『時をかける少女』はその時代のヒロインと青春を映し出す鏡
#金曜ロードショー #しばりやトーマス #金ロー #時かけ
7月1日の金曜ロードショーは2週連続で、細田守監督作品をお送りします。第一弾は、夏の定番プログラム『時をかける少女』(2006)!
嗚呼、『時をかける少女』か……Z世代の人にはわからないかもしれませんが、昭和の老害世代である筆者のような人間には『時をかける少女』とつぶやいただけでなんかこう、甘酸っぱいものが胸の奥に去来するのである。
作家・筒井康隆が1964年に発表した原作小説を一躍有名にしたのは1983年、角川春樹製作、大林宣彦監督による実写映画なのはいうまでもない。
70年代から80年代にかけて角川春樹は大量宣伝とメディアミックスをしかけ、ヒットに導く手法を持ち込んだ。そして77年に自身初の商業映画『HOUSE』をラジオ、テレビを使ったプロモートで映画が完成する前から話題にしていった大林宣彦は当然のように結びついた。
角川映画はどんなにヒットさせても「うまいのは宣伝だけ、角川映画で一番面白いのは予告編」などと陰口を叩かれ、大林もコマーシャルでは話題だったが、東宝の現場では助監督を経験していない奴に映画を撮らせるなんて「大林のなんか映画じゃない」とやはり悪口を言われていた。二人は保守的で閉塞感のある日本映画に革命を起こそうとしていた。
そして二人にとってのヒロインである原田知世を発掘する。角川春樹は原田知世を「本当は結婚したいけど、歳の差(当時40代。原田は15歳!)で出来ないから、息子の嫁にしたい!」というぐらい彼女にほれ込み、大林も自身の大好きな大正ロマンチシズムを取り込んだ作品として「(角川への)プライベートフィルムのつもりで」撮ったという。商業映画なのに!
角川の発言は現代なら炎上どころでは済まない大問題になっただろうが、それぐらい原田知世にはいい歳したオッサンたちを狂わせる魅力があったといえよう。公開当時、筆者は小学生だったのでまだオッサンの思い入れを理解できる歳ではなかった。後に「いい歳」になってからテレビ放送やビデオでハマった世代だ。とにかく……原田知世は素晴らしかった。そして自分の青春時代に原田知世のような同級生はいなかったし『時かけ』みたいな青春は経験しなかった、という事実に打ちのめされた。
その後も『時かけ』はその時代ごとのアイドルを主演にした派生作品が作られ続ける。『時かけ』はその時代のヒロインを映す鏡だった。
そして今回金ローで4度目(!)の放送となるアニメ版である。これまでの派生作品のほとんどが原作ないし大林の実写版から大きく逸脱していないものばかりだったのだが、細田守のアニメ版は原作から20年後を舞台にし。原作のヒロインの姪が主人公という設定だ。この大胆な新解釈、果たしてどうなったか?
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