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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 批判続きだった前細田作品との違い
今週の『金曜ロードショー』を楽しむための基礎知識⑰

『竜とそばかすの姫』現実離れし批判浴びた過去作と違い細田作品最大ヒット

『竜とそばかすの姫』細田作品最大ヒット―現実離れし批判浴びた過去作と違いの画像1
金曜ロードショー『竜とそばかすの姫』日本テレビ 公式サイトより

 今週の金曜ロードショーは2週連続細田守監督作品の第2夜、昨年公開された『竜とそばかすの姫』をお届け。

 本作はヴィルヌーヴ夫人の古典『美女と野獣』をベースに、細田監督お得意の仮想現実世界が舞台。内向的な女子高生がネット世界<U>で忌み嫌われる「竜」と出会い、互いに心の傷を負った者同士の触れ合いが描かれる……というお話。

 細田は東映時代の『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(2000)、オリジナル長編第一弾の『サマーウォーズ』(2009)で仮想現実世界を描いてきた。ほぼ10年ごとのスパンで仮想現実世界を物語の軸にしており、その10年は仮想現実、IT技術の進化とリンクしている。『ぼくらのウォーゲーム!』ではOSはインターネットエクスプローラー、コードレスフォンで連絡を取り合い、『サマーウォーズ』にはアニメ作品ではじめてiPhoneが登場し、ニンテンドーDSiでインターネットにアクセスした。時代を感じるなあ。

『竜とそばかすの姫』の世界はスマートフォンで簡単にネットにアクセスできるようになり、仮想現実の世界はどんどん身近に。『サマーウォーズ』の仮想現実世界<OZ>は10億人のユーザーが登録しているという設定だったが、<U>の登録者数は50億! ほとんど世界中の人間が仮想現実世界に、もう一人の自分を設定しているという状況だ。

 主人公のすずは内向的な性格で学校にもほとんど友達はおらず、たった一人の肉親である父親との関係にも溝ができている。趣味は歌うことだが、人見知りが激しいので他人に聞かせることなんてできない。唯一の友人であるヒロちゃんの勧めで仮想現実世界<U>に自分のアバター、ベルをつくって歌を発表する。ベルの歌は次第に人気を集めるようになり、ネット世界の歌姫として持て囃されるようになる。けれど、自己肯定感が低いすずは自分の人気が信じられない。人気なのはベルの正体、すずを知らないからで、正体がばれたら誰も自分の歌なんか聞かなくなる……。

 <U>の世界で人気を博しながらも、現実世界のすずにはトラブルが起こる。幼馴染の同級生、忍はすずと違って学校中の人気者だが、彼と話していただけというだけで嫉妬に狂う女子たちから罵詈雑言のメッセージが飛び交う。

 そして<U>の世界にもトラブルが持ち込まれる。ベルのライブ会場に謎のアバター「竜」が現れ、ライブをめちゃくちゃにしてしまう。「竜」は<U>のトラブルメーカーとして忌み嫌われていた。世界中で「竜」の正体探しがはじまり<U>の自警団リーダー、ジャスティスとその仲間たちは「竜」の正体探しに奔走する。

『ぼくらのウォーゲーム!』『サマーウォーズ』で「みんなの力がネット世界でひとつになる」様を描いてきた細田は本作では一転、ネットによって炙り出される人の悪意を描く。あらゆる人間がもっともらしい理由をつけられ「竜」の正体だと疑われる。すずの友人であるヒロちゃんまでが「こいつは怪しい。怪しいから「竜」かもしれない」と理由になってない理由で他人を、徹底的にこき下ろす様子は正義感の暴走としか言いようがない。ネット自警団のジャスティスもその名前にふさわしくない、暴力性をむき出しにしてアバターの現実世界の正体を暴くことができる「アンベイル」の力を振り回す。正義という免罪符を手に入れた時、人は最も邪悪になるのだ。

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