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日焼け止めクリーム、発ガン性指摘あるものも…新たな素材開発

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 化粧品や日焼け止めクリームのUV 防止材として多く使われている酸化チタンは発がんの可能性が指摘されるなど、安全性に疑問があることをご存じだろうか。国立物質・材料研究機構、北海道大学、広島大学の研究グループは6月21日、酸化チタンに替わる新たな酸化鉄系材料を開発したと発表した。
 https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220621_pr2.pdf

 今年は6月20日過ぎから暑い日が続いた。気象庁は6月27日、早々と九州南部、東海、関東甲信越地方の梅雨明けを宣言した。強い日差しは特に女性にとっては大敵だ。紫外線 (UV)カットの日焼け止めを愛用している人も多いだろう。

 UV防止材として使われている酸化チタンは、化粧品や日用品、食品、医薬品、建材等の分野で幅広く利用されている。

 ところが、この酸化チタン、特にナノメーターサイズの粒子は、20年にEU(欧州連合)がナノサイズによる細胞毒性等に起因する発がん分類に指定しており、フランスでは食品利用が禁止されるなど、利用と製造が制限されつつある。

 そこで研究グループは酸化チタンの代替品として利用できる物質の研究を行った。

 発表によると、最有力候補は地球上で最も安価、かつ、最も生体親和性に優れる酸化物半導体の酸化鉄だが、酸化鉄は主に可視光を吸収するので、白色顔料やUV吸収材には利用できない。

 一方、二核鉄イオンは酸化鉄に比べてUVを吸収し、酸化チタン以上の光触媒活性を示すが、二核の鉄イオンは合成も難しく、極めて不安定で、安定性や安全性の面で課題が残っていた。

 研究グループは二核鉄イオンをその多核化・酸化鉄への結晶化が制限される微細構造の多孔質シリカ粉末(白色)内部に埋め込むことで、安定化させることに成功した。市販の多孔質シリカと単核鉄イオン溶液とを混合することで、UVを吸収しつつ有害な光触媒作用が低減された白色粉体を得る事に成功した。

 この白色のUV吸収材は有害な光触媒作用が低減され、さらに、粉末を天然オイルと混ぜペーストを作成し、日焼け止めクリームとしての性能も評価したところ、現行の酸化チタンに匹敵する性能と安定性を示した。

 二核鉄イオンは、酵素やタンパク質など天然には遍在するものの、人工的に合成できた例は限られていた。従来研究では、生成物の安全性や安定性に懸念があり、また生成物が着色するといった課題があった。

 研究グループでは、「安全性や安定性の懸念が少なく、二核鉄イオンがフィットし光触媒作用を低減できる微細構造を有する多孔質シリカを見つけられたことが、今回の発見の鍵」としている。

 安全性についても、今後詳細な検討が必要とした上で、「用いた多孔質シリカが体内の組織を通過し難い数マイクロメーターの粒子のため、現行の酸化チタンナノ粒子で懸念される細胞毒性は示さないと期待できる」としている。

 研究グループは、今回、酸化チタンよりも安全な物質で白色のUV防止材を合成できる指 針が得られたことで、今後、化粧品や日焼け止めクリームへの応用が期待でき、さらに、「安定化に用いる多孔質シリカの微細構造によっては、鉄二核イオンの高い光触媒作用を維持させることも可能なため、空気清浄機等の光触媒への応用を目指していく」方針だ。

 日本では未だに酸化チタンの食品などへの利用は禁止されていないものの、発がん性の問題などが重視されれば、いずれは禁止される可能性が高い。

 今回の研究により、代替として二核鉄イオンをUV防止材として利用する化粧品や日焼け止めクリームへの応用の道が開けたことで、発がん性を含め、より人体に悪影響の少ない化粧品などが開発に期待したい。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2022/07/05 11:00
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