トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ  > “メタ的”に見るファウンドフッテージ映画

韓国×タイ合作ホラー『女神の継承』ファウンドフッテージ映画を“メタ的”に楽しむ?

信仰心と現実の恐怖、極限状態で勝るのはどちらか?

韓国×タイ合作ホラー『女神の継承』ファウンドフッテージ映画をメタ的に楽しむ?の画像3
© 2021 SHOWBOX AND NORTHERN CROSS ALL RIGHTS RESERVED.

 異国の地、異国の宗教というのは、単純に不気味で異端に思える。私たちの知っている世界など、全体の数%にも満たない。だからこそ、“彼の地”の儀式や風習が、映画用に作られたフィクションであったとしても、現実に存在していたっておかしくはない──そう本気で思わせるのは、観客体感型のファウンド・フッテージものの効果も大きいだろう。

 さらに本作は、非常におもしろい構造の作品となっている。単純に体感型ホラーとしての側面もあるのだが、人はどこまで、神の存在を信じ続けることができるのだろうか……。といったような、人間の心理描写も多く含んだ作品なのだ。

韓国×タイ合作ホラー『女神の継承』ファウンドフッテージ映画をメタ的に楽しむ?の画像4
© 2021 SHOWBOX AND NORTHERN CROSS ALL RIGHTS RESERVED.

 女神バヤンから受け継がれた霊能力を、世代を通して継承したニムは、小さな村で祈祷師として人々を災いから救ってきた。ところが、それはニムの能力によるものなのか、それとも自然に治癒したのか、確証はもてない。観客が俯瞰的に眺めれば、ニムもカルト宗教の一信者のようでもあるだけに、ただ信じ込んでいる変人の可能性だってあるのだ。

 そんな中で、信仰は、はっきりと脅威が伝わり、命の危険性もあるような、未知の存在。悪魔か別の神か、それとももっと未知の存在なのか……。そんな存在になっているが、信仰と自分の能力をどこまで信じることができるのか。

 その不安はどんどんと絶頂へ向かっていく。ニムも周りの人々も、その“異変”をはっきりと感じているのが、スクリーンを通して伝わってくるほどの緊張感。

 つまり人は、いくら熱心に神を信仰しているからといっても、命が助かるように思えないほど極限の状況下では、どこまでその存在を信じ続けることができるのだろうか……という、ある種の心理実験的な要素も組み合わさっているのだ。ここが、本作を従来のファウンド・フッテージ作品とは別格のものにしている。

韓国×タイ合作ホラー『女神の継承』ファウンドフッテージ映画をメタ的に楽しむ?の画像5
© 2021 SHOWBOX AND NORTHERN CROSS ALL RIGHTS RESERVED.

 一方で、ファウンドフッテージものながらメタ的に楽しめる要素もある。作中で、儀式に使われる道具や装飾品が不気味さを醸しだしているのだが、その設定がなかなかに勝手気ままで、制作者たちの「これをここに置いてみたら怖いんじゃないか?」「卵から黒い液体が出たらにおもしろいんじゃないか?」といった、制作者たちの“遊び”が伝わってくる。楽しそうなのだ。それでいて「死霊館」シリーズのような、ほどよく“おバカ”な部分も多いだけに、恐怖とは裏腹に、おかしみや愛しさを感じられる部分もあった。

 

『女神の継承』
7月29日から全国で公開(R18+指定)

原案・プロデュース:ナ・ホンジン
監督:バンジョン・ピサンタナクーン 
キャスト:サワニー・ウトーンマ、ナリルヤ・グルモンコルペチ、シラニ・ヤンキッティカン
2021年/タイ・韓国/タイ語/131分/カラー/1.78:1/5.1CH/
原題:랑종/英題:THE MEDIUM /
字幕翻訳:横井和子

配給:シンカ/提供:シンカ、エスピーオー/後援:タイ国政府観光庁/協力:OSOREZONE R18+ 

© 2021 SHOWBOX AND NORTHERN CROSS ALL RIGHTS RESERVED.   
公式HP:https://synca.jp/megami 

 

 

バフィー吉川(映画ライター・インド映画研究家)

毎週10本以上の新作映画を鑑賞する映画評論家・映画ライター。映画サイト「Buffys Movie & Money!」を運営するほか、ウェブメディアで映画コラム執筆中。NHK『ABUソングフェスティバル』選曲・VTR監修。著書に『発掘!未公開映画研究所』(つむぎ書房/2021年)。

Twitter:@MovieBuffys

Buffys Movie & Money!

ばふぃーよしかわ

最終更新:2022/07/29 07:00
12
ページ上部へ戻る

配給映画