『関ジャム』小田和正の魅力は“高音”より“声質”、建築を下地にした“作曲”
#音楽 #関ジャム #小田和正
建築を学んだ小田が証言する、作曲との共通点
続いて、彌勒が取り上げたのは「感情を揺さぶるメロディーの上下行」。それがわかりやすいのは、オフコース「さよなら」の曲展開である。
「Aメロでは語尾を繰り返して下げるメロディーの上下行で、切なさを演出。それとは対照的に、サビでは『さよなら』の語尾を繰り返し上げて盛り上げ、最後も上げて残すことで、聴く側のハートをキュンとさせている」(彌勒)
このように緻密に構築された小田の譜割りには、本人の学生時代に関係があるのでは? と、本間は推測した。
「そこまで計算されてやっているかわからないけど、小田さんって建築出身ですからね。構築を意識して、作曲されているんじゃないのか? 大学で建築をやってらっしゃったんで。無意識の構築があるかもな……っていう」(本間)
「東北大学 工学部 建築学科卒業」「早稲田大学大学院 理工学研究科 建設工学専攻(建築学)修士課程修了」という学歴を持つ小田である。ありえる話だ。
本間と同じ疑問を、実際に小田本人にぶつけた者がいる。2009年7月放送『佐野元春のザ・ソングライターズ』(Eテレ)にて、佐野元春が小田に質問しているのだ。
佐野 「建築のデザインっていうのは、音楽のデザインと共通するところがあるんでしょうか?」
小田 「何もないところから作るっていうのは、一番共通している。最終的に、ディテールを決めていかなくちゃいけないところ。具体的に言うと、音楽は『サビへ向かっていくときはこう盛り上げてから、サビに入る』みたいのは、最後に決めればいいからほっとくことが多かったんだけど。で、建築の課題は、トイレと階段を必ず作らなくちゃいけない。でも、階段とか面倒くさいじゃん? だから、そこは最後に描く。そこが、すごく似てるなと思って(笑)。『ああ、後はトイレと階段だ』って、自分に言い聞かせてやったりしてたけど」
小田和正は1980年代初頭に完成している
続いて、本間が着目したのは、小田の曲作りで多用される「転調」だった。わかりやすいのは、オフコースの名曲「Yes-No」である。
「普通、転調したら曲中で戻るが、なぜかイントロだけG♯mで、そこから曲終わりまでずっとA m。イントロだけ違うのが謎で面白い」(本間)
「Yes-No」のイントロからAメロへの変わり目で、いつもハッとする。まさに、「今なんて言ったの?」と問いたくなる転調だ。
もう1つ、小田の転調がわかりやすい曲は、オフコース「言葉にできない」である。この曲も、イントロからAメロの変わり目で急に転調する。
「Aメロで急に転調すると歌いづらいから、普通はやらない」
「謎ですよ。小田さんにお会いしたら、ぜひ聞いてみたい! これ、若手がやってたら怒るところですよね(笑)」(本間)
特に「言葉にできない」の転調は、素人からするとカラオケで歌いづらくなる難ポイントである。でもこの転調によって、曲が俄然瑞々しくなる。
言ってしまうと、この時期すでに小田サウンドは確立された。40年前の時点で完成しているのだ。もっと突っ込んで言うと、91年リリース「ラブ・ストーリーは突然に」より、80年リリース「Yes-No」のほうがはるかに瑞々しく、そして心に迫ってくる。ある意味、80年代初頭が小田の才能のピークだったと思うのだ。それほど、オフコース時代の小田はいい。
ちなみに、「イントロ→Aメロ」での転調といえば、チープ・トリック「Surrender」も有名。あと、後年は小室哲哉も多用していた手法だ。明らかに、小室は小田から影響を受けている。
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