映画『エルヴィス』てんこ盛りな豪華さでより悲劇を際立たせたバズ・ラーマン
#ヒナタカ
映画という媒体の意義
映画というのは不思議なもので、ゴージャスな演出がこれでもかと詰め込まれていたとしても、そのまま煌びやかで華やかな印象だけを受けるわけではない。むしろ、前述した「保守的な大人たちによる誹謗中傷」「若くしての死」といった悲劇性が、表面上のゴージャスさのおかげで相対的により際立ってくる。その意味で、やはりバズ・ラーマン監督の作家性が完全にプラスに働いた作品になっていると思うのだ。
そうした「事実を並べ立てるだけでは決して感じ得ない印象」は、映画という媒体の意義の1つであると思う。エルヴィスという1人の等身大の人間、さらには彼を搾取していたように見えたマネージャーにさえも、新たな視点を発見できるのだから。現代でも他人事ではない保守的な価値観による誹謗中傷の問題を考えるきっかけにもなるし、切ない物語からは身近な誰かを大切にしたいという気持ちも得られるだろう。
あえて本作の難点をあげるのであれば、上映時間が159分と長めであり、ゴージャスな演出がたくさん詰め込まれていることもあって、観ていて少し疲れてしまうことだろうか。だが、その疲労感も含めてバズ・ラーマン監督らしさとも言えるし、そこに隠されたエルヴィスの苦悩を描くためには必要な尺であったとも思える。ぜひ、劇場で腰をどっしりと据えて、その生涯を見届けてほしい。
『エルヴィス』
7月1日(金)ROADSHOW
監督:バズ・ラーマン
製作・美術・衣装:キャサリン・マーティン
脚本:バズ・ラーマン、サム・ブロメル、クレイグ・ピアース、ジェレミー・ドネル
出演:オースティン・バトラー、トム・ハンクス、オリヴィア・デヨング、ヘレン・トムソン、リチャード・ロクスバーグ、ケルヴィン・ハリソン・Jr
上映時間:159分/スコープサイズ/2D/IMAX 2D/ドルビーシネマ 2D /5.1ch リニア PCM+ドルビーサラウンド 7.1ch+ドルビーアトモス+DTS:X(一部劇場にて)
字幕:石田泰子/字幕監修:湯川れい子/映倫区分:G/配給:ワーナー・ブラザース映画
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