トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 磯村勇斗の社会派・カルト・スリラー

磯村勇斗、北村優衣をピンク映画の鬼才が撮る、社会派・カルト・スリラー『ビリーバーズ』

磯村優斗・北村優衣の体当たりすぎる“覚悟”の演技

磯村勇斗、北村優衣をピンク映画の鬼才が撮る、社会派・カルト・スリラー『ビリーバーズ』の画像5
©山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会

 今作で何より驚くのは、磯村優斗と北村優衣の体当たりすぎる演技だ。磯村は、先日公開された『PLAN75』もそうだが、『さかなのこ』『異動辞令は音楽隊!』など、多くの作品に恵まれていながら、あえて冒険的な作品に挑戦したという点は評価できる。

 特に北村に関しては、後半はヌードになっているシーンの方が多いかもしれないと思うほど、正真正銘、体を張っている。

磯村勇斗、北村優衣をピンク映画の鬼才が撮る、社会派・カルト・スリラー『ビリーバーズ』の画像6
©山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会

 倫理観が崩壊し、本能と欲望がむき出しになってしまった男女がどこに向かうのか……。そんな極限の状況下で揺れ動く感情を描いているというのに、演じる側に遠慮があっては説得力がなくなってしまう。だからこそ、北村は登場人物の感情の変化を徹底的に体現してみせたのだ。……見事としか言いようがない。

磯村勇斗、北村優衣をピンク映画の鬼才が撮る、社会派・カルト・スリラー『ビリーバーズ』の画像7
©山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会

 作中で彼らが行っていることを俯瞰で見れば滑稽でしかないかもしれないが、信仰というものは時に日常的な感覚を鈍らせてしまう。第三者に「目を覚ませ」と言われても、彼らにとっては目が覚めたからこその行動なのだ。今作は宗教的な部分に着目しているが、扱っていることは、陰謀論者やマスコミの偏向報道なども同じである。つまり、信じる心というものを利用することで、人間はどれほどまでも、バカにも、本能をむき出しのイドにもなれてしまうということだ。

 また「議長」の行っていることは、明らかにセクハラ行為であるが、それを信仰や意味があるものだと信じることで、その行為自体を正当化してしまう。これは性犯罪者の心境に寄り添い過ぎていると言えるほどに、かなり危険な思想の芽生えを描いている。

 過去には、あまりによく犯罪者の心境に寄り添い過ぎたことから上映が禁止されていた『アングスト 不安』(1983)や、スタンリー・キューブリックに「最も恐ろしい映画だ」と激賞された『ザ・バニシング -消失-』(1988)のような作品もある。今作も、そのうち観れなくなってしまう可能性さえあるかもしれない。だからこそ、少しでも興味があるのなら、早めに観ておいた方がよさそうだ。海外では、確実に上映できない国もあるだろう……。

映画『ビリーバーズ』
7月8日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開
原作:山本直樹「ビリーバーズ」(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)
監督・脚本:城定秀夫 音楽:曽我部恵一
出演:磯村勇斗、北村優衣、宇野祥平、毎熊克哉、山本直樹ほか
主題歌:曽我部恵一「ぼくらの歌」(ROSE RECORDS)
宣伝美術:寺澤圭太郎
宣伝協力:プリマステラ
制作プロダクション:レオーネ

製作:『ビリーバーズ』製作委員会
配給:クロックワークス SPOTTED PRODUCTIONS

バフィー吉川(映画ライター・インド映画研究家)

毎週10本以上の新作映画を鑑賞する映画評論家・映画ライター。映画サイト「Buffys Movie & Money!」を運営するほか、ウェブメディアで映画コラム執筆中。NHK『ABUソングフェスティバル』選曲・VTR監修。著書に『発掘!未公開映画研究所』(つむぎ書房/2021年)。

Twitter:@MovieBuffys

Buffys Movie & Money!

ばふぃーよしかわ

最終更新:2022/07/09 07:00
12
ページ上部へ戻る

配給映画