『水曜日のダウンタウン』“陰口ドッキリ”のずるいベクトルと連鎖
#テレビ日記
テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(6月26~7月2日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします
松本人志「…なんで俺が必死でフォローしてんのか」
『水曜日のダウンタウン』(TBS系)は、なにかと“説教”をからめた説の検証が多い。
明日29日の「水曜日のダウンタウン」の放送は・・・▼マツケンサンバを踊りながら泣くことなど出来ない説 第2弾▼あえて理不尽な説教をしてから席を外して、後輩からの陰口を誘う…勝者なき戦い“陰口引き出し王決定戦”#水曜日のダウンタウン #tbs pic.twitter.com/3S9vvVv8zV
— 水曜日のダウンタウン@wed_downtown) June 28, 2022
これまでも、「サムギョプサル食ってるとき説教されたらサンチュ巻けない説」や「ソフトクリーム買った直後に説教くらったら食べるわけにいかず溶けてなくなっちゃう説」、「矢口真里、説教くらった後にカラオケで『恋のダンスサイト』歌われてもさすがに『セクシービーム』入れづらい説」といった企画が放送されてきた。木本武宏(TKO)など、この番組で“説教キャラ”のようになっている芸人もいる。
『水曜日』のこの説教へのこだわりはなんなのだろうか。単にドッキリには説教がつきものなだけの話かもしれないが。
で、今回の企画は「陰口引き出し王決定戦」。先輩芸人が仕掛け人となり、後輩から陰口を引き出していくというものだ。先輩たちはお酒の席で理不尽な説教を後輩たちにくらわせたあと、その場を立ち去る。先輩がいなくなった席で、後輩たちはどれぐらい陰口を言ってしまうのか、という検証だ。
先輩たちは、後輩の芸に対する姿勢にダメ出しする。恐縮して聞いている後輩たち。だが、先輩がいなくなると、「うるさかったなぁ」「頭おかしいっすよね、あの人」「負けたって思ったことないから」「気持ち悪いおじさん」「靴紐も結ばれへんし」といった陰口がどんどん出てくる。編集された映像なので実際のところ陰口がどのぐらいあったのかはわからないが、画面上は「陰口が止まらない」という感じだ。
「仕掛け人やから、罵詈雑言いって帰るわけやから、みんなもそりゃ普段よりかかっちゃうってことですよ。……なんで俺が必死でフォローしてんのか」
VTR後の松本人志(ダウンタウン)がこう指摘するように、先輩はあえて理不尽な説教をぶつけ、後輩たちの不満をパンパンにして帰る。そのため、後輩の陰口がいつもより吹き出している面はあるのだろう。
ただ、先輩に不満がない場合は陰口もほとんど出てこないのだろうから、そこには“普段”がある程度出ているようにも感じられてしまう。「かわいそうだけど、これだけ言われるのは言われるほうにも非があるのだろう」と思わせる作り。そういう意味では、ストレートな企画のようで防御線が張られている。視聴者が企画に批判的な思いを抱いたとしても、その批判のベクトルは一方向に向かわず、仕掛け人、ターゲット、番組側とさまざまに向かう。それらを合成すると実質的にゼロに近くなってしまう感じというか。
あと、仕掛け人になる先輩芸人にせよ、ターゲットとなる後輩芸人にせよ、今回のドッキリの出演者をキャスティングする際には「あの芸人は後輩が不満もってそう」「あの芸人は陰口多そう」といった製作側の情報のやりとりが少なからず必要だろう。陰口で築かれた土台の上で陰口が吹き出している感じ。後輩たちの陰口は白日のもとにさらされ、もう“陰”にはない。あのVTR上に残っている陰口は、VTRに映っていない陰口だ。
いずれにせよ、まぁ、ひどい企画である。「いろいろあるけどそれもふくめてお笑いじゃないですか」の許容水準は人によってさまざまだろうけれど、私の許容水準は超えていた。おぼん・こぼん企画のナイツのような、間に入ってフォローする役回りがVTR上におらず、「陰口引き出し王決定戦」の王者を決めて終わり、という構成がツラい。
また、この企画について批判的に何か言うことも陰口に見えてしまうような、そんな構図も見え隠れする。陰口の連鎖に引きずり込まれる感じ。この記事も引きずり込まれているのだろう。今回の企画にはネット上でも批判が少なくないようだ。
そういう意味では、もっとも陰口を引き出しているのは『水曜日のダウンタウン』という番組それ自体かもしれない。なるほど、SNSと相性がいい。
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