プロレスラー伊藤麻希が語る“赤”へのこだわり「私は主役になりたかった」
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“闘うクビドル”こと伊藤麻希が2022年7月9日に東京女子プロレス 大田区総合体育館大会でアレックス・ウィンザーと対決し、5度目の防衛戦に挑む。
2011年からアイドルグループ・LinQのメンバーとして活動し、16年にプロレスラーデビュー。17年に同グループをクビになってからは、プロレスラーとして日本のみならず海外でも活躍し、昨今盛り上がりを見せる女子プロレスブームを牽引してきたレスラーのひとり。今回はアイドルからプロレスラーに転身した経歴のある伊藤にコスチュームへのこだわりやアイドル時代のエピソード、日本と海外のプロレス文化の違いなどを聞いた。
「赤」は自己顕示欲を満たす色
――女子プロレスラーのみなさんはコスチュームをすごく大切にされていると思うのですが、伊藤さんはコスチュームに対してどのようなこだわりがあるのでしょうか?
伊藤麻希(以下、伊藤) あんまりテイストを変えないようにというのは心がけています。というのも、せっかく伊藤を覚えてくれた人がいても、印象が変わっちゃうと誰だか分からなくなるんじゃないかと思っていて。それもあってアイドル時代から髪型も一貫してツインテールにしていますし、コスチュームもデビューからセーラー服は変えないようにしています。
――色の配置がプロレスデビュー時とは違いますよね?
伊藤 デビューのときは赤と白でしたが、今は白の代わりに黒を入れてます。それはなぜかというと、新人を相手にした試合のときに、対戦相手をめちゃくちゃボコボコにするから(笑)。私はヒールで売ってるわけではないんですけど、そういう役目も増えてきたので黒を入れるようになりましたね。
――伊藤さんのコスチュームといえば赤色が特徴的です。何か理由があるのでしょうか?
伊藤 もともとでんぱ組.incの古川未鈴さんがめっちゃ好きやったんですよ。未鈴さんがいつも赤のセーラー服を着ていて、自分もそうなりたいなって思ったんです。赤が似合う女性ってかっこいいなって。いかにもセンターという感じがして。アイドル時代には赤色を着させてもらえないタイプだったんです。LinQはメンバーカラーが明確にあったわけじゃないけど、立ち位置も端っこだったから、もしも色担当があったら私は「深緑」とかそんな感じだったと思います。けど、プロレスは全て自己プロデュースだし、それなら赤を着ちゃおうと思って、自分が憧れていた赤をつけるようになりました。それも主役になりたいっていう自己顕示欲の塊ですよ(笑)。赤色はめちゃくちゃこだわっています。
――アイドル時代とは違って好きなようにコスチュームをデザインできる今のほうが合っている?
伊藤 完全に合っていますね! やっぱりアイドルは衣装があらかじめ決められていて、それも自分が着たい衣装を着ることができないことが多かった。でもプロレスラーは自分の好きなものを着られるし、自由にデザインもできるからすごく楽しいです。
――コスチュームのデザインにはどの辺りから携わっているんですか?
伊藤 私は布選びからやっていますね。私は衣装を作ってくれる人が何でも一緒に作り上げたいという方なのでそういう形をとっています。
――ちなみに今着ているコスチュームは何着目なのでしょうか?
伊藤 8着目ですね。今回から初めてレザー素材を使ったのとズボンタイプになりました。今まではかぼちゃパンツをずっとはいていたんですが、8着目からはスカートの中のズボンが見えるようにしました。
――その辺りも伊藤さんの意見が反映された形なのでしょうか?
伊藤 そうですね。ちょっと飽きた部分もあったので、たまにはと思ってこういう形にしてみました。私、衣装にすぐ飽きるんですよ(笑)。だからもう次の衣装は考えています。1カ月ぐらいで飽きちゃったんで。
――普段はどのぐらいの頻度で変えていくんですか?
伊藤 私の場合は期間を決めているわけじゃなくて、8~9カ月ごとにビッグマッチがあるので、それに向けて変えるという感じです。
――伊藤さんの思いが込められたコスチュームですが、お気に入りのポイントを挙げるとしたらどこでしょう?
伊藤 全体的にキラキラしているところかな。とにかく遠目から見ても伊藤麻希だと分かってもらえるようにスパンコールとかを多めにつけています。スパンコールは試合中に自分の体にも刺さるし痛いんだけど、どうしても両国国技館とか大きな会場で試合をやるとなると目立たなくなってしまうんですよ。スパンコールをたくさんつけるとライトがいい感じに当たってよく見えるようになるんです。
――伊藤さんはアイドルとプロレスラーを両方経験されていますが、コスチュームはどのように違うのでしょうか?
伊藤 布選びからも違っていると思うんですよね。プロレスのコスチュームは引っ張っても破れない強度の素材を使っていて、アイドルの衣装は使いたい布を使える。プロレスではくズボンには必ず紐がついているんですよ。トップスの裾部分も紐で結べるようになっています。激しく動いたときでもズレないように工夫されているんです。
――確かにプロレスの試合は接触が避けられないですもんね。その辺りもしっかり考えられているとは驚きです。今後挑戦してみたいコスチュームはありますか?
伊藤 イメージしているのはもうちょっとボリュームを増やしたいなと。今は全体的に体に沿った形になっていて、ちょっとやっぱ物足りないなって。次は腰まわりぐらいにボリュームを入れたいですね。あとはキラキラさせつつ、レザーの着心地が良かったのでそのまま継続したいなと思っています。
他人に認められたくて尖っていたアイドル時代
――改めてLinQ時代を振り返って、当時をどのように感じていますか?
伊藤 アイドル時代はずっとバラエティー担当で正統派ではなかったんです。私は正統派として売っていけると思っていたから、まさかそうなるとは……といった感じでした。事務所から言われるがままにバラエティー班として活動していたんですけど、私は1回手をつけたらその形になるまで絶対諦めたくないタイプで。1回手をつけちゃったもんだからもう本当にもうバラエティーで頑張っていましたね。中途半端が一番良くないと思ってたから、女の子でいたいとか、アイドルらしくいたいみたいな感情はもう捨てていました。
――自分はバラエティーで活躍するんだ、と。
伊藤 そうですね。こう言われたらこう言い返すみたいな感じのことをノートにめちゃめちゃ書いていたんですよ。私は顔が大きいで売っていたから、たまに肩幅狭いねといったネタが振られるんですけど、そういうのは全部リスト化して反応できるように暗記していましたね。
――アイドル時代からそこまで徹底されているのはすごいですね。
伊藤 すぐに返さないとかわいそうな子って映ってしまうのが嫌で、せっかく与えてもらった立ち位置だからと思って頑張っていました。でもその後頑張りすぎて全部嫌になるんですけど(笑)。それで辞めたんです、その道を行くのは。
――正統派からバラエティー班で活躍されていて、当時はどのようなキャラクターだったのでしょうか?
伊藤 めちゃめちゃ尖っていましたよ。プロレスラーとしてはヒールのように見られることも多いですけど、アイドル時代のほうがイケイケだったんじゃないかな。そもそも私が尖っていた理由っていうのは、人に認められなかったからなんですね。人と違うことをしなくちゃいけないと思って、目立とうと必死だったというか。でも今はそういうことをしなくても「伊藤ちゃんすごいね」とか「伊藤のプロレスを見るとすごい元気になる」とか、みんなから認められるようになって尖る必要がなくなりました。
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