『オクトパスの神秘』動物と人間はどこまで“ディープ”な関係を築けるか?
#Netflix #宮下かな子 #宮下かな子と観るキネマのスタアたち
先日、約15年ぶりに犬に触れた。
話す機会がなかったのだが、実は私、かなりアレルギーがある。花粉、ダニノミ、ハウスダスト、植物、そして犬猫、等々……かなり厄介な体質である。
最後に犬に触れたのは、遡ること小学3年生。よく遊んでいた男友達が大きな黒い犬を飼っていたのだが、私が犬アレルギーだというのを聞いて、その男の子は突然飼い犬のリードを外した。大きな犬は勢いよく私に飛びかかってきて顔をベロベロ舐め、私は腫れあがるほど湿疹ができた。泣いている私を見ながら「本当にアレルギーなんだね」とその男の子が言ったのは一生忘れないだろう。どうなるのか知りたくて興味本位だったそうだが、私にとっては恐怖体験に近い犬との最後の思い出となった。
もともと動物は好きなのに触れられないのは辛かったし、命あるものに対し身体が受け付けない反応が出ることに罪悪感を抱いていたのだが、最近「動物アレルギーって治せるんだよ」と友人から訊き、その子が飼っている犬に触れてみることにした。トラウマのせいでかなり緊張したが、毛が抜けにくいトイプードルという犬種も合っていたのか、昔よりも反応が出ず、少し手に痒みが出たがすぐに治まった。それからも何度か身体を慣らすためそのトイプードルと会い、最近は顔を舐められても平気になってきている。私の人生の快挙と言っても過言ではない。
今まで、犬を見ると避けるように生きてきたので、まともに目を見たことすらなかった私は、その時初めて、犬と目をしっかり合わせた。黒い丸々とした大きな瞳にすぅっと吸い込まれる不思議な感覚になって、心が通い合えた気がした瞬間があった。その犬は高齢のオスだったのだが、目を合わせた時「あ、おじいちゃんだ」と分かった。犬の年齢や性別すら区別したことがなかったので、これも初めての経験。犬も、同じ心ある生き物なんだな、と感じられて本当に嬉しかった。
動物と触れ合えたこの機会にふと、思い出して観てみたのが『オクトパスの神秘:海の賢者は語る』というNetflixドキュメンタリー。
昨年第92回アカデミー賞の最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞した作品で、映像作家クレイグ・フォスターが、南アフリカの海で出会った1匹のタコに「毎日会いに行ったらどうなるのか」と、約1年間の交流を記録したドキュメンタリーである。役者仲間からおすすめされたのだが手付かずで、今回かなり油断して観始めたのだが、まさかのラストには涙。タコに泣かされるとは思いもしなかった……!
息を呑むほど美しい海底の神秘的な映像と共に、知られざるタコの生活や生き様が覗き見できる。出会ってから約1年間の中で、はじめは警戒心の強い様子から、徐々に距離感が縮まっていくタコの変化には何度も驚かされ、終盤、クレイグの身体に抱きつくタコの姿には胸を突かれた。
これまた凄いタイミングなのだが、この時本好きセンスが抜群に良い女優・片山友希ちゃんから、濱野ちひろさんの『聖なるズー』という動物と人間のノンフィクションの本をおすすめされ、私はすぐに読み始めた。ズーというのは、犬や馬などの動物をパートナーとする動物性愛者のこと。過去にパートナーの男性からDV被害に遭った筆者が、愛や性の概念を捉えなおそうとズーを研究した日々が綴られていて、固定概念を覆す衝撃的な内容だった。
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