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日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 小田和正の「建築」を下地にした“作曲”

『関ジャム』小田和正の魅力は“高音”より“声質”、建築を下地にした“作曲”

小田は「さよならあああー」ではなく「さよなら」としか歌っていない

 本間と渋谷が取り上げたのは、小田の独特なコーラスワーク。まず、本間が指摘したのは「主メロのような存在感のあるコーラス」であった。

 例えば、オフコース「さよなら」のサビで、リードボーカルが歌っているのは「さよなら さよなら さよなら」の部分までだ。その後に続く「あああー」は、コーラス部分なのだ。事実、ソロになった小田が「さよなら」をセルフカバーするときは、「さよなら さよなら さよなら」までしか歌わない。でも、国民の大多数は、「さよなら」の後に「さよならあああー」とメロディーを下げて歌っているはず。もはや、そこを歌わないと気持ち悪い感じすらある。

 続いて、渋谷が指摘したのは「主メロを追い抜くコーラス」。例えば、小田和正「春風に乱れて」2番以降のBメロでは、コーラスが主メロを追い抜くという現象が起こっている。

【主メロ】  ー   きみが ー   どこか へ
【コーラス】 あしたきみがどーこかへー

 と、いった具合だ。俗に言う「対位法」、いわゆるこの「カウンターメロディー」は、ソロ以降の小田が多用する手法である。有名な例としては、ビートルズ「Help」もカウンターメロディーだ。

 このように、小田はオフコースの頃からコーラスワークを大事にしている。古田新太がその理由として指摘したのは、オフコースというバンドの成り立ちだった。

古田 「オフコースっていうバンドの癖もありますよね。小田さんがメインボーカルだったけど、もう1人ボーカリスト(鈴木)がいたから。ツインボーカルなんですよね、本当は」
本間 「ツインボーカルだったのが3人加わって、5人のバンドになったんですよね。それで、『Three and Two』ってアルバムを出して。だから、余計複雑なコーラスができるようになった」

 あと、カトリック系の中学高校に進学した小田がその頃に出会った賛美歌からの影響も、彼のコーラスワークには生かされているはずである。

 余談だが、オフコースのコーラスに対抗意識を燃やした山下達郎が「俺だって作れる!」と奮起し、代表曲となる「クリスマス・イブ」を完成させたのは、いい話だと思うのだ。

小田の口の悪さがもろ出しな恒例「ご当地紀行」コーナー

 今回の小田特集のラストで紹介されたのは、ライブ中盤にいつも上映される「ご当地紀行」であった。ツアーで訪ねた先々で、小田が地元の人たちと触れ合う姿を捉えた映像だ。

 番組内では、地元の人とのこんなやり取りが紹介された。

女性 「小田さんですか?」
小田 「は~い」
女性 「(小田の顔を見て)ウザい顔しないの」
小田 「いや、眩しいから(苦笑)」
女性 「握手してください、コンサート行きますからね!」
小田 「あ、そうですか。お待ちしてます」
女性 「ありがとうございまーす」
小田 「(女性が立ち去って)『ウザい顔するな』って(苦笑)。ひどーい」

 ライブ中の恒例コーナーなので、小田が訪れそうな場所にファンが待ち構えているのは常。さっき、小田の“ウザ顔”を指摘した女性は、間違いなくその類の小田ファンだったはずだ。

『関ジャム』内では流れなかったが、「ご当地紀行」の数々を見ると、小田の口の悪さはもろ出しである。ファンと遭遇すると「ババアばっかりです」と口にしたり、女子高生相手のときとは明らかに態度が違ったり。一方、「ババア」と呼ばれたファンは笑顔。彼女たちは彼女たちで、小田のことを「ジジイ」と思っているのだ。小田の口の悪さは、ある意味で自虐でもあるということ。彼のロケぶりを見ると、いつか『相席食堂』(朝日放送)に出てくれないだろうか? なんて願いがよぎったりもする。

 この『関ジャム』放送回前日である7月30日、小田の新型コロナウイルス感染が発表された。今年で75歳になる小田だが、彼の声は永遠に守られてほしいと思っている。コロナに負けず、どうか無事に戻ってこられますように。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/08/08 12:10
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