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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > “休業”を経験する芸人2人の語り

ぼる塾・酒寄希望 × かが屋・加賀翔 芸人を“休業”した2人の語り「人生を休む練習は、一生役立つから」

休業中は「ゼロカロリーのLINE」に救われた

ぼる塾・酒寄希望 × かが屋・加賀翔 芸人を休業した2人の語り「人生を休む練習は、一生役立つから」の画像11

酒寄:読者の方からは、「子どもが生まれたりして連絡してもいいかわからなかった友達と連絡を取り合うようになりました」と言ってくださることもあって。育休中の方から「田辺さんの言葉に励まされました」とお手紙をいただいたこともありました。それはすごくうれしかったですね。よかったなあって。

──酒寄さんがnoteでぼる塾のエピソードを書き始めたきっかけは、なんだったんですか?

酒寄:田辺さんって、自分のどこが面白いのかわかってない人なんですね。作家さんからも、「酒寄は田辺のエピソードを収集しておくように」って言われてて(笑)。なので、田辺さんとはるかちゃん、あんりちゃんの面白いエピソードを書き留めておいたものをnoteにアップしています。

 あとは、育休中でも自分のペースでお笑いに関わっていられるリハビリとしても、noteが役立ってます。最近はちょっとずつ落ち着いてきたんですけど、私は人前で話すとなるとやっぱりガチガチに緊張しちゃう性格なので、田辺さんに「ごめんだけど、私のリハビリに付き合って!」ってお願いして、YouTubeでどうでもいいことをしゃべり続ける動画をアップしたり。

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加賀:そうやって、復帰までのステップみたいなものを用意して、ちょっとずつやっていくことが必要ですよね。特に文章を書くことは、自分のペースで進められるから。

酒寄:そうですね。自分のタイミング、自分のペースで書くことができるのがいいです。

加賀:お子さんを育てるだけで本当に大変だと思うんですけど、その間にあれだけの文章を書けるのが本当にすごいことだなって思って。育児中の知り合いは、たまにはストレス発散しないとやっていけないと言ってて、子どもを預けた夜はクラブに行ってベロッベロになるまで飲むそうです。それぞれの方法で息抜きをすることが大事だと思うんですけど、それだけ重圧がかかるってことですよね。

酒寄:私はnoteを書くことでストレスを発散しているのかも。楽しいし、達成感もあるし。

──加賀さんは、休業中にメンタルがつらくなったときはどうされていましたか?

加賀:ずっと仕事を一緒にやっていた放送作家の白武ときおさんが、頻繁に連絡をくれていたんです。「元気やったらドライブ行きましょうかー」とか、散歩とかに誘い出してくれました。「最近どうですかー?」って聞かれても、休業中で家にいるから「何も変わってないです」って答えるしかないんですけど(笑)、そういうのがすごくよかったです。

 白武さんには相談もしてました。僕は今後、一度芸人を休業したっていう“キズ”を負っているように世間から見られるかもしれない。いろんな要素が重なってやっと世に出られたのに、もう一度イチからなんてムリだろと。正直、今後が不安です、って。でも白武さんは、「いや、大丈夫ですよー」って返してくれてました。僕がどれだけ「大丈夫じゃない」って思ってても、何を言っても、ずっと「大丈夫」って返してくれてたので、それにすごく助けられましたね。

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酒寄:休業中は「みんなに忘れられちゃうんじゃないか?」って考えちゃうから、そんなときに、外側から声をかけてくれるのはうれしいと思います。田辺さんなんて、朝の7時から「天ぷらがさ~」とか、本当にどうでもいいことをLINEしてきます(笑)。

──お2人のエピソードは、今現在、会社や学校を休業している方や、周りに休業中の方がいてどうしたらいいか考えている場合の参考になりそうです。

加賀:僕の経験からすると、連絡の頻度ってすごく大事だなって。周りに休業中の人がいたら、遠慮したり、気を使いすぎたり、どう思われるかとかを考えすぎたりしないで、気軽に連絡を取ってみるのがいいなって、僕は思いますね。休んでいる側も、最初は「ウッ」ってなるかもしれないけど、だんだん心を許し始めるところがあるかもしれない。

 だから、「これ見たらマジで元気になる」っていう動画を1日1本送るとか、道ばたの花の写真を撮って送ってみるとか、しいたけ占いの結果とか、ほんっとにどうでもいい話で、内容はなくていいんです。連絡を送られる側としても、ゼロカロリーのやり取りをするのが一番いいなと思いますね。

酒寄:はるちゃんがよくやるんですけど、「今日って〇〇の日らしいよ」っていうのも、内容がなくていいですよね。「そうなんだ、なんで〇〇なんだろうね?」って聞くと、「知らなーい!」って返ってくるんですけど(笑)。そういう些細なことをちょっと連絡するだけで、救われる人はいると思います。

加賀:あと、僕が一度休業してみて気づいたのは、案外、自分が休んでも「全然なんとかなる」っていうことでした。人間は天敵に食べられたりする野生動物じゃないから、気楽に構えて休んでください。

 その「気にせず休む」っていうのが難しいことなんですけど、でも人生って長いから、またいつか何かをお休みすることだってあるでしょう。これからの人生でより上手に休むための練習だと思って過ごしたらいいと思います。うまく休めるようになったら、一生役に立ちますから。

酒寄:自分の状況や気持ちは、自分で言わないと周りに伝わらないから、できるだけ言葉にしていったほうがいいです。休んでいるときにひとつだけ気をつけなきゃいけないのは、「(自分がつらいことに)気づいてよ」っていう“待ち”の姿勢にならないようにすることかも。周りは自分が思っているよりも優しいですから、どんどん頼りましょう。

 

●酒寄さんが、 今回の対談について綴ったコラムはこちら!→「CanCam.jp」さん「思い、思われ、食べ、ぼる塾。」

編集者、ライター。1990年生まれ。webメディア等で執筆。映画、ポップカルチャーを文化人類学的観点から考察する。

すがわらしき

最終更新:2022/07/05 09:25
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