピザの店のようだ。わざわざ、日本に来てパスタ……。微妙な店だし、残念なチョイスである。
席につくと、いきなり『はらいそ』を手に取り、子どもたちに見せびらす父。娘のご機嫌取りのはずが、レコード自慢を始める始末なのだ。その瞬間、究極の無表情になる娘。「死んだ顔」という表現がぴったりの、無だった。
父が日本に子どもたちを連れてきた理由は、何? おそらく、文化の違う異国を体験させる目的があったはずである。でも、その目的を忘れ、ちょいちょい暴走する父がどうしようもない。親の買い出しに無理に付き合わされたら(しかも遠い外国で)誰だってこんな顔になるし、女の子はそろそろ父親がウザくなる年頃だ。
悲しいかな、同じマニアとして父の気持ちもわかってしまえるから筆者はつらかった。趣味を理解してもらえないところも、親近感を抱いている。音楽好きの正しい姿というか、全世界のレコードコレクターあるあるに爆笑した。他人の興味などビタイチ気にしない姿勢は、日本のオタクと一緒だ。
ゴキゲンな父と、目が死んでいる娘のエグい温度差
『BGM』を探す旅は、まだ終わらない。見つかるまで、レコード店を巡り続ける。番組を見ながら「あそこの店ならあるかも」と、いいかげん一緒に探してあげたくなった。早く見つけないと、娘が可哀想だ。
続いて訪れたのは、HMV record shop 渋谷。ここは、ユニオンより広いお店だ。そして、さすがの品揃えだった。YMOのコーナーと同じ列に、RCサクセションと大瀧詠一のコーナーも並んであるのだ。たまらなすぎる配置! さらに、目の前に飾ってあるのはTHE STALINの『trash』だった。ちょっ、目の前をよく見て! 絶対、そっちを買って帰れよ!! でも、親父からするとそれどころじゃないらしい。
「I found it!」(父)
ついに、ようやく、帯付き『BGM』を発見したのだ。決して、探し当てるのが困難な盤じゃない。でも、もし見つからなければ、筆者の持っている『BGM』をプレゼントしたいと思うくらいだった。ちょっと歩けば大抵のものが手に入る東京は、やっぱりスゴい。「I found it!」の瞬間の父の表情も、最高すぎた。わかる。お目当てのレコードが見つかったときの嬉しさったらないから。
そういえば以前、『YOUは~』では大貫妙子『SUNSHOWER』のレコードを買いに日本へやってきたアメリカ人男性にも密着していたはずだ。『SUNSHOWER』と『BGM』、どちらも坂本龍一が関わった作品である。さすが、“世界のサカモト”。彼には痺れっぱなしだ。
さて、問題は妹ちゃんである。帯付き『BGM』をゲットしてご満悦の父と、連れ回されて目が死んだ娘の対比がエグすぎるのだ。オタク道とは、とかく孤独なものである。
店を出ると、もう辺りは真っ暗だった。最後まで白けていた娘を横に、父は決意表明した。
父 「退屈していた娘のために、今から時間をいっぱい作らなきゃ」
――この後、行きたいところはどこですか?
妹 (肩をすくめる)
兄 「間違いなく、レコード店以外だね」
オチがついてホッとした。息子は、ちゃんとフォローのできるいい奴だった。でも、まさかこれから3軒目のレコード店に行ったりしないよな……。
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