トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 社会  > 日本銀行「生活意識調査」

景気、物価への不安感が強まる結果―日本銀行「生活意識調査」でも

日本銀行「生活意識調査」でも景気、物価への不安を感じる結果が強まるの画像1

 日本銀行が7月6日に公表した「生活意識に関するアンケート調査」(6月調査)で、「物価が上がった」と感じている人が90%近くを占め、話題となっている。同調査をからは新型コロナウイルスの影響が薄れた半面、景気、物価への懸念が強まっていることが読み取れる。

 この調査は年に4回行われている。6月調査では全国の満20歳以上の個人2193人から回答を得た。https://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki2207.htm/

 以下、調査結果を見ていくとまず、景況感については1年前に比べて「良くなった」が3月の3.6%から5.3%に増加し、「悪くなった」が57.4%から56.0%に減少したことで、「良くなった」から「悪くなった」を引いた現在の景況感DIは▲50.7%ポイントと3月から3.1%ポイント改善した。

 現在の景況感DIを19年12月から見ると、新型コロナの感染拡大によって、20年8月には▲75.6%ポイントまで悪化したが、その後は徐々に改善して21年12月には▲45.8%ポイントまで上昇した。

 ところが、22年に入ると3月、6月とも、21年12月を下回った。これは、経済活動が徐々に再開され、新型コロナの影響が薄れていったことを反映しているが、22年からの悪化は円安が急激に進行し、物価高が顕在化した時期に一致している。

 この傾向は1年後の景況感により鮮明に表れている。現在に比べ1年度の景気が「良くなる」は3月の15.6%から13.5%に減少、半面、「悪くなる」は32.7%から42.2%に大はばに増加した。

 この結果、「良くなる」から「悪くなる」を引いた1年後の景況感DIは▲17.1%ポイントから▲28.7%ポイントに悪化した。

 1年後の景況感DIは新型コロナの影響を受け、20年3月には▲42.2%ポイントまで悪化したが、その後、21年12月には5.0%ポイントに改善。景気が良くなるが悪くなるを上回った。だが、22年に入ると円安・物価高を受け、急激に悪化している。(表1)

日本銀行「生活意識調査」でも景気、物価への不安を感じる結果が強まるの画像2

 この景況感の悪化は、暮らし向きにも影響を与えている。現在の暮らし向きは「ゆとりが出てきた」が3月の4.8%から3.7%に減少、「ゆとりがなくなってきた」が41.7%から43.2%に増加している。

 驚いたことに、「ゆとりが出てきた」から「ゆとりがなくなってきた」を差し引いた暮らし向きDIは▲39.5%ポイントと新型コロナの感染拡大以降、最悪の状況となっており、物価高が暮らし向きに大きな影響を与えている姿が浮き彫りになった。(表2)

日本銀行「生活意識調査」でも景気、物価への不安を感じる結果が強まるの画像3

 これは、1年前と比べた現在の物価に対するについて、「かなり上がった」が21年12月の16.6%から22年3月の22.4%、6月の30.6%へ増加していることに、はっきりと現れている。「かなり上がった」と「少し上がった」とを合わせた物価が上がったと感じている割合は89.0%にも達している。

 さらに、1年後の物価の予想では、「かなり上がる」が21年12月の13.4%から22年3月の20.4%、6月の29.4%へ増加している。「かなり上がる」と「少し上がる」とを合わせた物価が上がると感じている割合も87.1%を占めており、物価上昇が当分続くとの見方が強い。

 現在の物価上昇は、原油・資源高に加え、利上げに方向転換した米欧と、大規模金融緩和政策を変更できずに低金利政策を維持する日本との金利差によって円安が進んでいることにも一因がある。

 そこで、現在の金利水準についての回答を見ると、「金利が低すぎる」は21年12月の43.9%から22年3月に42.8%に減少したが、6月には48.7%に増加している。一方、「金利が高すぎる」は16.6%→15.3%→14.5%と着実に減少している。

日本銀行「生活意識調査」でも景気、物価への不安を感じる結果が強まるの画像4

「金利が高すぎる」から「金利が低すぎる」を引いた金利水準DIは3月の▲27.5%ポイントから6月には▲34.2%ポイントに低下し、「金利が低すぎる」と感じている人が急激に増加していることが明らかになった。

 調査は調査したことに満足しては何の意味も価値もない。日銀がこの調査結果をどのように金融政策に生かしていくのかが重要だ。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

記事一覧

Twitter:@tohrusuzuki

鷲尾香一の ”WHAT‘S WHAT”

わしおこういち

最終更新:2022/07/14 11:30
ページ上部へ戻る

配給映画