成田凌と前田敦子による異世界不倫物語『コンビニエンス・ストーリー』の魅力
#前田敦子 #成田凌 #ヒナタカ
8月5日より映画『コンビニエンス・ストーリー』が公開されている。
三木聡監督・脚本作品は直近で『大怪獣のあとしまつ』が阿鼻叫喚の酷評の嵐となったことが記憶に新しい。個人的に同作は2022年のワースト映画(現時点で決定)であり、観ながら失望が怒りへ、やがて憎しみへと変わっていき、最後には虚無となる感情の流れが今でも思い出せる唯一無二の作品だった。現在はレンタル配信が行われているので、ぜひ仲の良い友だちと一緒に観て、一緒にマジギレしながら語り合うなどして楽しんでほしい。
しかしながら、今回の『コンビニエンス・ストーリー』はストレートな意味でちゃんと面白い。三木聡監督はもともと『亀は意外と速く泳ぐ』(2005)や『転々』(2007)などシュールな笑いを打ち出した作品で評価されており、比較的あの頃に近い「三木聡ワールド」を楽しめる内容に仕上がっていたのだ。具体的な魅力を記していこう。
『世にも奇妙な物語』的な異世界もの×危険な不倫サスペンス
あらすじは「売れない脚本家が、霧の中で佇むコンビニに迷い込み、なぜか乗って来たトラックが消えてしまい帰れなくなってしまう」というシンプルなもの。成田凌演じる主人公ははっきりと「異世界」へと迷い込んでおり、その奇妙なシチュエーションからドラマ『世にも奇妙な物語』や『トワイライト・ゾーン』を連想する方も多いだろう。
その異世界で最初に出会うのがミステリアスな女性に扮した前田敦子であり、さらにその夫であるコンビニオーナーが底知れぬヤバさを醸し出す六角精児というのも面白い。成田凌は「何かがおかしい」夫婦を相手にして「しどろもどろ」になっていく。そして前田敦子は憂いを帯びつつもエロティックな雰囲気を醸し出し、2人の関係は危険な不倫にまで発展していくのである。
下世話な言い方をすれば「狂気的な夫がすぐ側にいる中での不倫サスペンス」でもある。巻き込まれ体質の成田凌、もはや妖艶な前田敦子、「こいつの逆鱗に触れると殺されるかもしれない」ことが徐々にわかっていく六角精児という三角関係そのもの、クセの強いキャラに完全にハマった三者三様の演技を大いに楽しめるはずだ。
成田凌と前田敦子それぞれの特性が生かされた役
成田凌はクズ人間から善良な青年まで幅広くこなせる俳優であり、良い意味での「やさぐれ感」「ものぐさ感」が演じる役に反映され、母性本能をくすぐるような魅力もプラスされる方だ。失礼な言い方で恐縮だが、今回の「なし崩し的に不倫関係になっていく」ダメな役に、その俳優としての特性が大いに生かされていたように思う。
前田敦子もまたダメ人間から可憐な女性まで演技の幅の広さがあると同時に、また失礼な言い方で申し訳ないが「常に居心地の悪さを感じてそう」な印象も、今回の夫に対して「実は冷めている」役にはピッタリハマっていた。ギラついた狂気を見せていく六角精児との掛け合いそのものがスリリングかつ「そんな夫とは別れようよ」と思えるのは、前田敦子その人が魅力的でもあるからなのだろう。
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