M-1グランプリ「コンビを次々解散に追い込む」コンテストが今年もスタート
#馬鹿よ貴方は 新道竜巳
今年もM-1グランプリ(以下、M-1)へのエントリーが開始し、それをPRする記者会見が2022年6月29日に行われた。
年々M-1への注目度はあがり、昨年はついに決勝進出メンバー10組全組が、今年テレビで売れるという状況になった。
優勝を目指すためにあえて、テレビ出演を断っているコンビ・ゆにばーすの川瀬名人であっても、月収100万円近いことをSNSで報告、いかにM-1での活躍が、今の芸人にとって環境を変えるかが見て取れる。
賞レースの中でもM-1への出場だけは、売れ方が別格なのである。
今年売れたのは何も決勝進出者だけではない。準決勝で爪痕を残したヨネダ2000も、テレビで活躍し単独ライブへの集客も増加した。また準々決勝ワイルドカード(準決勝に進めなかった出演者がネタを動画配信し、その閲覧人数で1位をとった1組が準決勝で復活するシステム)から準決勝に進んだ滝音も、大阪での活動がメインなのにもかかわらず、全国区でその名前をよく耳にすることになった。
さらにさらに準々決勝で敗退したラパルフェも、吉本興業やM-1に対する毒舌で注目され、ここ1年で明らかに仕事が増えている。
ライブシーンをみてみると、M-1の3回戦以上に進むと動画配信があるので、それらでネタを見てもらえ、ライブへの出演オファーが増加しているようだ。そして彼らがお笑いライブに出演すると、楽屋で一目置かれる存在にもなる。
こんなふうに、芸人ならば誰もが夢見る栄光が待っているM-1だがその出場が逆に、苦痛になる芸人さんも多くいるかと思う。視聴者からすれば「漫才師で、出演規定内である結成15年以下のグループなら、当然エントリーするんでしょ」と思うだろう。しかし、毎年1回戦でまったくうけずに落ちている出演者もものすごい数いるのだ。
普段のライブなら爆笑が起きるような芸人さんでも、M-1の予選となるとひと笑いもなく終わる事がある。現に私が以前組んでいたトリオもライブでは結構うけるときもあったのだが、ことM-1に至っては、運がよくて満席の中の1人が笑ったぐらいで敗退した覚えがある。
そうするとM-1の時期が辛く、恐怖で仕方がなくなる。もちろん出ないという選択肢もあるのだが、周りからの“漫才やってるんだからM-1出るんだよね”の空気が凄くて逃げる事ができない。
また、毎年参加していて3回戦や準々決勝にまで進んでいる出演者であっても、仕事には全くつながっていないコンビもいたりする。そんな人達は「決勝に出ればなんとかなる」と躍起になってお笑いライブに何本も出たりするが、途中でメンタルが壊れたり、過剰な出演本数によりコンビが不仲になり、やがて解散に至ってしまうことも。
そのぐらいM-1の層は厚いのだ。
私は「自分が無理なく頑張れるペースで出続ける」事が、結局M-1で一番結果がでやすいやりかたなんじゃないかなと思っている。どんなに面白くても、才能があっても、解散してしまったら。次の年そのコンビは決勝に行く可能性がゼロになってしまうのだから。
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