『アメトーーク!』ダチョウ倶楽部 上島竜兵は“かつて”じゃなくて“いまもまだ”面白い人
#ダチョウ倶楽部 #上島竜兵 #アメトーーク! #テレビ日記
テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(7月17~23日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。
指原莉乃「同じメンバーで何十年も同じことやってる」
バラエティ番組における芸人の“追悼”の仕方として、ひとつの理想的な形だったのかもしれない。
19日の『アメトーーク!』(テレビ朝日系)は「ダチョウ倶楽部を考える」と題して放送された。今年5月に上島竜兵さんが亡くなったことを受けての放送である。上島さんが亡くなった直後、『アメトーーク!』はエンディングで彼を“追悼”するVTRを流していた。今回はゴールデンタイムで約2時間、ダチョウ倶楽部を特集する運びとなった。
番組冒頭、司会の蛍原徹に「今日はどういう回にするか、簡潔に代表して……」と振られた出川哲朗が、今回の企画の趣旨説明をする。
「あ、今回の、今回の回はもう、昔のブイとかもおりみ……あのー、織り入れながら、悲しくというよりおもしろおかしく、楽しく竜さんを送りたいなという、そういう回でございます」
出川特有の“噛み”を織り交ぜながらの説明。緊張が解けない肥後克広と寺門ジモンに対し「蛍原さん、俺コイツらが心配だよ」と嘆きツッコミをしていた土田晃之が、出川の“噛み”を受け、改めて「蛍原さん、出演者の半分以上が心配だよ」と嘆き笑いを誘った。
番組は、テレビ朝日に残るダチョウ倶楽部の過去映像を振り返りながら進んだ。南部虎弾(現・電撃ネットワーク)が所属していた4人組時代。彼らの代表的なギャグ「どうぞどうぞ」が生まれた瞬間。絶妙に服を脱ぎながら巨大扇風機に飛ばされる上島さん。口に含んだどじょうの尾っぽをちょうどいい具合に口から出す上島さん――。
ダチョウ倶楽部の歩みや、特に上島さんのリアクション芸の技術が改めてよくわかる振り返りだった。
また、彼らの代表的なコント、ゲームセンターみたいな靴屋。ジモンに何度も「般若のお面」を振る黒柳徹子。モノマネ番組で優勝経験もあるモノマネ芸。上島さんが満を持して半裸で登場するもスベってしまう場面。3人でとうもろこしを食べているシーン。スタジオでの収録が終わったあと後輩たちを並べて「やってくれたな!」と上島さんが怒るシーン――。
これまで繰り返し見てきた映像だが、何度見てもなぜだか笑えてしまう。とうもろこしを食べるVTRなど「待ってました」とすら思ってしまう。熱々おでんなど同じリアクション芸を(時代によって少しずつ変えながらも)繰り返し演じ、伝統芸化してきた彼らゆえだろうか。
にしても、約2時間の放送中、上島さんについて「亡くなった」はもちろん「いなくなった」という表現もなかった今回の放送。冒頭の出川の趣旨説明、「悲しくというよりおもしろおかしく、楽しく竜さんを送りたい」がもっとも踏み込んだ言及だっただろうか。それもまた出川のキャラクターと彼特有の“噛み”で笑いに変わり、湿っぽさを伴わない。
また、上島さんの存在や彼と周囲の関係は、過去形ではなく何度も現在形で語られた。「われわれはファンだから1時間見てられる」(有吉弘行)、「同じメンバーで何十年も同じことやってる」(指原莉乃)、「先輩のプライドひとつもない」(土田晃之)――。
故人を現在形で振り返る時間。かつて面白かった人ではなく、いまもまだ面白い人であるということを確認するような時間。記憶と記録がある限り、彼が不在になってもその存在のおかしみは残り続ける。そのことを、立証するような時間。そんな約2時間の放送だった。
私たちは、3人でとうもろこしを食べているシーンや上島さんが「やってくれたな!」と怒る映像を見て、また改めて笑うことができるだろう。映像がなくても、私は今ちょっと思い出し笑いしてる。今回の『アメトーーク!』は、そんな状況を整えるものだったように思う。バラエティ番組における芸人の“追悼”の仕方として、ひとつの理想的な形だったのだと思う。
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