BTSや政治家まで彫っているのに…世にも珍しい“タトウー禁止国・韓国”
#韓国 #BTS
韓国・K-POPアイドルのファッションをチェックする上で、おしゃれなタトウーは見逃せない。服装や髪型以上に、精神性やメッセージが色濃く反映されているからだ。日本でもK-POPアイドルのタトウーには高い関心が集まっている。例えば最近では、グループ活動の“暫定的休止”を発表した、BTSの友情タトウー(お揃いタトウー)が大きな話題となった。他グループに関しても、メンバーのタトウーの情報を扱ったニュースやまとめ記事が数多く投稿されている。
韓国社会におけるタトウーのイメージは、日本と同様に長らくネガティブなものだった。タトウーを彫った人=アウトローな人という認識は根深く、職場や公共の場所などでは忌避される存在であり続けてきた。しかし、近年ではファッションとしてタトウーを彫る人が増加。現在、300万人以上がタトウー経験者であるという統計もあるほどに、文化の裾野は着々と広がり始めている。なおこの人数には、「半永久施術」と呼ばれる、落ちないメイクアップなど美容関連のタトウーも含まれている。
それだけタトウーを彫る人が増えているのだから、関連ビジネスもきっと盛り上がっているはず――。そう思いたくもなるのだが、結論を先に言うと答えは「NO」だ。その理由は、韓国ではタトゥーアーテイストが10数名と数えるほどしかいないからだ。
もう少し正確に説明しよう。韓国ではタトゥーを医療行為と定めている。そのため、医療免許を持っていない人がタトウーの施術を行うことは違法だ。より分かりやすく言えば、医者でなければタトゥーを入れることができないのだ。韓国国内には医療免許を保有しつつタトゥーを彫る医者、すなわち“合法なタトゥー施術者”が10数名ほどしかいないのである。
ただ韓国業界関連団体などによれば、韓国には約5万人のタトウーデザイナーやアーテイストがいるとされている。半永久施術を行う施術者を含めると、その数は約25万人にのぼる。つまり、タトゥーを仕事や生業にしている人が多く、そこに産業と呼べる規模の経済活動があるのにもかかわらず、その約25万人は韓国の法律上は違法就労者であり、いつ摘発されてもおかしくない状況にあるということになる。
なお、韓国で医者以外のタトゥー施術が違法とされる根拠となっているのは、1992年に大法院(最高裁判所)でくだされた判例だ。そこから30年以上が経過し、現実に合わない法律を再考して欲しいと、タトゥーアーテイストらによって組織されたユニオン、市民運動家、一部の政治家が問題提起を活発に行ってきた。が、いまだに過去の判例は維持され覆ってはいない。
実際、韓国では多くの一般人のみならず、影響を持つ芸能人も国内でタトゥーを入れている。そればかりか、政治家や法曹関係者が著名なデザイナーやアーテイスト(だが国内では違法就労者)に、タトウーを依頼することも増えているという。タトゥー法は現実と極端に乖離した、韓国社会でも珍しい“不思議な法律”のひとつになっている。では、世間ではこの法律をどう捉えているのか。韓国カルチャー紙の記者のM氏は言う。
「タトゥー法は形骸化しているため、早急に再考されるべきだという民意やメディア報道は多いです。というのも、法律が整備されないので、消費者が被害を受ける可能性があるからです。また多くの優秀なタトゥーアーテイストたちも、施術後に客から脅迫されて摘発されないか戦々恐々としています。当然、社会的には“犯罪者”なので社会保障も受けられない。一方で、タトゥーはけしからんし、法律を変える必要もないという世論も根強い。最近では国会のイシューになることも増えていますし、今後、さらに動向が報じられることも増えていくでしょう」
コロナ禍が終息の兆しをみせはじめ、韓国旅行を楽しみにする日本人観光客も増加中だ。なかには、推しのアイドルと同じタトゥーに憧れ、施術を受けに行きたいと考えているファンもいるはずである。ただ法律が整備されていないということは、しっかりとした施術者とそうでない施術者を見分ける術が少なく、仮に施術のトラブルがあった場合に法的な補償も受けることが難しいということを意味する。
韓国国内でのタトゥー議論は一旦、脇に置いておくにせよ、韓国でタトゥーを入れたい人にとって、入念な下調べはトラブル回避のために必須となりそうだ。
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