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ジャニヲタおじさんのアイドル公論(3)

アイドルと働き方改革──ジャニーズ・BTSの労働負荷が高い3つの理由

──ジャニーズを愛するおじさんが考える、アイドルと世相のあれこれ。

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BTS

 夏はコンサートやイベント、テレビの大型特番など、アイドルの活動が活発になる季節です。ジャニーズも今年の夏は、実にデビュー組9グループが7~8月にコンサートを行います。また、デビュー前のジャニーズJr.夏定番のコンサートとして「Summer Paradise 2022」「マイナビ サマステライブ 未来少年」が予定されています。

 私たちファンにとって、アイドルと同じ場所で同じ時間を過ごすことは何よりの喜びであり、ファン活動の根幹です。コンサートやイベントの回数が増えるほど、またメディアに露出する頻度が増えるほど、ファンの喜びも増えます。実際私の夏も、ジャニーズをはじめ、アイドルのコンサートが目白押しで、今はそれをひたすら楽しみに生活をしています。

 一方、昨今はアイドルの活動が増えると、その忙しさからアイドルの健康状態を心配することも多くなりました。ジャニーズでも、健康上の問題で、現在も活動を一時休止しているメンバーが複数います。関ジャニ∞の大倉忠義くんも、今年4月から健康上の理由で活動休止していましたが、7月開催の18周年コンサートに向けて、完治に至らないまま活動を再開しました。活動再開は本人の意志であり、医師やスタッフと協議を重ねた上での結論です。異論はありません。しかし、アイドルの活動を願うことと、アイドルの健康を願うことが一致しない現状に、ファンとしての葛藤があります。

BTSの例に見る労働負荷と活動リスク

 最近ではBTSが、デビュー9周年記念イベント『2022 BTS FESTA』の中で当面ソロ活動に専念することを発表し、大きな反響を呼びました。リーダーのRMは、多忙な中でグループの方向性を見失ったことに触れた上で、「アイドルというシステムは、人間的成長を促さないと思う」と語りました。この言葉はアイドルファンである私にも重く響きました。ファンの期待に応えることで、健全な心身の維持が難しくなっていたこと、彼らがこの先もBTSとしてファンの期待に応え続けるために、一度グループ活動をリセットする必要があったことに、彼らの大きな苦悩を感じました。BTSの今回の件は、嵐の活動休止にも通ずる点があり、アイドルとして長く活動を続ける難しさを改めて痛感しました。

 思えば私が子供の頃、「ほとんど寝てない」とぼやく80年代のアイドルを見て、売れていると感じたものでした。寝る暇もないほど忙しいことが、美徳であった時代でもありました。今思えば、かつてのアイドルは活動期間が今より短く、活動できる間に可能な限り売り上げたいという事務所や制作側の思いもあったように推測されます。エンターテインメント業界自体が労働集約型ビジネスの典型で、必然的にアイドルの労働環境が悪かったこともあるでしょう。

 時代は進み、2013年に国連が日本政府に対し、長時間労働と過労死の対策を勧告したことで、労働環境改善の機運が徐々に高まりました。2019年には働き方改革関連法が施行され、日本でも大企業を中心に労働環境の改善が進みました。エンターテインメント業界でも、これを契機に複数の芸能事務所に長時間労働に対する是正勧告がされるなど、徐々に改善に向けて取り組み始めていると見受けられます。

 またこの頃から、アイドルの体調不良に伴い一定期間活動休止させることが、さほど珍しくなくなりました。アイドルの活動期間が10年以上に及ぶことも多くなり、長期的なケアが必要になった結果だと言えるのではないでしょうか。一方で、先に挙げたBTSの例のように、今なおアイドルにおける労働負荷は高く、長期的なアイドル活動におけるリスクとなっていると言えます。

アイドルの労働負荷が高い3つの理由

 私が考える、アイドルの労働負荷が高い理由は、大きく3つあります。1つ目は、アイドル自身に代わりが利かないことです。アイドルの付加価値は、そのアイドル自身のビジュアルやスキル、背景にあるストーリーといったパーソナリティが生み出しています。別の人が代わりに同じ付加価値を生み出すことは難しいです。さらに言えば、アイドルは人そのものを商品として売るビジネスです。代替が利かないからこそ、アイドルは商品価値が出るのです。この代わりが利かない点があるために、アイドルは休むことが困難になり、肉体的、心理的負担を強いることになると考えています。

 2つ目は、アイドル活動の労働生産性が高くないことです。労働生産性とは、労働投入量1単位あたりの産出量・産出額のこと、端的に言えば働いた分だけどれだけ売り上げたか、を表した指標です。自動化や効率化がしやすい製造業では労働生産性は高く、サービス業のような労働投入量の多い業種では労働生産性が低くなる傾向があります。アイドル活動では、コンテンツ制作、プロモーション、事務管理、レッスンや教育など、業務が多岐にわたります。それらの多くは、自動化や効率化が困難であり、さらにその多くはアイドル自身が関わる必要があります。アイドル業務自体の労働生産性が高くない上に、アイドル自身の労働投入量が多い、という状況が発生します。この点は、アイドルの労働負荷を高める大きな要素と言えるでしょう。

 3つ目は、ファンの期待に応えることが利益の源泉になっていることです。ファンの満足度向上が、売り上げを生み、利益につながっています。つまり、ファンと何かしら接点のあるチャンネルに対して、可能な限りアクションを行うことが求められます。これは、直接的な利益を生まないものの、利益を生むための活動として多くのアクションをアイドルに迫ることを意味します。例えば、ちょっとしたSNSでの投稿や、メディアにおけるリアクションなど、アイドルにとって励みになる一方で、ゴールのないファンサービスがアイドルを苦しめる一因になりかねないと考えています。

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