「水ダウ」おぼんこぼん仲直りが放送文化基金最優秀賞!「名企画が生まれる瞬間」
#深田憲作 #企画倉庫 #アレのどこが面白いの?~企画倉庫管理人のエンタメ自由研究~
放送作家の深田憲作です。
「企画倉庫」というサイトを運営している私が「あの企画はどこが面白いのか?」を分析し、「面白さの正体」を突き止めるための勉強の場としてこの連載をやらせてもらっています。
今回のテーマは「水曜日のダウンタウンのおぼんこぼん仲直り回」です。
この回の放送自体は昨年なのですが先日、この放送回が第48回放送文化基金賞の番組部門・テレビエンターテインメント番組で最優秀賞に輝いたため、これを入口に「名企画が生まれる瞬間」について述べていきたいと思います。
まずは、この回の放送内容をおさらいすると、浅草を拠点に活動するベテラン漫才コンビのおぼんこぼんさんが、10年来の不仲関係に陥っていることが発覚。関係修復のために担当マネージャーや漫才師の後輩、2人の娘まで巻き込んだ説得の末、劇的な仲直りを果たしたという内容です。
放送文化基金賞の受賞の際に、番組プロデューサーの藤井健太郎さんが述べられていましたが、『水曜日のダウンタウン』という番組はこれまで、他の番組だったら無理やりにでもハッピーエンドで落ち着かせるところであっても、後味の悪いリアルなバッドエンドを正直に見せてきた番組だからこそ、おぼんこぼんの2人が本当に仲直りをするのかどうかを多くの視聴者が、ハラハラしながら見守ることとなりました。あれが他の番組であれば、仲直りするまでの過程のいざこざも「どうせ最後には仲直りするんでしょ?」という目線が入っていたはずです。あの放送回の内容だけでなく、これまで番組が積み上げたものが大きなフリとなって、大きな反響を呼ぶ放送になったのだと思います。
そして、今回の記事で私が述べたいのは、あの放送回の内容ではなく、「名企画が生まれる瞬間」や「名企画が生まれる過程」についてです。
そもそも、このおぼんこぼん企画の発端は「芸人解散ドッキリ、師匠クラスの方が切ない説」という企画でした。芸人コンビの片方が解散を切り出すと、いい話になって感動に決着することが多いため、解散ドッキリはテレビ番組の定番ドッキリの1つとして存在しています。それを師匠クラスのベテラン芸人でやったらどうなるのか? という検証でキャスティングされた芸人コンビの中の1組が、おぼんこぼんさんだったわけです。
キャスティングされた理由は、浅草芸人界では2人の不仲が有名だったからなのですが、最初からおぼんこぼんだけにスポットを当てた企画ではありませんでした。そのドッキリで想像以上の不仲が露呈したことでその後、催眠術を使って仲直りを試みるなど、シリーズ化されていきました。
私がテレビ番組制作に関わってきた経験から思うのは、名企画というのは往々にして一発目から生まれるものではなく、偶発的にそのオモシロの種が発芽し、そこに特化していくことで名企画になることが多いということです。
例えば、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)は「●●芸人」というくくりが代名詞となっていますが、あの形は番組開始当初はありませんでした。「メガネ芸人」という企画を行ったのが最初で、そこで手ごたえを掴んだ番組スタッフが「●●芸人」の路線にシフトしていったという経緯があります。『アメトーーク!』と双璧をなす人気番組の例でいうと『世界の果てまでイッテQ』(日本テレビ系)も最初は今とは違う内容でした。
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