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日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 『関ジャム』山下達郎の“自戒”

『関ジャム』山下達郎が語る自戒、多くのミュージシャンたちに突き刺さる“一問百答”

“KinKi Kidsには「硝子の少年」の“憂い”が絶対に必要だった”

 山下の楽曲提供といえば、KinKi Kids「硝子の少年」が外せないだろう。

「『硝子の少年』は、とにかく大変だったんです。1位は当たり前だと。ミリオンマストって言われたんですよ。光GENJIの『パラダイス銀河』が97万枚で、『ミリオンが夢なんだ』って。ひどいでしょ(苦笑)?」(山下)

 ジャニー喜多川氏からの“100万枚売れる曲”のオファーだ。逆に言えば、ASKAが出掛けた「パラダイス銀河」がミリオンに達していないのが意外。振り返れば、SMAPのデビュー曲「Can’t Stop!! -LOVING-」は明らかにパッとしなかったし、TOKIOも数十万枚程度の売り上げで安定している状態だった。

「はじめは『ジェットコースター・ロマンス』を出したんです、1回。それでOKもらったんですけど、でも『ジェットコースター・ロマンス』だと100万枚いかないなと思って、僕が。『もう1週間くれ』って書いたのが『硝子の少年』なんですけど」(山下)

 つまり、2ndシングルとなった「ジェットコースター・ロマンス」のほうが先に出来上がっていたのだ。この曲でデビューしていたら、果たして今のキンキは存在しただろうか? 確かにいい曲だ。でもキラキラしすぎているし、実際にジェロマは93万枚どまりだった。また、当初は「Kissからはじまるミステリー」がデビュー曲候補だったが、ジャニー喜多川氏から却下されたという裏話もある。

 そして、山下は1週間で「硝子の少年」を書き上げた。

「KinKi Kidsの歌のトーンとか、あの人たちは濡れてる声でちょっと悲しいんですよ。それで、いろいろ考えて『硝子の少年』を書いたら、『暗い』『踊れない』って(苦笑)」

「そうすると、キンキの2人が不安になってくるんですね。当時、彼らは17歳で僕が42歳、今のキンキの歳ぐらいですけど、『大丈夫だよ、これはあなた達が40歳になっても歌えるから』って」(山下)

 山下が今のキンキの年齢の頃に書いた曲だから、「40歳になっても歌える曲」という言葉が出たわけだ。結果、まさに山下が言った通りになった。今年43歳のキンキの2人が歌う「硝子の少年」は、現在も“少年の色気”の増している真っただ中。キンキには、絶対にこの曲の“憂い”が必要だった。

「あれが結局、僕にとっても松本(隆)さんにとっても最高の売り上げの曲なんです。松本さんの全人生の中で一番売り上げたのが、『硝子の少年』ですから。178万枚。だから、それ(ミリオン)はクリアしたんです(笑)」(山下)

 付け加えると、シングル「硝子の少年」はカップリングなしの500円で発売されており、リリース当時(97年)はまごうことなきCDバブルだった。さらに、2人の主演ドラマ『人間・失格~たとえばぼくが死んだら』(TBS系)が94年に放送され、高視聴率をマーク。満を持してのデビューだった。

 現在、ENDRECHERIとしてファンク路線へ進んだ堂本剛の音楽性を、山下は高く評価しているそうだ。

山下達郎の“eastern youth好きすぎ問題”

 シンガーソングライターのさかいゆうからは、「声のケアやボイストレーニングはしますか?」という質問が。

「全然やってません。ボイストレーニングってあんまり信用してないんで。(中略)だって、別にピッチが正確な歌が面白いわけじゃないからね。『歌っていうものは~』って、そんなものはないんです。その人が歌う歌が“歌”なんだから。音楽は人の表現によって全然違うので。ボイストレーニングってすごいことのように思われるけど、歌ってりゃいいんですよ(笑)」(山下)

 シティポップの代表格とイメージされがちの山下だが、根っこはAC/DCを愛聴するロック気質の男だ。特にAC/DCの初代ボーカリスト、ボン・スコットは気合が入りすぎて音を外すこともしばしば。それが、個性であり武器になるというのが山下の主義である。歌がうまいのにつまらない、琴線に触れないボーカリストより遥かにいいということ。

 続いて、穴見真吾(緑黄色社会)からは、「若手ミュージシャンの曲は聴きますか?」という質問が。

「どっちかって言ったらハードサウンディングなほうが好きなので、亜無亜危異、eastern youth、ブルハ(THE BLUE HEARTS)、ミッシェルガン(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)、ミッシェルガンの延長でROSSO、The Birthday。あと、凛として時雨とかモーサム(MO’SOME TONEBENDER)とか、聴くのはああいうのですね」(山下)

 山下のeastern youth好きは異常である。発売日にアルバムを買い、ライブを観に行き、事あるごとにバンド名を口にする“eastern youth大好きおじさん”。そして、「TMGE→ROSSO→The Birthday」というチバユウスケメドレーも壮観だ。チバと吉野寿(eastern youth)は今年で54歳だし、凛として時雨はすでに20年選手、亜無亜危異は山下と同世代だ。若手ミュージシャンを聞いたのに彼が挙げた面子はほぼ50歳超えという事実には笑ったが、一般的にはかなり意外なセレクトなのでは?

 他に、山下はRHYMESTERも愛聴しているし、家族でTHE YELLOW MONKEYのライブを観に行ったりもする(竹内まりやもイエモンの大ファン)。趣味は幅広くて、意外だ。

「運動神経がないんでね。バク宙なんかできたら絶対ヘビメタですよ。もうちょっとルックス良ければ。宙吊りでAC/DCみたいな、いいじゃないですか」(山下)

 彼が長髪を保っているのは、ハードロックが好きだから? いつか、遊びでメタルアルバムを作ってほしい……なんて思ったりもする。

――ちなみに、ご自宅で音楽を聴かれるとき、他のミュージシャンをチェックされるときは何で?

「今、世界中のサブスクのTOP50を毎日聴いて寝てます。そうすると、時代の音がするでしょ。リバーブ(残響音)は時代でものすごく変わるのでね。だから、このアルバム(=最新アルバム)を作るときもエド・シーランとラージ(音量感や音圧感を確認する大型のスピーカー)で聴き比べるとか、音圧の聴き比べは絶対必要。それが、ラジオでかかったときの勝ち負けになるので」(山下)

 「アーティスト」と呼ばれることをあまり好まない山下達郎。商業的なこともちゃんと意識し、アーティストである前にずっと職人だ。どの世界でもそうだが、残るのはやはり職人気質の人である。

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