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ナパーズ、隣に並んだ怖そうな車に無茶振りで…凄まじい幸福感

ムチャ振り成功で、凄まじい幸福感

 まずひとつは誰もやっていない企画であったということ。今の時代YouTuberもTikTokerも飽和状態にある。それだけ人がいるということは企画自体も似たり寄ったりになってしまう。その中でオリジナルコンテンツを生みだすということは至難の業だ。もしかしたら偶然の産物かもしれないが「見ず知らずの他人にムチャ振りすること」を思いつき、「隣の車」という説明しなくてもわかる他人に「ワイルドスピード」の知る人ぞ知る名台詞で、ムチャ振りをする。企画としてはテレビの構成作家たちが悔しがるような、完璧なものといえるだろう。まあ今のテレビではコンプライアンス問題があり、この企画自体出来るとは思えないが。

 そしてこれもまた偶然だとは思うが、この企画は人の心を動かす要素を持っているのだ。人の心を動かす、つまり感情を動かすときにどうすればいいのか。

 それは映像に緩急を持たせるのだ。

 明らかに怖そうな車に声を掛ける。このとき視聴者はスリルを感じ息をのむ。つぎに怖そうなお兄さんがノリノリでセリフを言う。先ほどまで張りつめていた緊張の糸が切れて、一気に笑いの空気に包まれる。まさに緩急だ。

 このシステムを使っているので、見ている視聴者たちは図らずも笑ってしまう。しかもムチャ振りが成功すると、ナパーズの2人は堰をきったように爆笑する。それも誘い笑いの効果として視聴者の笑いを増幅させる。

 ちなみに僕の個人的な意見だがショート動画ではなく、YouTubeにあげられている長い動画を見たほうが良い。ショート動画だと百発百中に見えるムチャ振りだが、実際は成功率1割くらいなので、ヤラセ感は一切無い。失敗に次ぐ失敗の後に成功するので、ムチャ振りに答えてくれた瞬間、凄まじい幸福感が押し寄せてくるのだ。

 この幸福感こそが彼らが、バズった理由なのではないだろうか。

 そして彼らの動画を見ていてもうひとつ幸福感を得られる瞬間がある。それは見ず知らずの他人同士が空間を共有し、笑い合い、楽しみ合っているところだ。

 現代人は他人との関係をなるべく持たないようにする傾向にある。隣人との挨拶もせず、隣にどんな人が住んでいるかなんてわからない人が多いのではないだろうか。今でもそうかもしれないが、子供の頃は、他人だろうがなんだろうが登校中に見かけた大人には全員挨拶をする習慣があった。

 子供の頃はそれが当たり前で、今でもマンションで子供を見かけると向こうから大きな声で「こんにちは」などの挨拶をしてくれる。これが大人になるとどんどん減っていき、大人の他人同士がコミュニケーションをとることはほぼ無くなる。これをみんなが当たり前だと思い、孤独を感じているとしてもそういう現代人を演じている。

 しかしこの動画に出てくるノリノリで答えてくれる人たちは、現代人からしたらマイノリティに分類さるかもしれないが、現代人特有の孤独感から解放され、とてもハートフルで温かく見え、そこに幸福感を感じ「現代人もまだまだ捨てたもんじゃない」と思わせてくれるのだ。

 まだ1年未満のYouTuber「ナパーズ」。

 しかし現代人の疲れを癒す効果は十分にある。ぜひ通勤や通学途中で見れる環境にあったら見てみて欲しい。得も言われぬ幸福感が貴方を包み込んでくれるだろう。

 どうしても悪乗り企画に見える方は、とりあえず我慢し企画自体ではなく彼らの人間性に目を向けて欲しい。失敗したときの彼らの落ち込みようを見る限り、素敵な2人組であることは間違いないから。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2022/07/11 11:30
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