
韓国×タイ合作ホラー『女神の継承』ファウンドフッテージ映画を“メタ的”に楽しむ?
#映画
信仰心と現実の恐怖、極限状態で勝るのはどちらか?

異国の地、異国の宗教というのは、単純に不気味で異端に思える。私たちの知っている世界など、全体の数%にも満たない。だからこそ、“彼の地”の儀式や風習が、映画用に作られたフィクションであったとしても、現実に存在していたっておかしくはない──そう本気で思わせるのは、観客体感型のファウンド・フッテージものの効果も大きいだろう。
さらに本作は、非常におもしろい構造の作品となっている。単純に体感型ホラーとしての側面もあるのだが、人はどこまで、神の存在を信じ続けることができるのだろうか……。といったような、人間の心理描写も多く含んだ作品なのだ。

女神バヤンから受け継がれた霊能力を、世代を通して継承したニムは、小さな村で祈祷師として人々を災いから救ってきた。ところが、それはニムの能力によるものなのか、それとも自然に治癒したのか、確証はもてない。観客が俯瞰的に眺めれば、ニムもカルト宗教の一信者のようでもあるだけに、ただ信じ込んでいる変人の可能性だってあるのだ。
そんな中で、信仰は、はっきりと脅威が伝わり、命の危険性もあるような、未知の存在。悪魔か別の神か、それとももっと未知の存在なのか……。そんな存在になっているが、信仰と自分の能力をどこまで信じることができるのか。
その不安はどんどんと絶頂へ向かっていく。ニムも周りの人々も、その“異変”をはっきりと感じているのが、スクリーンを通して伝わってくるほどの緊張感。
つまり人は、いくら熱心に神を信仰しているからといっても、命が助かるように思えないほど極限の状況下では、どこまでその存在を信じ続けることができるのだろうか……という、ある種の心理実験的な要素も組み合わさっているのだ。ここが、本作を従来のファウンド・フッテージ作品とは別格のものにしている。

一方で、ファウンドフッテージものながらメタ的に楽しめる要素もある。作中で、儀式に使われる道具や装飾品が不気味さを醸しだしているのだが、その設定がなかなかに勝手気ままで、制作者たちの「これをここに置いてみたら怖いんじゃないか?」「卵から黒い液体が出たらにおもしろいんじゃないか?」といった、制作者たちの“遊び”が伝わってくる。楽しそうなのだ。それでいて「死霊館」シリーズのような、ほどよく“おバカ”な部分も多いだけに、恐怖とは裏腹に、おかしみや愛しさを感じられる部分もあった。
『女神の継承』
7月29日から全国で公開(R18+指定)
原案・プロデュース:ナ・ホンジン
監督:バンジョン・ピサンタナクーン
キャスト:サワニー・ウトーンマ、ナリルヤ・グルモンコルペチ、シラニ・ヤンキッティカン
2021年/タイ・韓国/タイ語/131分/カラー/1.78:1/5.1CH/
原題:랑종/英題:THE MEDIUM /
字幕翻訳:横井和子
配給:シンカ/提供:シンカ、エスピーオー/後援:タイ国政府観光庁/協力:OSOREZONE R18+
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公式HP:https://synca.jp/megami
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