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ハマカーン神田は異常者か? バラエティの“優しさ”と“無神経さ”の狭間で

ハマカーン神田は異常者か? バラエティの優しさと無神経さの狭間での画像1
『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(ABEMA)ABEMA公式サイトより

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(7月10~16日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

ハマカーン・神田「芸能界が異常なんだよ」

「誰が異常者なんだろうね?」

 オードリーの若林正恭は、そう問いかけた。8日の『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(ABEMA)でのひとコマである。この日、番組はハマカーンの神田伸一郎に焦点を当てていた。

 ハマカーンといえば、賞レース時代の『THE MANZAI』(フジテレビ系)の2012年チャンピオンだ。優勝直後には、テレビでその姿を見ることも多かった。神田うのの弟としても知られる神田は、そのことでテレビに出ることもあった。しかし、現在はコンビで呼ばれる地上波のバラエティ番組はほぼないという。そんな現状のなか、番組によると神田は「もう芸人を辞めようと思っている」らしい。

――と、そんなふうに相方の浜谷健司が話を進めていると、それに神田は待ったをかけた。

「こういうのが作家の仕事なんだな」

 神田いわく、スタッフとの事前の打ち合わせで「いま仕事がなくなってるんで、ゼロになったら辞めるしかない」と話したらしい。しかし、それが「芸人を辞めようと思っている」に変換されてしまっている。「こういう大げさな文言だけが歩きだすから嫌なんです」と神田の主張は続く。

 こんなふうに、神田は番組のなかで終始、バラエティ的な振る舞いを拒否していく。若林ら共演者のやり取りの速さに自分はついていけないと話したり、吉村崇(平成ノブシコブシ)がバラエティ的なコメントをすると「あぁ~もうバラエティ、バラエティ」と指摘したり。「バラエティって人数多いし、声大きい人が勝つじゃん」と言ったあと、「声の大きさだけじゃないときもある。タイミングとかもあるし」と澤部佑(ハライチ)に指摘されると、そこで対立構図を維持したりはせず、「声のデカさのせいにした自分の小ささも嫌いだし」と自虐に走ったりもする。

「10年かけて仕事が減っていったらこういう心になるよ。丁寧にNOをずっと突きつけられてきたの、バラエティに。だからこっちも諦めるの」

 バラエティ的なノリでイジられると、キレてしまう場合もあるという神田。相方の浜谷によると、神田は良く言えば正義感が強いらしい。それがバラエティの世界に入ると“異常者”になってしまう。ここでハマカーンと芸歴は同期で事務所も同じ若林が投げかけたのが、冒頭の問いだ。誰が異常者なのか。これに神田はすかさず答える。

「芸能界が異常なんだよ」

 8日の前編に続き、15日には後編も放送。「神田うのの弟」キャラをうまく使えない、セレブすぎて世間とズレている、といった神田の特徴が紹介された。が、そんな紹介に彼は自虐も交えつつ、やはり不服そうな様子を見せる。そんな神田に対し、若林は言う。

「(芸人は自分の)軸を抜いて、バラエティに刺して、バラエティが一番合理的に盛り上がるほうで考えるのよ。自分の正義を抜いて。演者さんが人気ならお客さんのファンが来る、喜ぶ、で、興行的にも……ってとこに軸を刺せば、自分の仕事になるじゃん」

 いわゆる“腐り芸人”など、バラエティ番組の“お約束”とのそぐわなさがキャラになっているタレントは多い。が、神田はその枠からもはみ出ているような印象を受ける。番組のなかで、共演者たちはそんな神田を「逸材」「むしろいまの時代に合っている」「バラエティの古いところを壊せる存在」などと評価していた。が、そんな声にも彼は納得いっていない様子だった。

 いずれにしても、神田の発言がズバズバと刺さって面白かった『しくじり先生』。彼の主張を抽象化してトークを広げる若林、実体験に落とし込んで深める平子祐希(アルコ&ピース)、時に無理やり対立構図をつくっていく吉村、むしろ神田の味方に回り他の共演者と対立構図をつくる澤部、そして神田と共演者らの間に入って右往左往する姿を見せる相方の浜谷など、周囲の芸人たちの連携も番組を盛り上げていた。

 そんな芸人たちの連携は、若林が言う意味での「自分の仕事」でもあっただろう。そんな「仕事」のなかで、神田的なふるまいも“面白い”に昇華するバラエティ。そんな「仕事」の見事さも含めて“面白い”と感じてしまう視聴者。それを“豊穣さ”や“寛容さ”や“優しさ”と見るか、“不条理さ”や“空疎さ”や“無神経さ”と見るか。バランスが崩れると後者に一気に傾きそうなところ、出演者(あるいは番組の編集)は、前者に傾けながら番組を進めるバランス感覚を見せていたように思う。そして神田が番組中にしばしば見せていた困ったような表情は、そんなバラエティの“優しさ”と“無神経さ”の間に立たされた戸惑いのようにも見えた。

 誰が異常者なんだろうね? という若林の問いが、改めて響く。

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